AWSなどクラウドのサポートが後押し
オープンソースRDBMSのコストメリットと懸念点を考える
コストを重視するユーザーにとっては、これまで主流だったリレーショナルデータベースに代わる優れた選択肢として、オープンソーステクノロジーが浮上している。
企業が生み出すデータの量は増え続けている。それに伴い、データプロフェッショナルはジレンマに直面する。それは、データ量が増えれば、データベースのコストが高くなるのは仕方がないのかというものだ。コストに目を向けるIT部門では、専用リレーショナルデータベーステクノロジーに代わる可能性として、オープンソースのRDBMS(リレーショナルデータベース管理システム)プラットフォームへの注目度を高めている。
オープンソースRDBMSをサポートするクラウドコンピューティングベンダーが増えている。そのため、これを「Oracle Database」や「Microsoft SQL Server」のようなRDBMSに代わる選択肢として検討するユーザーも増えている。そう話すのは、コンサルティング企業Athena IT Solutionsでマネージングパートナーを務めるリック・シャーマン氏だ。
「オープンソースデータベースは以前から存在する。特にWeb関連では、開発者が『MySQL』や『PostgreSQL』のようなデータベースを利用している。だが、今ではオープンソースの利用がさらに広がっている。それは、Amazon Web Services(AWS)、Google、Microsoftなどのクラウドベンダーがオープンソースシステムを提供するようになったためだ」(シャーマン氏)
結果として、企業ユーザーは、オープンソースデータベース自体を運用するために新しいシステムインフラを導入しなくても、「Oracle DatabaseやSQL Serverのコストを回避できる」ようになったとシャーマン氏は補足する。同氏は、ノースイースタン州立大学の大学院工学研究科でビジネスインテリジェンスとデータウェアハウスのクラスを受け持っている。
抵抗が少なくなったオープンソースソフトウェア
『Next Generation Databases: NoSQL, NewSQL and Big Data』の著者ガイ・ハリソン氏は、クラウドプラットフォーム市場をけん引するAWSが、オープンソースRDBMS製品のクラウドベースバージョンを導入したことが大きな転機になったという。ハリソン氏は、「Amazonは基本的にはオープンソースソフトウェアの認定バージョンを提供するビジネスモデルを作成した」と話す。同氏は、データベースの開発ツールと管理ツールのベンダーSouthbank SoftwareのCTOも務めている。「これにより、オープンソースデータベースに抵抗する理由の1つ、『うまくいかなかったら誰が責任を負うか』を考える必要がなくなった」と同氏は続ける。
ガートナー氏はさらにクラウドの魅力を説明し、AWSがリレーショナルシステムやNoSQLシステムなど、オープンソースデータベースソフトウェア全体の収益リーダーになっていると指摘した。
市場には、AWSと同様の取り組みを行うベンダーがたくさんある。MicrosoftとGoogleの両社は、自社のクラウドプラットフォームでMySQLとPostgreSQLのマネージドサービスを提供している。また、MicrosoftはMySQLと互換性のあるフォークMariaDBのサポートを追加しようと取り組んでいる。他にもオープンソースRDBMSを提供するベンダーには、2010年にSun Microsystemsを買収し、MySQLテクノロジーを所有するOracle、MariaDBを提供するMariaDB、PostgreSQLをベースにした製品「EDB Postgres」を提供するEnterpriseDBなどがある。
こうしたベンダーが提供するオープンソースのテクノロジーとサービスにはコストがかるとハリソン氏は注意を促す。例えば、技術サポートの費用はユーザーが負担しなければならない。「オープンソースデータベースは(従来の製品よりも)安価だが、無償ではない」と同氏は話す。
ただし、Gartnerのアナリストを務めるメルブ・エイドリアン氏とドナルド・フェインバーグ氏は、2018年2月に発表し5月に更新した調査レポートで、オープンソースRDBMSの導入による潜在的なコスト削減に触れている。システムのサンプル構成の価格を比較すると、MySQL、MariaDB、EnterpriseDBのEDB Postgres Enterpriseデータベースは、3年間のライセンスとサポート費用がOracle Databaseよりも大幅に安く済むという。
オープンソースデータベースへの移行経路
低いコストとクラウドの可用性はどちらも、Financial Network(FNI)がOracle Databaseに代わる選択肢として用意するMariaDBの魅力の一部だとFNIでデータベースアーキテクチャのディレクターを務めるウィリアム・ウッド氏は話す。FNIは金融業者、小売業者、その他の法人顧客向けにローンとクレジットの組成プロセスを管理するソフトウェアを販売している。
オープンソースRDBMSの導入は、ウッド氏にとってはちょっと昔に戻る感覚だったという。同氏は以前の仕事で主にOracle Databaseに関わっていたが、学生時代はMySQLで経験を積んだ。「大学時代、MySQLとPerlでたくさん経験を積んだことで、オープンソース(ソフトウェア)の力を知った」と同氏は話す。
ウッド氏が2010年にFNIで働き始めたとき、同社のデータベースアーキテクチャは完全にOracleベースだった。それは、暗号化を使ってデータを保護することが不可欠だったためだ。やがて、オープンソースデータベースベンダーがそれぞれの製品に暗号化機能を追加するようになった。そこで、2016年、FNIは顧客ごとに信用格付けを処理するシステムをMariaDBに切り替え始めたとウッド氏は語る。
ウッド氏によると、特に複雑なOracleロジックを組み込む一部のシステムを完全にMariaDBに変換することはできない場合もあるという。だが、オープンソーステクノロジーはFNIのプライマリーデータベースプラットフォームになっている。「当社は、MariaDBを土台に将来を考えている」とウッド氏は認めている。
この戦略への意欲をかき立てるのは大幅なコスト削減だけではない。商用データベースソフトウェアのライセンス管理に伴うオーバーヘッドを軽くしたいという願望にも後押しされている。
移行のプロセスは比較的簡単だと同氏は付け加える。「OracleをMariaDBに置き換えるのは簡単な作業だ」とウッド氏は話す。同氏は、2018年後半に『Migrating to MariaDB』という書籍を発行する予定だ。
ウッド氏によれば、FNIはバックアップとMariaDBシステムへのライブレプリケーションを組み合わせてクラウドベースの災害復旧を行うが、今後もクラウドを広範に使用するという。これはクラウドへの完全な移行の可能性を探る概念実証でもあると同氏は指摘する。
新しい特徴と機能
オープンソースRDBMSプラットフォームへの機能強化はさらに進んでいる。例えば、2018年7月、EnterpriseDBは、Oracle DatabaseからEDB Postgres Platformへの移行効率を上げるために設計したツールのβ版を発表した。それは2017年後半の10.0リリースに続くもので、Oracle Databaseとの互換性、分析に使用するパーティショニングと並列クエリが強化されている。
2018年5月のMariaDB TXソフトウェアへのバージョン3.0アップデートでも、Oracle Databaseとの互換性機能に加えて、一時データ処理のサポートが追加されている。また、2018年4月に一般公開されたMySQL 8.0では、読み取り/書き込みのパフォーマンスとI/Oを集中的に行うワークロードのパフォーマンスが強化され、デフォルトの認証設定、新しいJSON関数のサポートが含められた。
オープンソースRDBMSテクノロジーの勢いが増しつつあることは、DB-EnginesのWebサイトに毎月評価されるデータベースの人気ランキングからも分かる。2018年8月時点で、MySQLとPostgreSQLは全データベースの中で2位と4位にランクインし、MariaDBは14位になっている。
オープンソースリレーショナルデータベースの拡大ペースが落ちる要素もある。例えば、Athena ITのシャーマン氏によると、オープンソースベンダーとそのテクノロジーをサポートするコミュニティーは、OracleとMicrosoftが打ち立てたデータベース革新のペースに合わせるのが難しいと感じているという。だが、たとえそうだとしても、「オープンソースデータベースを利用できない点がたくさんあるわけではない。中小規模の顧客が数多くいて、十分過ぎるほどたくさんの大規模データベースアプリケーションがあるのだから」とシャーマン氏は付け加えた。
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