チャットツールの企業導入が進んでいる。背景にあるのは、メール中心のコミュニケーションの弊害を解消したいというニーズの高まりだ。メールをチャットツールに置き換えれば、全てうまくいくのだろうか。
コミュニケーションツールは企業の共同作業(コラボレーション)に欠かせない。中でも導入が広がっているのが、「ビジネスチャット」とも呼ばれる企業向けのチャットツールだ。IT製品の購買支援を手掛けるSpiceworksが2018年、北米企業と欧州企業のIT関連意思決定者900人以上を対象に実施した調査によると、あらゆる規模の組織において、以前よりもチャットツールの導入が増加しているという。
各チャットツールは、ビデオ会議やファイル共有といった企業向け機能の追加によってシェアを争っている。今回の調査対象となったチャットツールは「Skype for Business」「Microsoft Teams」「Slack」「Google Hangouts」「Workplace by Facebook」だ。「Cisco Webex Teams」は含まれていない。この調査報告書を書いたSpiceworksのアナリスト、ピーター・ツァイ氏によると、対象はチャット中心の製品/サービスに限定し、ビデオ会議やオンライン会議などが中心の製品/サービスは除外した。
企業規模によって、よく導入されているチャットツールは異なる。今回の調査結果によると、大規模な企業ではMicrosoft TeamsやSkype for Business、小規模な企業ではSlackの採用が多い。MicrosoftはSkype for BusinessからMicrosoft Teamsへの移行を推進している。こうした取り組みは、Microsoft Teamsのターゲット層拡大や導入増加につながる可能性が高いと、ツァイ氏は語る。
Google Hangoutsは企業向け機能が比較的充実している割に、導入率がそれほど高くない。調査会社Frost & Sullivanのロバート・アーノルド氏は、Googleは技術的な観点から市場の動向を追っていないと指摘し、ビジネス向け分野に対するGoogleのコミットメントには「一貫性がなかった」と主張する。ただし持続的にコミットメントをするようになれば「Googleがこの市場で破壊的な変革を起こす可能性は大いにある」とアーノルド氏は語る。
Workplace by Facebookは今回の調査結果で、最も導入企業が少なかった。調査会社Nemertes Researchのアナリスト、アーウィン・ラザー氏によると、Workplace by Facebookは企業向け機能を強化しているものの、多くのIT担当者にとっては依然として、企業内ポータルや企業内ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)というイメージがあるという。
大規模な企業は、導入済みのユニファイドコミュニケーション(UC)製品と同じベンダーが提供するチャットツールを採用する傾向がある。その方が相互に連携しやすく、一般的には追加コストがかからないからだ。小規模な企業は特定のニーズを満たすチャットツールを選び、機能を評価して採用を決める傾向がある。
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