「集合天才」を支えて環境を整える、それがイノベーションリーダーの役割だリンダ・ヒル氏のマネジメント論

ハーバードビジネススクール教授のリンダ・ヒル氏は、イノベーションリーダーの役割とはステージセッター(環境整備者)であり、チームが天才性を発揮できるように支えることを自身の役割として認識することが必要だと説く。

2019年02月07日 05時00分 公開
[Brian HolakTechTarget]

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 「事業の成功はイノベーションを継続的に起こすことにかかっているからこそ、リーダーシップに関する従来の考え方はもはや通用しない」とリンダ・ヒル氏は言う。同氏はハーバードビジネススクールの経営管理論担当ウォレス・ブレッド・ドーナム記念講座教授であり、書籍『Collective Genius: The Art and Practice of Leading Innovation』の共同著者である。

 ヒル氏は、当時のリーダーシップ研究分野の草分けであり、自身のメンターでもあるジョン・ポッター氏やウォーレン・ベニス氏などの学者を例に挙げ、彼らがリーダーシップをどのように定義していたかを引き合いに出した。彼らにとって、リーダーシップは概して、ビジョンを持ち、そのビジョンを伝え、そのビジョンを他の人に実現してもらう能力のことを指している。「変化を先導するにはこのようなトップダウン型の手法は効果的だが、イノベーションを先導する場合は別だ」と、ここ十年間世界中のイノベーションリーダーを研究してきたヒル氏は主張する。

 ヒル氏は、PTC(Parametric Technology Corporation)主催の年次カンファレンス「LiveWorx 2018」の基調講演で次のように語り、イノベーションを先導することに関してITプロフェッショナルに助言を提供した。「イノベーションリーダーは自身の主な役割について、ビジョンを持つことではなく、他人が進んでイノベーションを進めていけるような状況を作り出すクリエイターだと見なしている」

 言い換えればイノベーションリーダーになるに当たって、「この方向に進んでいく」と前面に立って皆に言う必要性は必ずしもない、ということをヒル氏は示している。代わりに「ステージセッター」になる、つまり実際に動いてもらう人に共通の目標を示し、それをもとに動けるようにするのだ。

 「イノベーションを起こしたい、何か新しいことに取り組みたいと考えているなら、個人の能力や情熱を解き放つ必要がある」とヒル氏は言う。

 しかし、イノベーションリーダーがそれら個人のイノベーションのひらめきを取り入れたいならば、チーム内の異なる考え方や能力、情熱全てをまとめ上げて集合のニーズを実際に満たす方法を模索する必要がある。これはリーダーが直面する数多くの試練の1つだ。「解き放ち、まとめることができるかが試されている」とヒル氏は言う。

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