「5G」が飛躍させるAR/VR【後編】
「5G」が普及すると“ひとりVR”がなくなる?
「5G」に期待が集まるのは、既存の技術では乗り越えられないネットワークの課題を解消する可能性があるからだ。AR/VRを5Gがどのように変えるのか、見てみよう。
前編「『5G』が救世主に AR/VRの“PC市場超え”を阻む致命的な課題とは?」では、拡張現実(AR)や仮想現実(VR)が普及するために障壁となっている課題について説明した。消費電力、コスト、デザイン性といったAR/VRの限界に対して、「第5世代移動体通信システム」(5G)はどのように役に立つのか。
簡単に説明すると、複雑なグラフィック処理の負担を5Gのネットワークを介してクラウドに任せ、その結果だけをリアルタイムでヘッドマウントディスプレイ(HMD)に送り返す仕組みにする。これが実現すればHMDが非常に安価になるとともに、軽量になり、バッテリーの長時間駆動が可能になる。
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AR、VRの利用は広がっているのか
HMDの軽量化やバッテリー駆動時間の長時間化、タイムラグの解消以上に、AR/VRに5Gが役に立つ理由がある。
「VRは1人で使う」という常識を5Gが変える
VR関連企業Hapi VRの創業者で最高経営責任者(CEO)を務めるアトゥル・サルガオンカー氏は、5GによってVR体験の共有を実現できる可能性があると説明する。つまり「VR製品は基本的にユーザー1人で使う」という限界を超えられる可能性がある、ということだ。
一例として、学校の生徒が史跡への仮想遠足に参加し、そこで互いの反応を見て、相互に交流できるようになる。「過去の“ひとりVR”と違う、こうした同時マルチユーザー機能は、5Gがあってこそ実現できる」と同氏は話す。
ARでは、複数のユーザーが1つの仮想オブジェクトを同時に扱う必要が生じた場合、各自が自分のバージョンのオブジェクトを視認できるようにすると同時に、他のユーザーが加えた変更をリアルタイムで参照できるようにする必要がある。これに対して5Gの高速なデータ伝送の能力や、複数のデバイスが同時に接続できる多数接続の特徴が生きる。
ビデオストリーミングもAR/VRを実現する技術の一つであることに触れておこう。ビデオストリーミングによって離れた場所のコンサートや講義に参加できるようになる。5Gならば、仮想イベントに同時に参加するユーザーの数が多くても、基本的には接続を維持できる。
「特筆すべき技術の一つはネットワークスライシングだ」とサルガオンカー氏は説明する。ネットワークスライシングは、ネットワークの通信容量を複数の区画に分割し、特定の区画を特定のアプリケーション専用として指定できるようにする。指定した区画外で他のアプリケーションやユーザーのトラフィックが流れていても、それらの影響を受けない。家の中で家族の誰かがトイレを使っても、浴室のシャワーの流れに影響が出ないようにする配管の設計の仕方と同様だ。5Gでも、たとえ近くのデバイスがどれほど多くのトラフィックを流したとしても、専用の区画を利用しているユーザーのデータ通信に支障が生じることはない。
AR/VRは企業にとって、とてつもない可能性を秘めているという点で、大半の専門家の見解は一致している。それはこれまでほとんど試みられることのなかった可能性だ。現時点ではまだニッチな市場に限られているが、5Gが本格的に利用できるようになれば、現在のAR/VRが持つさまざまな課題が解消できる。
CIOは、5Gが職場の中でも外でも、私たちの日常生活の一部になることを見越しておく必要がある。デバイスの薄型化が進み、モビリティーやコラボレーション機能が向上すれば、スマートフォンの代替にさえなり得る。「一体どうやってこれなしで生活できていたのだろう」と思うようになる可能性さえある。
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