製造業が「オンプレミスERP」を選ぶ理由【後編】
クラウドERPから「オンプレミスERP」に戻してしまった、ある製造業の決断
板金加工企業のDalsin IndustriesはクラウドERPへの移行を検討したが、自社のニーズにクラウドは時期尚早だったと判断して、従来のオンプレミスシステムに戻してしまった。決断に至った決定的な理由は何か。
これまでクラウド導入の大きな阻害要因だったセキュリティと規制の制約は、ERP(統合業務)製品の機能をクラウドサービスとして利用できる「クラウドERP」を避ける理由にはならなくなってきている。「クラウドサービスのセキュリティが、プライベートデータセンターで実現できるセキュリティよりも強力だ」という考えが、企業の間で広がっているのだ。
クラウドERPのベンダーも、企業が規制の指示に準拠した状態を維持できるよう、マルチテナント形式の通常のSaaS(Software as a Service)とは異なる選択肢を用意するようになっている。プライベートクラウドやホスティングといったオプションがその例だ。
リスクを増やさないためには、オンプレミスERPとクラウドERPのメリットとデメリットを、具体的なビジネス要件と照らし合わせて検討することが不可欠となる。単に評判に引きずられて、ビジネスニーズに合わないにもかかわらず、クラウドERPへ移行してしまうのはあまりにも安易だ。
板金製作の委託製造業者であるDalsin Industriesは、数年前にクラウドERPへの移行を決めたとき、身をもってこの教訓を得た――そう話すのは同社ITビジネスアナリストのジェフ・ダルシン氏だ。同社はEpicor SoftwareのオンプレミスERPから、Plex SystemsのクラウドERPへ移行した。その主な理由は、クラウドERPが「光り輝く目標」に見えたことだったとダルシン氏は話す。
クラウドERPは「時期尚早」だった
Dalsinの比較的小さなIT部門は、定期メンテナンスやアップグレードの作業負担をなくしたいと考えていた。そのためクラウドサービスは理にかなっているように思えた。だがクラウドERPへの移行に伴い、自社でアップグレードのスケジュールを管理できなくなった。複数の仕事を見積もるような重要な分野でソフトウェア機能が制限された。こうした現実から、ダルシン氏と同氏が率いるチームは、クラウドERPへの移行が時期尚早だったと確信した。
「アップデートが完了したというメールが届くとする。だが、その翌日には必ず何かがうまくいかなくなっていた。そして解決のために問い合わせが必要になった」とダルシン氏は当時を振り返る。クラウドERPであれば、自社でアップグレードする必要がないことは「プラスになると考えた」と同氏は語る。しかし「自社が最良だと考えるタイミングではなく、ソフトウェアベンダーが最良だと考えるタイミングでアップデートを適用させなければならないとは考えもしなかった」と明かす。
ダルシン氏は、技術によって導入サイクルを決めるのではなく、もっと系統立ててビジネスケースを調査していれば、クラウドERPの時期尚早な導入を防ぐことができたと認める。DalsinはクラウドERP導入の数年後、EpicorのオンプレミスERPに戻した。「クラウドERPが将来当社の役に立つ可能性はある。だが今のところ、話題にはなっていない」と同氏は話す。
オンプレミスERPとクラウドERPの比較論争では、今のところ明らかな勝者も敗者もいないのかもしれない。
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製造業が「オンプレミスERP」を選ぶ理由
クラウドERPはさまざまな企業から人気を集めているが、全ての企業に最適というわけではない。特に、規制の厳しい業界に属する製造業者や、管理やカスタマイズの能力を維持し続けたい製造業者にとってはオンプレミスERP製品の方が適しているケースもある。オンプレミスERPを選択するべき理由について考察する。
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