オンプレミスUCからUCaaSに移行すべきこれだけの理由ユニファイドコミュニケーション新時代【前編】

オンプレミス型のUCは減少傾向にあり、時代後れの感がある。代わって台頭してきたのがクラウド型のUCaaSだ。UCaaSのメリットと、サービス選定時の注意点を紹介する。

2019年09月02日 08時00分 公開
[Rene MillmanComputer Weekly]

 ここ10年で多くの技術が進化している。UCaaS(Unified Communications as a Service)市場にも急激な進化が起き、プロバイダーは最新機能で顧客を引き付けようとしている。

 従来型のユニファイドコミュニケーション(UC)システムは徐々にではあるが既に減り始めており、クラウド型のUCaaSが台頭している。Gartnerによると、2021年までにUCの全新規購入の90%をUCaaSが占めるようになるという。これは50%だった2018年と比べて大きな躍進となる。IDCによる現状予測では、2020年までに全企業の半数が何らかの形でUCaaSを使用すると示唆されている。

 Freeform DynamicsのCEOで著名なアナリストでもあるデイル・バイル氏は、従来型のUC市場は約10年前にMicrosoftが参入したときに変わったと話す。

 「UCは突然、メールやメッセージングといったコラボレーション形式の抱き合わせ販売のようになった」と同氏は振り返る。

 「Microsoftの『Office Communications Server』は、オンプレミスの『Microsoft Exchange Server』と『Microsoft SharePoint Server』の環境にとっては自然な形のアドオン機能だった」と同氏は補足する。

UCaaSとは

 UCaaS市場の現状を考えるに当たっては、こうした背景を念頭に置くことが重要になるとバイル氏は話す。

 企業はなぜUCaaSを導入する必要があり、どのようなメリットがあるのか。

 UCaaSは、音声とテレフォニー、会議ソリューション、メッセージング、プレゼンス、インスタントメッセージングなどの機能を1つのパッケージにまとめるものだ。基本的に、UCaaSはこれらのサービスをクラウドを通じて提供する。クラウドには任意の端末でアクセスできる。企業は使った分だけに料金を支払えばよい。

 つまりUCaaSの大きなメリットは、さまざまな端末が即座につながり、チームがシームレスに作業を続けられる点にある。

 「これ以外にも、パフォーマンスに冗長性を生み出し、ダウンタイムを防ぐことで信頼性とセキュリティも確保する」と話すのは、HCL Technologiesで「IoT WoRKS」部門の責任者兼コーポレートバイスプレジデントを務めるサカマル・バナジー氏だ。

 「クラウド経由でデータをバックアップすれば、極限の状態でもビジネスの運用を継続できる。それだけではない。ネットワークの既知の脅威や潜在的な脆弱(ぜいじゃく)性を監視する手段はサービスプロバイダーが整備する」(バナジー氏)

 バイル氏によると、UCaaSは労働力の充実を図る幅広い戦略の一環として考えるのが最適だという。

 「出先で仕事をしたり、手分けして仕事をしたりする場面が増え続けている。さらに、組織の枠を超えて協力するニーズも高まっている。そうした中、as a Serviceモデルの魅力がますます増している」(バイル氏)

業務に適切なUCaaSの導入

 だが、UCaaSの導入は接続して稼働するだけで終わりというものではない。業務に合った適切なツールだけでなく、適切なプロバイダーの選定も必要だ。

 バイル氏によると、購入担当者にとっての最大の問題は、要件を正しく把握することだという。

 「最善の組み合わせを取り入れ、それをさまざまなコンポーネントに切り分けるか、あるいは全てを網羅するコラボレーションスイートの一つに飛び付くかだ。どちらにも長所と短所がある」と同氏は話す。

 「『Office 365』は包括的なスイートだ。だが非常に複雑で、要素が多過ぎ、どのような組織でも消化しきれないだろう。対して『G Suite』は、リアルタイムコラボレーションに関しては未完成品のような印象を受ける。提携ベースのサービスにはギャップがあり、チグハグなものが多い」

 「さまざまなサービス要素のうち、コミュニケーションのみに注目することはできるだろう。だが市場(ビジネスユーザー)はそこを目指してはいない」

 バイル氏は、プロバイダーを検討する際の結論として「Microsoft Office」、CRM、コールセンターなど、そのプロバイダーの原点がどこにあり、どのような企業がそのプロバイダーを利用しているかに目を向けることが必要だと説明する。特に業界、組織の規模、対応するユースケースに注目するのが不可欠だという。

 「各プロバイダーにはターゲットとなる顧客層がある。長所と短所もそれぞれ異なる。また、各プロバイダーには独自の世界観があり、それが自社と一致していなければならない」(バイル氏)

後編(Computer Weekly日本語版 9月4日号掲載予定)では、UCaaSにおける3つの導入形態の長所と短所、導入準備から導入までの流れについて解説する。

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