復権する「ストレージ階層化」【後編】
クラウドストレージも階層化する「HSM」(階層型ストレージ管理)とは何か?
安価に導入可能なクラウドストレージにストレージ階層化の仕組みを取り入れて、効率的にデータ利用するにはどうすればいいのだろうか。その手段となり得るのが「HSM」(階層型ストレージ管理)だ。
前編「枯れたはずの『ストレージ階層化』がフラッシュメモリの進化でよみがえる」では、いったんは下火になった「ストレージ階層化」の仕組みが、フラッシュメモリやストレージクラスメモリのようなストレージ技術の進化によって再び必要とされている点に触れた。ストレージシステムの動向を考える上では、企業のクラウドストレージの利用拡大も考慮に入れる必要がある。安価に導入可能なクラウドストレージの利点を生かしつつ、パフォーマンスの高いストレージシステムを使用するために、どのようにストレージ階層化を生かせばいいかを後編で説明する。
ストレージ階層化にクラウドストレージを取り入れ、効率的に運用することは容易ではない。特に問題になるのは、オンプレミスのデータセンターにある高額のストレージシステムから安価なクラウドストレージへのデータ移行を、コスト効率良くどのように実現するかという点だ。
クラウドストレージを階層化するHSM
異なるベンダーによる、異なる技術を採用した、異なる種類のストレージを含めて階層化を実現するのは簡単ではない。さらにその中にクラウドストレージが加われば、なおさらだ。こうしたストレージ階層化の環境では、一般的に「階層型ストレージ管理」(HSM)ツールを採用する。HSMは、オンプレミスシステムとクラウドストレージを接続する「クラウドストレージゲートウェイ」やソフトウェアによってストレージ機能を実装する「ソフトウェア定義ストレージ」(SDS)に採用されている。HSMツールはパブリッククラウドのストレージ用に設計されたものではなく、LAN用に設計されたものだ。
HSMツールは、データそのものはクラウドストレージに保管し、データの管理情報(スタブ)のみを専用のゲートウェイに残す「スタブ化」の仕組みをベースにする。ユーザーがスタブに接続すると、HSMツールはクラウドストレージから実際のデータを読み出す。オンプレミスのストレージシステムに移動したデータはクラウドのストレージシステムからは削除され、スタブ化される。移動したデータはリハイドレーション(データを復元して元の状態に戻すこと)されて、利用できるようになる。
クラウドでHSMツールを使用すると動作が遅くなり、費用がかさむ。データをオンプレミスのプライマリーストレージにリハイドレーションするとき、クラウドストレージからデータを取り出す際に料金がかかり、コストが急速に跳ね上がる可能性があるためだ。
スタブは“もろい”という弱点も抱えている。データが破損すると、別のストレージに移行した際にスタブが元のデータを見つけられず、機能しなくなる。
新たなストレージ階層化の運用
クラウド環境を含めてストレージの階層化を実施する場合、重視すべきは非構造化データだ。調査会社IDCは、非構造化データの年次増加率は構造化データの約3倍で、企業のデータの約80%を非構造化データが占めるようになると予測している。データの新しい検索ツールや分析ツールも、非構造化データを対象としているものがほとんどだ。
機械学習などのAI(人工知能)技術と組み合わせれば、データ管理の自動化が実現する。「Dell EMC ClarityNow」「Hammerspace」「Komprise」「StrongLink」といったHSMツールがある。こうしたHSMツールは、物理サーバのファイルシステムに依存せずにファイルにアクセスできるようにする「グローバルネームスペース」(単一の名前空間)を導入することで、全ての容量をフラッシュストレージで賄うオールフラッシュのファイルストレージやオブジェクトストレージなど、さまざまなストレージシステムを一元的に管理できる。グローバルネームスペースによって、ユーザーは実際にデータがある場所は分からなくなる。リハイドレーションは必要なく、データを保存されている場所で読み取り、利用するようになる。
インテリジェンスを備えたストレージ階層化を自動化するHSMツールは、もはや手が届かないものではなくなっている。むしろ必需品といえるだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
復権する「ストレージ階層化」
フラッシュストレージの登場で一時はその必要性がなくなったかに見えた「ストレージ階層化」。皮肉なことに、フラッシュメモリがさらに進化することで、今またその価値が見直されている。さらにクラウドストレージの普及で階層化の対象が広がる中、ストレージ階層化によってストレージシステムがこれからどう変わるのかを考える。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[サイボウズ株式会社] DXに必要な「Dスキル」「Xスキル」を持った人材を育成するには? -
市場調査・トレンド
[サイボウズ株式会社] データで見る、DXが「順調に進む企業」と「つまずく企業」の違い -
製品資料
[サイボウズ株式会社] 賛否が割れがちな「Notesからの移行」 新環境への移行を納得してもらうには? -
事例
[ServiceNow Japan合同会社] 農林中金に学ぶ内製開発 処理効率を約2倍に高めAI活用も加速させた方法とは? -
事例
[ServiceNow Japan合同会社] NTTグループのデジタル変革術、17万人が利用する決裁プロセス刷新の全貌
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
【基本情報技術者試験】「デュプレックスシステム」と「デュアルシステム」の違いは?
-
2
kintoneで実践 製造業のための「見積もり管理」改善のヒント
-
3
「Microsoft一択」で本当にいいのか 知らぬ間にライセンス費用が膨らむ真相
-
4
「VMware離れ」は本当か 3000社がVCF 9にかじを切った現実的な理由
-
5
サーバ約70台をAWSへ ヤナセが移行前にやった「通信要件の可視化」
-
6
脱VMwareの真実:データセンター大手がNutanixを選んだ「コスト以上の理由」
-
7
MS月例パッチが1000件突破 人手不足の情シスを襲う「月1回メンテ」の崩壊
-
8
製造業と金融業で「AI導入」が進まない理由 それぞれが抱える“恐怖”とは
-
9
「AI活用」を掲げた年金刷新が炎上 英政府が大手ITアウトソースを切り捨て「内製回帰」した理由
-
10
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
生成AIのハルシネーションを防止 回答精度を高めるセマンティックレイヤーとは
-
2
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
3
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
4
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
5
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
6
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
7
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
8
マンガで解説:「ゼロトラスト」「SASE」の必要性とメリット
-
9
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
10
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー