Globe and Mailのクラウド活用事例
大手新聞社は電子版で生き残るために「AWS」をどう生かしたのか
新聞社Globe and Mailは、電子版の配信インフラとして「AWS」を導入した。その狙いは、読者との関わりを深め、電子版の収益を高めることにある。
報道機関の間では、紙からオンライン配信への転換に取り組む動きが活発化している。カナダ有数の新聞社Globe and Mailも例外ではない。同社はシステムインフラとしてAmazon Web Services(AWS)の同名クラウドサービス群を導入し、電子版の購読数を増やす戦略を始めたところだ。
AWSの人工知能(AI)機能を評価し、数年前からAWSへの移行に取り組んできたGlobe and Mail。機械学習の「Amazon SageMaker」、自然言語処理の「Amazon Comprehend」、画像・動画分析の「Amazon Rekognition」、ドキュメント分析の「Amazon Textract」などのAWSサービスを利用して、読者の関心に合わせた記事のレコメンド機能を提供している。
独自に開発した予測分析システム「Sophi」もAWS環境で運用している。Sophiは機械学習を使って、指定した記事が公開後にどの程度の関心を集めるか予測する。編集者は、どの記事を有料購読者限定にするか、どの記事をどのくらい宣伝するかを決めるために、このツールを活用できる。
電子版で優位に立つためにインフラを見直し
Globe and Mailで最高技術責任者(CTO)を務めるグレッグ・デュファス氏が同社に着任した当時、既にクラウドへの移行が始まっていた。現在では、同社は保有する情報の大半を、AWSで構築したコンテンツ管理システム(CMS)「Arc Publishing」に置いている。Arc Publishingは、米新聞社Washington Postが自社で利用するために開発したCMSだ。Washington PostはこのシステムをAWSで運用し、ライセンス契約で他の報道機関に提供している。Globe and Mailは、Arc Publishingの初期立ち上げパートナーだ。
新聞社同士のパートナーシップは、やや危険を伴う動きであることを、デュファス氏は認識していた。それでもGlobe and Mailにとっては効果があった。Arc Publishingは、導入前に同社が使っていた自社開発のCMSよりも圧倒的に高い機能を備えていたからだ。同社はArc Publishingからヒントを得て、Sophiの商品化を進めている。
デュファス氏は、データサイエンスと分析チームのメンバーとしてGlobe and Mailに加わった。その後、同氏はCTOに就任し、約120人のチームを率いるようになった。このチームには、開発者やユーザーエクスペリエンス(UX)設計者、データサイエンティストが所属する。
以前Globe and Mailは、高度な分析が可能なデータセットを保持していなかった。当時はGoogleやAdobeなどのベンダーによる既成のトラフィック分析サービスを利用しており、その分析結果では長期にわたって価値を引き出すことができなかった。生き残るには、電子版ユーザーが取る行動についての詳しい分析が鍵となると、Globe and Mailは考えた。「競争で優位に立つには、自社の記事と読者への理解を深め、科学的に把握する必要があった」とデュファス氏は話す。
Globe and MailはAWSのサービスを多数利用しているだけではなく、他のパブリッククラウドも併用している。「有能なCTOは、リスクを分散するため複数のクラウドを利用するだろう。当社も常に、他のクラウドベンダーとも少しずつ関係を保つつもりだ」とデュファス氏は語る。一方で特定のクラウドベンダーとの関係が大きくなれば「高い依存率と引き換えに、コストの面でメリットを得られる可能性がある」と同氏は認める。
AWSへの移行によって電子版の拡充におけるスケーラビリティの問題が解決し、電子版ページの読み込み時間も早まった。これは同社にとって重要なことだ。「数年前に当社独自の読者調査をしたところ、特定の新聞社をひいきにする理由に挙がったのは、速度とパフォーマンスだった」とデュファス氏は語る。
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