「分子メモリ」がストレージを変える【前編】
容量はHDDの100倍? 「分子メモリ」を使ったストレージとは
データが爆発的に増大する中、ストレージの進化がその速度に置いていかれているという見方がある。こうした問題の突破口として期待すべきなのが「分子メモリ」を使ったストレージだ。どのようなストレージなのか。
ストレージの記録密度を高める取り組みはいずれ、普遍的な壁に突き当たる。「量子力学の限界」に基づけば、これは不思議なことではない。データが増大を続ける世界では、限られた物理空間に、できる限り多くのデータを保存しなければならず、そのためには保存媒体をできるだけ小さくする必要がある。その限界が見えることは良いニュースではない。
こうした悲観的な状況は、「分子メモリ」によって一変する可能性がある。分子メモリを利用することで、ドイツのキール大学の研究チームが、記録密度をHDDに比べて100倍以上に高める方法を発見した。
容量増大を実現する気になる仕組み
キール大学の研究チームは「スピンクロスオーバー錯体」という特殊な分子を使って、顕微鏡レベルの極小ストレージユニットを作り出すことに焦点を当てている。HDDと同様、スピンクロスオーバー錯体は磁性状態を使ってデータを保存する。この仕組みを適切に機能させるためには、データを保持する能力を妨げることなく、スピンクロスオーバー錯体を安定した表面に置かなければならない。キール大学の研究チームは、それに成功しただけでなく、それまでは障害になると見なされていた特定の手法を用いることによって、ストレージ容量の潜在的な上限を引き上げたと主張している。
ストレージの研究が突き当たる壁
ストレージは技術進歩によって記録密度を高め、物理的なサイズを大幅に小型化すると同時に、容量を増大させてきた。キール大学のマヌエル・グルーベル氏によると、一般的なHDDで1ビットのデータを保存するために必要な物理的なスペースは、およそ10ナノ四方程度だ。データが急増し、ストレージの需要が高まる中で、こうした高密度なストレージでさえもデータ急増のトレンドに追い付けなくなっている。さらに悪いことに、これまでのストレージの手法に専念していたストレージ研究者は、一見したところ、それ以上先へは進むことのできない量子力学の壁に突き当たろうとしている。
キール大学の研究チームが新たな研究に乗り出したのは、こうした流れにあらがうためだ。同研究チームはわずか1ナノ四方の分子を使い、ストレージの研究を科学研究の基礎的な水準に持ち込んだと言える。この手法を用いることで、現在用いられている手法に対して100分の1の小さい領域に、1bitを格納できるようになる。これはつまり、分子メモリを使ったストレージが、理論的には現在のHDDの記録密度よりも100倍以上高まる可能性があることを意味する。
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「分子メモリ」がストレージを変える
分子メモリを活用したストレージの研究開発に取り組んでいる大学の研究チームが、記録密度を飛躍的に高めたストレージを開発できる可能性を見いだした。実用化は近いのか。
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