曖昧になるインフラ【後編】
「HCI」と「IaaSのオンプレミス版」のどちらを選ぶべきか?
HCI製品から、パブリッククラウドのソフトウェアやハードウェアをオンプレミス側で運用するアプライアンスまで企業が選択できるインフラは多様になり、境界が曖昧になってきた。どのような観点で選ぶべきなのか。
近年は「ハイパーコンバージドインフラ」(HCI)だとうたうさまざまな製品が登場している。その中にはサーバとストレージシステムを組み合わせたアーキテクチャを持つものもあり、これはHCI製品よりは「コンバージドインフラ」(CI)のアーキテクチャに近い。
HCI 2.0
初期に登場したHCI製品を後追いして市場参入したベンダーの中には、初期のHCI製品が抱えていた「ある課題」を解消していると主張するところもある。ある課題とは、サーバの増設により性能向上を図る「スケールアウト」の場合、CPUやメモリといったコンピューティングリソースと、ストレージリソースを個別に拡張できない点だ。例えばスケールアウトによってコンピューティングリソースを増強する目的でサーバを追加すると、仮に充足していてもストレージリソースを一緒に追加することになってしまう。HCIベンダー各社は、ストレージリソースを持たないディスクレスサーバによるスケールアウトを可能にするといった工夫で、こうした課題に対処している。
HCI市場における新たな動きとして、パブリッククラウドのIaaS(Infrastructure as a Service)と同様のソフトウェアやハードウェアをオンプレミス側で運用するアプライアンスが登場している。Microsoftの「Azure Stack」とAmazon Web Services(AWS)の「AWS Outposts」が好例だ。これも従来のサーバ、ストレージシステム、ネットワークを個別に構成する3層型のアーキテクチャから、統合型のインフラに移行する際の選択肢になる。どの製品を選ぶかは、ユーザー企業の判断にゆだねられている。
HCI vs. オンプレミス型IaaS 選定の決め手は
「Azure Stackはオンプレミス側でパブリッククラウドの『Microsoft Azure』(Azure)を運用するようなものだ」。こう語るのは、事件や自然災害の対策に最新技術を生かすパブリックセーフティ分野でトレーニングサービスを提供する、Lexipolのパトリック・サダース氏だ。同社はAzure Stackが優れた手段だと評価したものの、コストも考慮した結果、Azure Stackを最適な選択肢だとは考えなかった。同社はオンプレミスにNutanixのHCI製品を導入し、それをパブリッククラウドと連携させるサービス「Nutanix Xi」シリーズを利用している。
「自社が運用するデータセンターにパブリッククラウドの要素を導入することが正しい選択なのかどうか結論を出せずにいる」とサダース氏は打ち明ける。Azure Stackの利用料金は高額になるため、それを支払ってでも導入するメリットがあるかどうか判断できないのだ。「2000人以上の従業員を抱える規模の組織であればメリットは出る可能性があるが、当社の予算には見合わなかった」と同氏は語る。
ファストフードチェーンのWendy'sはAzureとAWSを併用していることに加えて、オンプレミスにはNutanixのHCI製品を導入している。Wendy'sでサーバとストレージ部門の責任者を務めるドン・ムラフスキー氏は「クラウドの選択肢はオープンにしておきたい」と語る。しかしAzure Stackは同社の要件を満たせなかった。「MicrosoftがAzure Stackの利用料金を下げない限り、コストが見合わない」(ムラフスキー氏)。導入するのがCI製品であれ、HCI製品であれ、クラウドであれ、同社が目指すのはコスト削減だ。
「当社にとって『支出』はマイナスの言葉。物理的なリソースの削減に努めている」とムラフスキー氏は強調する。過去1年で約90台の物理サーバを廃止し、その大部分をHCI製品に移行した。だが、まだコスト削減の対象となるサーバは残っている。「計画倒れになるものもあれば、Azureに移行するものもあるだろう」と同氏は前置きしつつ、パブリッククラウドではAzureとAWSに投資していると説明する。「活用できるものは活用してみるつもりだ」(同)
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