在宅勤務1割から9割へ急増のバイオ企業、悩みは「社員宅の無線LANトラブル」テレワークがIT部門に与えた影響【前編】

テレワークで発生するトラブルは原因の特定が難しい傾向にある。新型コロナウイルスの感染拡大に伴いテレワークを推進した企業のIT部門は、どのような課題に直面しているのか。

2020年05月11日 05時00分 公開
[Beth PariseauTechTarget]

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染拡大に伴い、企業は職場での感染を防ぐために従業員のテレワークを急速に進めており、IT部門はその準備やトラブルの対処に追われている。

 テレワークへの移行を機に、社内で集中管理しているITリソースとネットワークに外部からリモートアクセスできるようにする企業は少なくない。そのためにIT部門はこれまでとは違うやり方でエンドポイントセキュリティとトラブルシューティングを実施する必要がある。新しいテレワーク需要に対処するため、IT関連予算の早急な変更も迫られている。

 バイオテクノロジー企業StemCell Technologies(以下、STEMCELL)では、それまで10%だった在宅勤務者の割合が、2020年3月に90%以上になった。同社CIO(最高情報責任者)のジョン・リリーマン氏は「従業員の自宅無線LANのトラブルシューティング支援の必要性が増している」と指摘。従業員が社外から社内LANに入れるようにし、その際のセキュリティはツールで確保するようにした。

従業員の自宅無線LANが悩みの種

 STEMCELLの従業員は社内LANへのアクセスに自社のSSL(Secure Sockets Layer)技術を使用したVPN(仮想プライベートネットワーク)を利用する。同社は、従業員のエンドポイントから社内LANに直接アクセスできないようにしている。そのため多くの従業員は研究所内のエンドポイントへのリモート接続にリモートデスクトッププロトコル(RDP)も使用する。在宅勤務者の急増により、同社はAmazon Web Servicesが提供するVPNサービス「AWS VPN」を追加で導入することにした。

 VPNのスケールアップより厄介だったのは、在宅勤務者のエンドポイントと自宅LANへの技術的な支援だ。「従業員ごとに無線LANの構成も違えば、インターネットプロバイダーも違う。会社の環境では起こらないようなさまざまな問題に遭遇した」(リリーマン氏)

 テレワークを導入すると、SaaS(Software as a Service)形式のコラボレーションツールの使用に関するトラブルシューティングも複雑になる。SaaSに問題があるのか、それともエンドユーザーの環境やネットワーク接続に問題があるのか、特定が難しいからだ。

 IT管理サービスとサイバーセキュリティのコンサルティング企業Agioの最高執行責任者(COO)を務めるミテン・マーバニア氏は、250人の従業員全員をWeb会議サービス「Zoom」で実施したリモート会議に参加させるのは大変だったと語る。Zoomにログインできても、音声が聞こえない従業員がいたのだ。「従業員の自宅LANが原因の可能性があるが、関係のある要素が多く、トラブルの原因を特定するのは難しい」(マーバニア氏)

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