三井住友海上火災保険はAutoML(自動機械学習)ベンダーdotDataの製品を使用して、パーソナライズしたCX(カスタマーエクスペリエンス:顧客体験)を提供する「MS1 Brain」を構築した。構築の背景を追う。
日本の大手保険会社である三井住友海上火災保険(以下、三井住友海上)は、数年前からデジタル化に取り組んでおり、さらなるデジタル化に向けて新たな打ち手を出し続けている。一人一人に最適なCX(カスタマーエクスペリエンス:顧客体験)を提供する目的で導入したのが、AI(人工知能)技術を活用した新たな代理店システム「MS1 Brain」。これは、三井住友海上が複数立ち上げているプロジェクトの中でも野心的な取り組みの一つだ。
2020年初頭に三井住友海上が発表したMS1 Brainは、顧客情報に機械学習と予測分析を使用して、今後生まれてくるニーズを予測する。そして、その予測に基づいて商品やサービスを顧客に提案する。顧客情報には連絡先の詳細情報の他、事故履歴やライフスタイルの変化などが含まれる。
MS1 Brainは顧客とのコミュニケーションをパーソナライズした形で提供するためにも使われる。三井住友海上のビジネスモデルはB2B2C(Business to Business to Consumer)であり、商品は代理店を通じて販売している。同社では「個人と法人の顧客それぞれのニーズを知って商品を提供する上で、これまでは主に各代理店が経験に基づき習得した知識を活用してきた。MS1 Brainが顧客それぞれのニーズの分析結果を代理店に提供することで、あまり経験のない代理店であっても、さまざまな要望に対して適切な提案ができるようになる。
三井住友海上はMS1 Brainのシステム構築に当たって、dotDataの「AutoML」(自動機械学習)製品を利用した。dotDataと初めて接点を持ったのは、三井住友海上の最高情報責任者(CIO)が技術調査でdotDataの本社があるシリコンバレーを訪れたことがきっかけだった。
当時、dotDataは創業直後で、まだ商品をリリースしていない状態だった。にもかかわらず、三井住友海上は機械学習を完全に自動化することを売りにするdotDataのAutoML製品に興味をそそられた。AutoML製品は他にDataRobotやH2O.ai、Auger.aiなどが手掛ける。
通常、データ分析ではモデルの精度が最も重視される。それに対して、dotDataのAutoML製品は手を加えていないデータから実用的なモデルにどれだけ迅速に移行できるかを重視する。三井住友海上が特に評価するのは、AIベースの特徴量の設計だ。dotDataの創業者兼CEOを務める藤巻遼平氏は「三井住友海上は多くのインテリジェントモデルを構築する必要があったが、そのようなモデルを構築するデータサイエンスチームがなかった」と振り返る。
三井住友海上はdotDataのAutoML製品を活用することで、特徴量の生成からモデルの実装に至るまで、AIの全構築プロセスを自動化することができた。
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