テレワークがIT部門に与えた影響【後編】
IT部門こそ新型コロナウイルスの感染拡大を「IT」で乗り切るべし
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、IT部門が処理しなければならない問題は増加傾向にある。これらの問題を効率的に処理するには、どのようにすればいいのか。事例を基に説明する。
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染拡大で、開発(Dev)と運用(Ops)の工程を繰り返すDevOpsチームの優先項目も大きく変わった。革新と新規事業のためのプロジェクトを後回しにし、従業員のテレワークを実現するためのサービスデスク業務や、エンドユーザーのセキュリティ対策の支援に回っている。前編「在宅勤務1割から9割へ急増のバイオ企業、悩みは『社員宅の無線LANトラブル』」と中編「新型コロナ対策のテレワークでITトラブルが急増? IT投資動向にも変化が」に続く本稿は、テレワーク環境の改善に取り組む企業の事例を取り上げる。
ツールの活用で在宅勤務のサービスデスクの負担を軽減
バイオテクノロジー企業StemCell Technologies(以下、STEMCELL)のDevOpsチームは、サービスデスクのスタッフをOutSystemsのローコード開発ソフトウェアで支援している。STEMCELLは2018年からこのソフトウェアを社内向けアプリケーションの作成と管理に利用しており、2020年3月にはこのソフトウェアを使い、48時間で「My Status」という管理職向けアプリケーションを作成した。管理職はMy Statusを使ってテレワーク中の部下の勤務状況と、業務用エンドポイントを管理できる。
「これを使えば、管理職が簡単に従業員と機器を管理できる。おかげでサービスデスクに大量のチケットが押し寄せずに済む」と、STEMCELLのCIO(最高情報責任者)であるジョン・リリーマン氏は語る。
新型コロナウイルス感染防止のために自宅で働く従業員は、それぞれ業務上の優先事項が異なり、「Microsoft Teams」や「Slack」のような企業向けコラボレーションツールの導入が適さなかったとリリーマン氏は語る。
IT管理サービスとサイバーセキュリティのコンサルティング企業Agioのサービスデスクチームも、エンドユーザーのノートPCのトラブルシューティングを比較的シンプルなスクリプトで効率化している。STEMCELLと同様、Agioでもソフトウェア開発者がサービスデスクの業務を支援している。
Agioは社内ストレージと、BigPanda製AIOpsツールの間のAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)接続を管理することにより、サービスデスクが処理するチケットやアラートの数を減らし、テレワーク中の担当者の負担を軽減している。アラートが発生したら、BigPandaでスクリプトを開始してデータを収集。ServiceNowのITサービス管理ツールで作成したチケットにその情報を含める。
テレワーク導入への対処と明確なコミュニケーションの確保のために、Agio のDevOpsチームは日次や隔週だったスプリント(開発期間単位)を週次に変更したと、同社の最高執行責任者(COO)を務めるミテン・マーバニア氏は説明する。またサービスデスク支援以外にも改めて基本に戻り、25種類のバックエンドITシステムの命名規則を統一した。
企業の業務形態が不可逆的に変化する可能性
テレワーク導入の最初の波を乗り越えたIT部門は、今後起こり得るビジネスの中断や、従業員の新型コロナウイルス感染などの課題に備え始めている。
例えば誰かが新型コロナウイルス検査で陽性となったとき、STEMCELLのMy Statusは、自社施設に誰が入館し、どこで作業していたのか追跡するのに役立てることが可能だ。企業はパンデミック(感染症の世界的大流行)が起きたとき、自社の製品やサービスの需要に影響する新しい世界経済状況にも適応しなければならない。
IT部門はパンデミック終息後の新しい生活様式にも備える必要がある。Agioのマーバニア氏は、パンデミック前とは違う状況が待っていることは、はっきりしていると話す。「従業員のテレワークをサポートできると分かった今、ニューヨークやロサンゼルスのオフィスに高額な費用をかける必要があるのかどうか、企業は疑問を抱き始めている」(マーバニア氏)
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