大学が“クラウド全面移行”をやめて「HCI」を選んだ理由大学の「HCI」活用【後編】

アラバマ農工大学がHCIを利用してデータセンターを改修した目的はDR対策だった。同校CIOによれば、クラウドサービスではなくHCIを採用したことには理由がある。それは何か。

2020年09月03日 05時00分 公開
[Dave RaffoTechTarget]

 竜巻の多い地域に位置するアラバマ農工大学(AAMU:Alabama Agricultural and Mechanical University)は、ディザスタリカバリー(DR)対策の一環としてデータセンターを刷新した。このデータセンターは、アラバマ州内の複数の「HBCU」(歴史的黒人大学:アフリカ系アメリカ人のために設立された高等教育機関)が共用できるデータセンターとして稼働している。「スケーラビリティと一括管理を実現するだけでなく、他の大学も利用可能なDRサービスを用意したかった」と、AAMUの最高情報責任者(CIO)であるダミアン・クラーク氏は説明する。

 AMMUは、NutanixのHCI(ハイパーコンバージドインフラストラクチャ)を導入してデータセンターを刷新した。HCIの採用を決定する前に、クラーク氏は全面的なクラウドサービスへの移行も検討していた。「最初は完全なクラウドサービスへの移行以外に、解決策はないと思っていた」と同氏は語る。

なぜクラウドでなくHCIを選んだのか

 調べてみると、クラウドサービスにデータを置く操作に対する費用対効果は高いものの、クラウドサービスからデータを取り出す操作に対する費用対効果は低いことが分かった。「それでは今の予算に合わなかった」(クラーク氏)

 AAMUはHCIを採用することで、データセンターの消費電力とデータセンターに関わるベンダーを大幅に減らすことができた。それまではDell EMCのストレージアレイとCisco Systemsのサーバを使っており、データセンターは改善後よりかなり大規模だったという。

 「データセンターでは、あまりにも多数のベンダーの製品・サービスを利用していた」とクラーク氏は振り返る。問題が発生してベンダーに電話すると、そのベンダーは「別のベンダーのせいだ」と言い、電話しているうちにシステムがダウンする。そこでまた電話して、ダウンしている理由を学長に説明しなければならない――といった具合だったという。

 クラーク氏が率いるITチームは2020年6月現在、15人のスタッフで7000人以上のエンドユーザーにサービスを提供している。チームはインフラの稼働状況をあまり気に掛けずに済むようになり、業務効率が高まったという。「以前よりも今後の戦略について話す機会が増えた。スタッフにはトラブル対処に忙殺されずに、先のことを考えてほしい」と同氏は語る。

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