VDIのメリットとしてよく挙がるのが、クライアント端末の管理負荷の軽減やセキュリティ対策の強化だ。実はVDIそのものに、IT担当者の管理負荷を増大させたり、セキュリティを脅かしたりする要素がある。それは何か。
「VDI」(仮想デスクトップインフラ)のベンダーがアピールするクライアント端末の管理コスト削減やセキュリティ向上といったメリットは、「VDIの落とし穴」にはまると帳消しになってしまう。コストや複雑さ、パフォーマンスの問題を理由に、VDIの導入計画を縮小したり、打ち切ったりするユーザー企業は少なくない。前中後編にわたり、VDIの導入を検討する際に注意すべき点を説明する。
企業がVDIを利用する主なメリットは、デスクトップ管理の簡素化だ。IT担当者は、多数のクライアント端末で稼働するアプリケーションやデータを個別に管理する必要がなくなり、仮想デスクトップのイメージファイルを集中管理できる。このためソフトウェアの更新やセキュリティパッチの適用などの作業が容易になる。
VDIで管理すべき要素は、決してイメージファイルだけではない。IT担当者はVDIを構成するハイパーバイザーやサーバ、ストレージ、ネットワークなども管理する必要がある。さらにクライアント端末の管理も全くなくなるわけではない。仮想デスクトップを利用するシンクライアントやモバイルデバイスは変わらず管理の対象だ。
サーバやストレージ、ネットワークの単一障害点(その1点が障害を起こすとシステム全体が停止してしまう可能性がある部分)をなくすために、VDIを正常に稼働させ続けるためのフォールトトレラント技術も必要になる。VDIを管理するIT担当者は、高いパフォーマンスと信頼性を維持するために、さまざまなスキルセットを必要とする。
仮想デスクトップで利用することが難しいソフトウェアにも注意が必要だ。Microsoftのオフィススイート「Microsoft Office」のような比較的有名なソフトウェアは、仮想デスクトップでも問題なく利用できる。仮想デスクトップでレガシーアプリケーションや特殊なアプリケーションを利用するには、VDIの導入作業に手間をかけなければならない場合がある。
セキュリティにも注意を払わなければならない。エンドユーザーがクライアント端末にデータを保管する必要なく、さまざまな場所やデバイスからデータやアプリケーションを利用できることは、VDIの売りだ。ただし、いったんVDIサーバにマルウェアが侵入すると、エンドユーザー全員に影響が及ぶ可能性がある。
VDIでは、1つの問題の影響が大きくなりがちだ。小さなミスのせいで数百人、数千人のエンドユーザーが仮想デスクトップを利用できなくなることがある。VDIを導入するときは、IT担当者が堅牢(けんろう)な事業継続計画を用意し、可用性を保つ必要がある。
中編は、VDIが持つパフォーマンス低下のリスクを掘り下げる。
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
さまざまなメリットをもたらす仮想化環境だが、2023年にVMwareが買収されたことで、ユーザー企業は難しい判断を強いられている。そこで、コストメリットも大きい、仮想化環境のモダナイゼーションの方法について解説する。
データ分析・利活用のニーズが高まる中、アクションのベースとなるデータも膨大な容量となり、今後も増え続けていく見通しだ。そうなると、各企業はデータ利活用基盤として、信頼性や拡張性の高いストレージを求めるようになるだろう。
OSの移行には「データ移行」が付き物だが、その業務負荷の高さに悩まされているIT管理者は多いだろう。Windows 11への移行を進める前に知っておきたい、「データレスPC」の有効性や、導入で得られる“プラスα”のメリットを解説する。
技術や市場の変化が激しい自動車業界にあって、長年、数多くの自動車メーカーに部品を供給してきた東海理化。同社は変化に柔軟に対応するためのDX推進に当たって、これまで運用してきたレガシー仮想環境からの移行を断行する。
ハイブリッド/マルチクラウドへ移行する企業のIT環境だが、クラウド同士の連携は複雑な上に、運用も非効率になりがちだ。そこで、この問題を解消するためのハイブリッド/マルチクラウドプラットフォームを紹介する。
お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。
「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。
「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...
Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...