脱クラウドに踏み切る際、使用をやめるクラウドサービスが「IaaS」なのか、「PaaS」なのか、「SaaS」なのかによって注意すべき点が異なる。どのような違いがあるのか。
仮想マシンやコンテナなどをクラウドサービスとして利用する「IaaS」(Infrastructure as a Service)の場合「脱クラウドは比較的簡単だ」と、調査会社Gartnerでバイスプレジデントを務めるイライアス・クナサー氏は述べる。例えば下記のような「Amazon Web Services」(AWS)のIaaSを利用している場合だ。
一方で「PaaS」(Platform as a Service)を使用してアプリケーションを構築・運用している場合、脱クラウドに向けた出口戦略はより複雑になる。AWSのPaaSとしては、イベント駆動型コード実行サービス「AWS Lambda」やWebアプリケーション実行・管理サービス「AWS Elastic Beanstalk」などがある。こうしたPaaSを使ったアプリケーションをオンプレミスのインフラに移行させるには、リファクタリング(プログラムの内部構造を変更すること)が必要になるケースが少なくない。
PaaSを使用するアプリケーションの脱クラウドを実行する際は、オンプレミスのインフラ向けに同様の機能を提供する製品や、他のクラウドサービスに乗り換えることを検討する必要がある。クナサー氏は「これにどの程度の労力がかかるのかを評価しなければならない」と語る。一般的には追加的な開発作業も必要になる。
クラウドサービスのユーザー企業は「クラウドサービスで管理するデータの可視性が低い」という問題に直面しがちだ。これはクラウドサービスに関する大きな制約になっている。「特に『SaaS』(Software as a Service)の出口戦略において、この点が問題になりやすい」と、テクノロジー系の案件を扱う法律事務所Culhane Meadowsの共同設立者、ジェームス・メドウズ氏は言う。
IaaSやPaaSと比べて、SaaSはエンドユーザーのデータにより密接に関係している。SaaSからの出口戦略を検討する際は、データの移植性と変換に関する要件の他に、どのデータセットの抽出や転送が必要になるかを確認する必要がある。
データによってはクラウドベンダーが所有権を主張する可能性もある。ユーザー企業が用意したデータを基に構築した分析モデルや機械学習モデルなどがこれに該当する。「所有権の扱いは一般的に契約の問題なので、脱クラウドを実行する時点で変更を加えようとしても遅過ぎる」とメドウズ氏は述べる。このような問題は、SaaSによるさまざまなデータ処理を巡って起きる可能性がある。サービス利用を停止する際に、全データを破棄・消去することを義務付けるベンダー固有の契約も存在する。該当する場合は、あらかじめその条件を理解しておくことが重要だ。
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