新型コロナウイルス感染症のパンデミック下で、CEOが注目した技術とは何か。各社のIT戦略の変化とは。米国上場企業約3000社の決算報告書に書かれたキーワードが、パンデミック前後でどう変化したかを基に考察する。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が拡大する中で、CEOが注目した技術分野は何か。調査会社IoT AnalyticsはIoT(モノのインターネット)に関する市場調査レポート「IT & IoT Trends – Mid 2020 update」を公開した。これは米国の上場企業約3000社の2019年第4四半期(2019年10月〜12月)と、新型コロナウイルス感染症拡大後の2020年第2四半期(2020年4月〜6月)の決算報告書で使用されたキーワードを可視化し、分析したレポートだ。分析結果は、企業のCEOが期間中にどのような技術を重要視したかを表している。
以下の図は、決算報告書における各キーワードの使用量と、2019年から2020年にかけての使用頻度の変化を示している。図の横軸は2020年第2四半期の決算報告書が、各キーワードにどれくらいの頻度で言及したかを表す。図の右側にあるキーワードほど、より多く話題に上がったことを意味する。図の縦軸は2019年第4四半期の決算報告書におけるキーワード使用量を100とし、2020年第2四半期と比較したときの使用頻度の増減を表す。
縦軸の数値が10のキーワードは、2020年第2四半期の決算報告書における言及回数が、2019年第4四半期の10分の1となったことを示す。縦軸の数値が1000のキーワードは、2020年第2四半期の決算報告書における言及回数が、2019年第4四半期の10倍になったことを示す。つまり数値が100以上のキーワードは、時間がたつほどに言及回数が増し、100以下のキーワードは言及回数が減少したことを意味する。
本稿は言及回数が多く、2019年から2020年にかけて言及回数が大きく増加したキーワードを重要度が高いキーワードだと定義する。CEOは重要度が高いキーワードについて、どのように語ったのか。各社が2020年第2四半期に発表した決算報告書に記したコメントから具体的に見てみよう。
「Web会議」や、遠隔医療の用途を含む「遠隔監視システム」など、テレワーク関連技術が話題に上がった回数がCOVID-19の拡大前後を比較して10倍以上上昇した。
状態監視保全を含むビル設備の遠隔制御事業は、大きく成長すると考えています。今後も遠隔制御に関連する新たなビジネスアイデアやサービスを提供します。
COVID-19のパンデミック(世界的大流行)を受け、サプライチェーンを管理して顧客満足度の維持に務めることへの関心が高まっている。具体的にはサプライチェーンの可視化と供給の混乱防止、サプライチェーン全体のレジリエンス(回復力)の構築などが挙げられる。
コロナ禍で原価や設備投資の管理をするには、迅速なサプライチェーンプロセスを有することがこれまで以上に重要です。当社は、従来は月1回のペースだった売り上げと在庫のオペレーション計画立案を、週に1回のペースで実施することにしました。
パンデミックによってテレワークへの移行や事業停止の必要が生じた企業では、ITシステムも事業形態に合わせて変更させる必要が生じた。その混乱に乗じた攻撃者によるフィッシング攻撃やスパム攻撃、ランサムウェア(身代金要求型マルウェア)攻撃も活発化した。
それまで自社が使用していたデータセンター向けのセキュリティ対策と同じ水準のクラウドセキュリティを実現できないままに、クラウドサービスへのデータの移行を急ぐ企業があります。そのためクラウドサービスにおける情報漏えいは今後増えると予想しています。
世界で不確実性が増し、人々の移動を制限するロックダウン(都市封鎖)が広がったことで、デジタルで現実世界を仮想的に再現する「デジタルツイン」技術とシミュレーション技術の活用が加速した。こうした技術の代表的な応用例が、現地へ赴くことなく遠隔操作で機器を設定する「バーチャルコミッショニング」だ。ロックダウン中に従業員の移動が制限されたことで、試作品を仮想空間に再現してその挙動をシミュレーションするようになった企業もある。
人々は今まで以上にコスト削減を望んでおり、これが企業のシミュレーション技術の活用を積極的にさせています。
材料を切削するのではなく、材料を積層させて製品を造形する「アディティブマニュファクチャリング」(付加製造)技術の採用が製造業界で進みつつある。アディティブマニュファクチャリングには材料にかかるコストや環境負荷を小さくしつつ、製品生産ができるメリットがある。COVID-19の治療に必要となる医療機器の不足を受けて、医療機器メーカーだけでなくさまざまなメーカーが3D(3次元)プリンタを活用して人工呼吸器を製造するといった事例もある。
今回のパンデミックで、3Dプリンタのメリットである生産のスピードが示されました。設備の導入が容易なことから、製品のエンドユーザーがいる場所の近くに、小規模な工場を設置して製造できるようになる可能性もあります。3Dプリンタのユーザー企業がサプライチェーンを見直し、製造拠点の分散を検討するようになれば、ベンダーとユーザー企業はより戦略的な関係が構築できるようになります。
レポートが示す、その他の注目すべき動向は以下の通りだ。
世界の主要調査会社300社以上とパートナー契約を結び、日本をはじめとする世界各所で市場調査レポートを提供。レポートの販売の他、提携先への委託調査の仲介も実施している。
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