医療機関のリアルタイムCX【前編】
医療機関にとっての「リアルタイムCX」の意味とは? 実現に向けた3ステップ
「リアルタイムCX」に、さまざまな業界が注目し始めている。医療機関にとって実現は遠い未来になりそうだが「努力に見合った価値がある」と専門家は言う。どのような価値があるのか。実現の方法とは。
ビジョン、投資、洗練化、管理性は、どれも組織の変革に欠かせない要素だ。Ford Motorの設立者で、実業界の大物であるヘンリー・フォード氏は20世紀前半の製造業に「移動式組み立てライン」を導入したことで、生産速度の向上と生産コストの削減に成功した。このような変革を実現するには工場の作業現場の全面的な再構築が必要だった。
調査会社Forrester Researchは調査サービス「FeedbackNow」の提供を通じて、カスタマーエクスペリエンス(CX:顧客経験価値)をリアルタイムで可視化し、改善する「リアルタイムCX」の実現を支援しようとしている。同社にとってリアルタイムCXは単なる流行語ではない。自動車製造業にとっての移動式組み立てラインと同じように、同社はリアルタイムCXをさまざまな業界にとっての「大規模な変革を伴う、将来を見据えたアイデア」として位置付けている。
組織の間でリアルタイムCXが浸透するのはもっと未来になるだろう。その未来では、組織が任意のタイミングで従業員や予算といったリソースを再配置し、方針やプロセスを随時更新し、アプリケーションや端末を計画的かつ容易に変更してCXを改善できるようになる。
リアルタイムCXの実現には多大な労力が必要だ。医療業界ではCXと組織の利益との間に明確な相関関係が見られるため、その労力は最終的に報われるだろう。
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新型コロナ禍による医療機関への影響
コロナ禍を機に重要視されるデジタルエクスペリエンス
現在の医療業界は、コストの制約や厳しいデータ保護規制といった障壁を乗り越えなければならない。とはいえ医療業界は絶えずCX向上に向けた変革に取り組んできた。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行(パンデミック)は、医療業界に歴史に残るほどの重圧をもたらしている一方で、遠隔医療や革新的なオンラインサービスといった進化の後押しにもなっている。
医療機関にとって、CXとは具体的に何を指すのだろうか。例えば次のようなことだ。
- 分かりづらいWebサイトや問題のあるアプリケーションといったタッチポイント(医療機関と患者との接点)をすぐに変更する
- リアルタイムに人的・物的リソースを配置転換することで待ち時間を大幅に短縮する
- 天候や人の往来に関するリアルタイムデータを参照して、清掃スタッフのリソースを積極的に調整する
リアルタイムCXを実現する3つのステップ
リアルタイムCX実現のために、医療機関は以下の3のステップを踏む必要がある。
ステップ1.リアルタイムデータ取得
まずは予約、待合室、保険会社とのやりとりなど、医療機関の利用にかかわる全て(物理的なものからデジタルまで)のタッチポイントでCXを測定する。直感的に理解できるかどうかに関係なく、CXに影響する全ての分野からデータを取得する必要がある。天候、交通状況、人の往来、処理時間といった要素をリアルタイムで収集することも含まれる。ただしこのようなデータの大半はリアルタイムのアクセスを想定しておらず、保護されていることもほとんどないため、実現は容易でない。
ステップ2.リアルタイムデータ分析
次はデータ同士の相関関係を洗い出し、予測や次善策の提案、判断の強化を実施する。患者に診療などの医療サービスを提供するための相関関係と予測は概して、直感的に理解できるものではない。このステップでは機械学習が重要な役割を果たす。リアルタイムCX実現のためには、膨大な教師データを活用した機械学習モデルの訓練が不可欠だ。
ステップ3.リアルタイムの行動
最後は診察中の患者や待機している患者のCX向上に向けて、総合的な方針やプロセス、スタッフ配置などの問題を解決するために、データ分析の結果をリアルタイムに生かして行動する。このステップでは画期的な変革が必要になる。単一の方針ではなく、複数の方針で構成される戦略を策定して、リアルタイムの変化に備えて別の方針に素早く切り替えられるようにしなければならない。
リアルタイムCXを実現するには、CX推進担当者は医療機関の再構築に向けて経営陣、CEO、施設職員全体の賛同を得ることも欠かせない。医療機関では、短期間で実現可能な明確な収益上のメリットがなければ、このようなリアルタイムCXに関する賛同を得るのは難しい。
後編は、医療機関がリアルタイムCXを実現するための具体的な施策例を紹介する。
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