「ローカル5G」活用の可能性を探る【後編】
ローカル5Gの基礎知識 「SA」「NSA」「MEC」「ミリ波」「Sub-6」とは?
5Gのインフラを自前で運用する「ローカル5G」を理解するには、どのような基本的な情報を持っておけばいいのだろうか。インフラの構成や利用する周波数帯であるSub-6とミリ波など、基本的なポイントを紹介する。
「5G」(第5世代移動通信システム)をプライベートなネットワークとして運用する「ローカル5G」の導入を検討する場合、ネットワークの構成や利用する周波数を検討する必要がある。5Gの「RAN」(無線アクセスネットワーク)をオープン化する動向や、基地局の構成を紹介した中編「『ローカル5G』の導入障壁は『5G』の“RANオープン化”で下がるのか?」に続き、ローカル5Gの基本を紹介する。
「SA」と「NSA」
5Gのインフラ構成としては、「スタンドアロン」(SA)と「ノンスタンドアロン」(NSA)の2通りの構成がある。SAはネットワーク全体を制御する「コアネットワーク」と、RANの全てを5Gの仕様にする。NSAは「4G」(第4世代移動通信システム)のコアネットワークに5GのRANを接続する。
NSAは4Gのインフラを生かしつつ、基地局側のデータ伝送速度などの性能を部分的に向上させることができるため、通信事業者が早期に5Gサービスを提供するための暫定策のようなものだ。無線通信分野に詳しい情報通信総合研究所(ICR)の上席主任研究員、岸田重行氏は「通信事業者の5Gサービスを使わずにあえてローカル5Gを導入するのであれば、5Gの性能をより引き出しやすいSAで検討するのが自然だろう」と話す。
コアネットワーク、RAN、MECの配置
ローカル5Gのインフラ構成にはさまざまな選択肢がある。まずコアネットワークを配置する場所だ。完全にオンプレミス型で導入する場合は、コアネットワークとRANを全て自社の敷地や設備内に配置する。より導入コストを抑制するには、コアネットワークをクラウドサービスとして調達し、RANだけを自前で設置する方法も考えられる。
コアネットワークとRANの間のネットワークも検討する必要がある。コストを安価に済ませるのであれば、インターネット回線を採用することも可能だ。ただし高速なデータ伝送速度や低遅延などの5Gの性能を生かしたいのであれば、これは推奨できる選択とは言えない。岸田氏は「企業がローカル5Gを必要とする理由には、セキュリティの高さを重視していることもあるだろう」と指摘する。その場合は他のユーザーと共用するインターネット回線ではなく、物理的または仮想的な専用線を使うことが選択肢になる。
ローカル5Gのインフラ構成においては「MEC」も重要な存在になる。MECは「マルチアクセスエッジコンピューティング」または「モバイルエッジコンピューティング」の略称だ。データ処理を端末に近づけるエッジコンピューティングのモバイルネットワーク版だと考えればよい。
岸田氏は「用途によってMECにどのような役割を持たせるのか、どこに配置するのかなどが重要になる」と話す。MECの活用の仕方はさまざまだ。通信自体の効率性を高めるために制御機能を担わせることもできるし、データセンターではなく基地局の近くに配置したMECにアプリケーション配信機能を担わせ、端末への配信を高速化する使い方もできる。重たいデータの処理をMECで実施し、データセンターとは必要最低限のデータのみのやりとりで済ませる活用の仕方もある。
「Sub-6」と「ミリ波」の違い
国内のローカル5Gの免許制度が2019年12月にスタートした際、ローカル5G用に割り当てられた周波数帯は「ミリ波」の周波数帯である28.2G~28.3GHzだった。その後、2020年12月に「Sub-6」と呼ばれる4.6GHz~4.9GHzの周波数帯と、ミリ波帯では28.3G~29.1GHzが追加で割り当てられた。
Sub-6とは、5Gが利用する周波数の中で「6GHz未満の周波数帯」という意味合いで使われている。一方のミリ波とは、一般的には波長が1~10ミリの電波を指す。5G向け免許の周波数帯である28GHz帯は波長が10ミリを越えるので厳密にはこのミリ波の定義から外れるが、ミリ波の波長に近い電波であるという理由で、ミリ波として扱われている。
ミリ波とSub-6の両方の電波を使えるようになり、ユーザー企業にとってはローカル5G活用の選択肢が広がった。これらの周波数帯にはどのような違いがあるのだろうか。周波数は1秒当たりの振動(波)の数を表しており、一般的にはこの周波数が高いほど一度に送れるデータ量も多くなる特性がある。反対に周波数が高くなるほど波長が短くなり、電波が遠くまで届きにくくなったり、遮蔽(しゃへい)物の後ろまで回り込みにくくなったりする。
5Gによるデータ伝送速度の高速性をより引き出すのであれば、周波数が高く、より広い帯域幅が割り当てられているミリ波の方が有利だ。ただしミリ波は遮蔽物に弱い。電波の拾いやすさで考えるとSub-6の方が使いやすい周波数帯だと言える。ただし岸田氏は「一概にミリ波が使いにくいとも言えない」と指摘する。外に電波を漏らしたくない場合は、ミリ波の方が都合がいいからだ。例えばセキュリティを重要視して、完全に工場の中だけに閉じてデータの送受信をしたいニーズが考えられる。
周波数帯の特性は、電波を建物内に届ける際にも考慮しなければならない。基地局を外に配置した場合、Sub-6であれば建物内の端末まで十分に電波を届けられたとしても、ミリ波では難しくなる可能性がある。そのため岸田氏は「基地局を建物内に配置する、屋外基地局からの電波を建物内の壁近くで受信するなど設計上の工夫が必要になるだろう」と説明する。
ローカル5Gは総務省による制度設計は整ったものの、活用に向けてはまだ歩みを始めたばかりだ。ローカル5Gの構築支援を提供するベンダーによる製品やサービスも増えている途上であり、市場は手探りの状態にある。とはいえRANのオープン化を中心とした注目すべき動向もあるため、ユーザー企業としても今後ローカル5Gは注目しておくべき分野の一つになるだろう。
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「ローカル5G」活用の可能性を探る
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