トヨタ系地図サービス会社が、3大クラウドではなく「OCI」のDBMSを選んだ理由クラウドニュースフラッシュ

国内企業の「OCI」の導入事例やクラウド利用状況調査の結果、「秘密計算」が可能なクラウドサービスの提供開始など、クラウドの主要なニュースを紹介する。

2021年09月30日 20時00分 公開
[上田 奈々絵TechTargetジャパン]

 国内の企業は、オンプレミスのデータセンターからクラウドサービスへシステムを移行させるときに、どのベンダーのクラウドサービスを選んでいるのか。トヨタ自動車グループ企業のクラウドサービス導入事例や国内企業のクラウド利用状況調査など、クラウドに関連する主要なニュースを6つ紹介する。

生化学工業が基幹システムを「OCI」に移行 クラウド移行の背景とは

 製薬企業の同社は生産管理や販売管理、原価管理を担う基幹システムをオンプレミスインフラで稼働させていた。インフラの保守や更新にかかる負担が課題となっていたことから、基幹システムの構築に利用していた会計ソフトウェア群のバージョン更新と同時にインフラの刷新を決定。2021年4月に会計ソフトウェア群をOracleのクラウドサービス群「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)へ移行させた。旧システムでOracleのデータベース管理システム(DBMS)「Oracle Database」を使用していたことから、Oracle Databaseの技術との親和性の高さを評価してOCIを採用した。併せてデータのバックアップ手法を変更。テープにデータを記録して倉庫に保管する手法から、OCIの複数のリージョン(地域データセンター群)間でデータを複製する手法に変更することで、工数と保管スペースを削減した。システム構築はインテックが担った。(発表:インテック<2021年8月27日>)

地図サービスのトヨタマップマスターが「OCI」のクラウドDBMSを採用した理由

 トヨタ自動車のグループ会社であるトヨタマップマスターは、カーナビゲーションシステムやオンライン地図サービス向けの地図データベースの制作と販売を手掛ける。従来は全国の道路や建築物、地形などの地理データを、オンプレミスのドキュメント指向のデータベース管理システム(DBMS)で管理していた。業務ごとに複数のツールやデータベースが追加されることで生じる地図編集業務のサイロ化や、データベースの追加で発生するコストが課題となったことから、DBMSの刷新を決定した。「Oracle Database Cloud Service」をはじめとしたOCIのDBMSサービスの採用に当たっては、複数の形式のデータを一元管理できるOracle Cloud Database Cloud Serviceの「コンバージドデータベース」という仕組みに加え、日本オラクルのコンサルティング部門のデータベース関連技術や構築支援体制を評価した。Oracle Cloud Database Cloud Serviceにデータベースを集約することで、地図製作に必要な全ての地理データを一元管理できるようになり、異なるDBMS間のデータ移動を減らせる。これによりデータベースの管理プロセスやセキュリティ対策の効率化を見込む。(発表:日本オラクル<2021年8月6日>)

「ビッグ3」に続く利用率第4位のベンダーは? 国内のクラウド利用状況調査

 パロアルトネットワークスが発表した調査レポート「クラウドネイティブセキュリティジャパンサーベイ 2021年版」によると、複数ベンダーのIaaS(Infrastructure as a Service)を採用する国内企業は59%で、平均して2社のIaaSを利用している。回答企業が利用するクラウドベンダーはAmazon Web Services(AWS)とMicrosoftが63%で並び、Google(19%)、富士通(14%)、NTTグループ(13%)、IBM(12%)が続いた。47%の企業が仮想マシンサービスを利用しており、海外(30%)よりも高い比率となった。一方でCaaS(Container as a Service)を利用する国内企業は8%で、海外(21%)と比較して低い。パロアルトネットワークスはこの結果について、国内企業はデータセンターでホストしていたワークロード(アプリケーション)をそのままクラウドサービスに移行させることを好み、コンテナといった比較的新しい技術の採用に慎重な姿勢を取る傾向があると考察する。調査は国内企業のクラウドサービス利用における意思決定者または実務従事者400人を対象に実施した。(発表:パロアルトネットワークス<2021年8月5日>)

クラウドが温室効果ガス排出量を減らす? データセンターのエネルギー消費量調査

 AWSと調査会社の451 Researchが実施した調査によると、日本の企業や公共機関のITシステムのエネルギー効率の推定値は、APAC(アジア太平洋)地域の5カ国(オーストラリア、インド、日本、シンガポール、韓国)の平均値を下回る。5カ国平均と比べてサーバのライフサイクルが長いこと、新しいサーバ製品の導入が遅いこと、システムの仮想化率が低いことなどがエネルギーの利用効率を下げる要因となっているという。451 Researchはクラウドベンダーのデータセンターが消費電力を抑えた最新のサーバ機器を利用していることに加え、サーバの稼働率が高く電力や冷却システムを効率的に利用していることなどから、オンプレミスのデータセンターよりもエネルギーの利用効率が高いと報告する。日本の組織が全てのアプリケーションをオンプレミスデータセンターからクラウドサービスに移行させることで、温室効果ガスの排出量を1年当たり約1885トン削減できると同社は試算する。(発表:アマゾン ウェブ サービス ジャパン<2021年8月19日>)

「秘密計算」をクラウドで即実行 NTTコミュニケーションズの「析秘」

 秘密計算はデータを暗号化したまま計算を実行し、結果のみを出力する計算技術だ。析秘は秘密計算で、回帰分析やデータ集計などの統計分析を実行する。大規模なシステム構築が不要で、Webブラウザから利用できるため、エンドユーザーがすぐに秘密計算を実行できることが特徴だ。個人情報や医療情報などの機密データなどを分析する用途への利用を想定している。利用料金はレコード数と利用者(ID)数に基づき、100万レコードプランの初期費用が50万円(税別、以下同じ)、月額利用料金が40万円から。(発表:NTTコミュニケーションズ<2021年8月19日>)

「IBM Cloud」、医療機関向けセキュリティレファレンスを公開 経済産業省・総務省版ガイドラインに準拠

 同レファレンスは経済産業省・総務省の「医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン」に掲載された個別の要求事項に対し、IBMのクラウドサービス群IBM Cloudが準拠しているかどうかを整理したものだ。このレファレンスを参照することで、IBM Cloudのユーザー企業や医療機関は、同ガイドラインに基づくセキュリティ対策を医療システムに実装しやすくなるという。(発表:日本アイ・ビー・エム<2021年8月31日>)

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