NASAのジェット推進研究所(JPL)は、Microsoftの「Azure Quantum」を利用し、通信網「ディープスペースネットワーク」(DSN)に関するスケジュール作成の迅速化に取り組んだ。どのような効果が得られたのか。
NASA(米航空宇宙局)のジェット推進研究所(JPL)とMicrosoftが量子コンピューティングで実現しようとしているのは、宇宙探査機の通信網である「ディープスペースネットワーク」(DSN)の利用スケジュール作成の迅速化だ。DSNは地球上に約120度間隔の等距離で設置された、3つの施設を拠点とする大型アンテナから成る。
DSNのアンテナを利用する際のスケジューリングには、さまざまな制約があり、コンピューティングリソースが集中的に必要になる――。Microsoftは、DSN Command Systemのプロジェクトに関する公式ブログのエントリ(投稿)でこう述べる。
エントリを執筆したのは、Microsoftで量子コンピューティングのクラウドサービス「Azure Quantum」を担当するソフトウェアエンジニア、アニータ・ラマナン氏だ。ラマナン氏によると、NASAのさまざまなミッションでは、重要な用途でDSNによる通信が必要になる。「毎週、各宇宙探査機の姿がアンテナから見えるときに数百件の要求が生じる」と、同氏はエントリで説明する。
Azure Quantumチームは研究によって、従来型コンピュータで実行できる「量子インスパイアード最適化アルゴリズム」を開発した。量子インスパイアード最適化アルゴリズムは、量子物理学を模倣して「最適化問題」(目的の値を最大化または最小化する条件を求める問題)を解くアルゴリズムだ。
JPLとの共同プロジェクトの開始当初、Azure QuantumチームはDSNのスケジュールを作成するのに2時間以上の計算を要した。Azure Quantumによる量子インスパイアード最適化アルゴリズムを利用した結果、計算にかかる時間を16分にまで短縮し、さらに開発を進めることで約2分に減らすことができた。
NASAは複雑な宇宙ミッションを複数抱えており、取り扱う宇宙探査機は増え続けている。DSNのスケジュール作成が数分で終わるようになったため、JPLは宇宙ミッションが増加しても、多数の候補スケジュールを作成して適切なスケジューリングを実施できるようになったという。
米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
契約業務の効率化やコストの削減といった効果が期待できることから、多くの企業で「電子署名」の導入が進んでいる。一方で、訴訟問題へと発展した際に証拠として使えるのかといった疑問を抱き、導入を踏みとどまるケースもあるようだ。
半導体ベンダーBroadcomは仮想化ベンダーVMwareを買収してから、VMware製品の永久ライセンスを廃止した。その永久ライセンスを継続する非公認の方法とは。
システム基盤をオンプレミスで運用するか、データセンターやクラウドで運用するかは、業種によって大きく異なる。調査結果を基に、活用の実態を探るとともに、最適なクラウドサービスを考察する。
SaaSサービスが普及する一方、製品の多様化に伴い、さまざまな課題が発生している。特にベンダー側では、「商談につながるリードを獲得できない」という悩みを抱える企業が多いようだ。調査結果を基に、その実態と解決策を探る。
生成AIの活用が広がり、LLMやマルチモーダルAIの開発が進む中で、高性能なGPUの確保に問題を抱えている企業は少なくない。GPUのスペック不足を解消するためには、どうすればよいのか。有力な選択肢を紹介する。
いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。
「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。
「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。
「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。