「5G」はネットワークインフラのエネルギー消費を抑制できる可能性を持つ一方で、データ通信を増大させる要因にもなり得る。そうした中で「無駄なデータ通信を抑制すべきだ」という見方がある。
英国のサセックス大学(University of Sussex)は、「5G」(第5世代移動通信システム)と環境問題に関する研究論文「Renewable and sustainable energy reviews」(再生可能で持続可能なエネルギーの調査)を発表した。前編「『スマホ寿命を意図的に短くする』あの悪習を、5Gベンダーはやめるべし」はこの論文を基に、5Gベンダーに課すべき課題を紹介した。
5Gベンダーの取り組みで、ネットワークインフラの運用効率は向上する可能性がある。ただし際限なくデータ通信をするユーザーの行動が、別の問題として浮上する。
「データ通信量無制限」のプランを契約し、仮想現実(VR)やオンラインゲームなどを利用する5Gユーザーが増えることで、トラフィック(ネットワークを流れるデータ)が増大し、それがエネルギー消費を助長する。そのエネルギー消費は、ネットワーク事業者が5Gの運用を効率化することで得られたエネルギー消費の削減量を相殺してしまう可能性がある。サセックス大学の研究は、この「リバウンド効果」について警告している。
5Gのエネルギー消費を抑制するために、サセックス大学は5Gのトラフィックを削減する下記のような行動を推奨する。
5Gがエネルギー消費に与える影響を考える場合、ネットワークインフラへの電力供給に重点を置きがちだ。サセックス大学は、ネットワーク機器の製造や設置、スマートフォンなどの端末の製造に必要な電力についても見落としてはいけないと指摘する。
サセックス大学ビジネススクール(University of Sussex Business School)でエネルギー政策を担当するベンジャミン・ソヴァコール教授は、次のように述べる。「5Gのエネルギー消費とユーザー行動に関する研究は不十分であり、5Gがどのようにエネルギーを消費するのかという問題は不明瞭なままだ」
ベンジャミン氏はアプリケーション開発者、5Gベンダーなどの事業者、政府に対して、どのような戦略を重視すべきかについても提言する。「定額制サービスや、データ通信料金の引き下げ、データ無制限プランはユーザーの無駄な行動を助長するので、何らかの対策をすべきだ」(同氏)
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