英国王立動物虐待防止協会(RSPCA)は2011年頃からクラウドファーストの方針を取り入れ、Googleのクラウドサービスを導入した。当時としては“果敢な決断”だった。どのような背景があったのか。
英国王立動物虐待防止協会(RSPCA)は2011年頃から、クラウドサービスを優先して使う「クラウドファースト」の方針を取り入れている。2020年代に比べて選択できるクラウドサービスが豊富ではなかった2011年当時、同協会のこの取り組みは先進的なものだった。
RSPCAは1824年にロンドンで設立された非営利組織だ。活動の目的は、ペットから野生動物まで全ての動物が適切な配慮と注意を払って扱われ、幸せで健康的な生活を送れるようにすることであり、この目的は設立以来、変わっていない。
新しい技術が登場したり働き方が変わったりするのに伴い、RSPCAは業務に利用するツールを変更してきた。2011年頃まで、同協会は職員のメールシステムに旧Novell(2014年にMicro Focus Internationalが買収)が提供していたグループウェア「Novell GroupWise」を利用していた。システムを稼働させるためのサーバは、複数の動物保護センターに設置していた。
Novell GroupWiseには以下のような課題があったと、RSPCAでITリソース部門のアシスタントディレクターを務めるニック・ジョージ氏は振り返る。
RSPCAが新しく約1500人の職員を雇用し、Novell GroupWiseのライセンスを付与した際は、かなりのコストが発生した。Novell GroupWiseと連携可能なモバイルデバイスはBlackBerryの製品に限定されていたため、職員全員がモバイルデバイスでメールシステムを利用することが難しい問題もあった。誰がメールシステムにアクセスできるのかを議論しなければならず、ジョージ氏は「民主的ではなかった」と表現する。全ての従業員が基本的なメールシステムを利用できるようにすることが、同協会の願いだった。
新しいメールシステムの導入を検討した際、RSPCAはMicrosoftの製品を候補から外した。ジョージ氏によると、RSPCAはそれまでMicrosoftの製品をあまり使用したことがなかった。そのためMicrosoftのオンプレミス版メールサーバ「Exchange Server」やオフィススイート「Microsoft 365」(Office 365)へ一気に移行を進めることは、協会にとってハードルが高かった。他にも協会は以下の点を考慮した。
上記の点を踏まえ、RSPCAはMicrosoft 365ではなく、Googleのクラウド型オフィススイート「Google Workspace」(旧G Suite)を導入することにした。2011年当時、Googleが法人市場に参入して間もない時期だったことは注目に値する。Googleのクラウド型オフィススイートの導入は、同協会にとって果敢な決断だった。ジョージ氏はこの決断に当たって、関係者を説得する必要があったと語る。
RSPCAはメールシステムのクラウドサービス移行を敢行し、270人のインスペクター(動物査察官)と100人の動物救助隊員を含めた職員全員がGoogle Workspaceを利用できるようにした。Google Workspaceのコラボレーション機能を活用することで、英国の各地で働く職員が、遠隔地のチームやインスペクターと連携することが可能になった。
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