コーディングにはまった女性プログラマーが語る“男社会”IT業界の真実プログラマーになった建築家志望者【後編】

あるきっかけでプログラマーになったヤン・リュー氏は、プログラミングに自分の適性と楽しさを見いだした。リュー氏は業務を通じて何を学んだのか。IT業界に所属する女性の少なさに対する同氏の見解とは。

2022年10月26日 05時00分 公開
[Aaron TanTechTarget]

 大学で建築学を学び、卒業後は建築家になりたいと考えていたヤン・リュー氏。プログラマーとして働くことになった後は、意欲的にプログラミングのスキルを磨き続けた。リュー氏は2022年9月現在、オーストラリアのITサービス企業Kablamoでバックエンドエンジニアとして働き、金融サービスアプリケーション開発などのプロジェクトを手掛けている。

 Kablamoで働き始めた際は、社内のメンターが実務を通じてリュー氏を仕事に慣れさせた。それが現在の仕事への自信を深めるのに役に立ったとリュー氏は振り返る。

女性プログラマーが見た“男社会”「IT業界」の真実

 リュー氏は最近、外部のAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)を活用するプロジェクトに関わるようになった。このAPIには不具合があり、それが同氏の成長につながった。「課題がたくさんあった中で、本当に助かったのは、会社が私に批判的な目を向けるのではなく、過ちから学ぶ手助けをしてくれたことだった」(同氏)

 時として急速な技術の進展に圧倒されることはあっても、リュー氏がプログラマーを続けることができたのは好奇心のおかげだ。「1日をだらだら過ごすことは決してない。新しい働き方を模索するのは楽しい。遊び心と好奇心は必ず助けになる」と同氏は語る。

 チームの中で数少ない女性の一人になったことはあった。それでも「キャリアを通じて性差による差別を経験したことはない」とリュー氏は話す。

 銀行で初めてインターンをした際、リュー氏は手本となる女性を探した。「服装や話し方、振る舞いの特徴は何か。特定のやり方をする必要はあるのか。私は自分が見習うことのできるお手本がいないかと、周りを見回した」と振り返る。

 リュー氏はIT業界に対して、男性が優遇されるのではないかという疑念を抱いていた。だがこうした固定観念のほとんどは「真実ではなかった」と同氏は気付いたという。「IT業界は本当に性別の多様性を歓迎していた」(同氏)

 依然として、企業のIT部門は男性が多数を占めていることが珍しくない。これに対してリュー氏は「以前の通信業界の業務に比べると、プログラミングの方がはるかにエキサイティングだ。それなのに女性が少ないのは意外に思う」と言う。

 問題の一因は、男子と女子が性別による役割分担の中で育ち、性別による固定観念を覆す手本がいないことだとリュー氏は考える。「ITの道に進むのがそれほど難しくないことを示してくれる手本がもっと多ければ、IT関連職に就く女性は増える」と同氏は提言する。

 今後はシステムの安全性を高める運用方法「サイト信頼性エンジニアリング」(SRE:Site Reliability Engineering)の分野に踏み込んだり、リーダーシップのスキルを磨いたりすることにリュー氏は意欲を示す。「管理職にならなくても他人に影響を与えられるようになりたい」というのが同氏の目標だ。「コーディングは続けたい。影響力を強めながら、達成感を与えてくれるからだ」と同氏は言い添える。

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