世界各国で注目を集めた英女王葬儀の生中継を実現したのは、「5G」を使ったプライベートネットワークだ。その仕組みを誰が、どのように構築したのか。
英国が2022年9月19日(英国時間)に執行したエリザベス2世の葬儀。その様子を世界の人々が生中継で見ることができたのは、「5G」(第5世代移動通信システム)をはじめとした通信技術の活用のおかげだ。葬儀の生中継を可能にした産学連携とは。
スコットランドの歩兵連隊であるロイヤルスコットランド連隊の軍楽隊が演奏する中、エリザベス2世のひつぎを乗せた英国空軍輸送機が離陸する映像を、世界中の人々は息をのんでリアルタイムで見ていた。「スコットランドを最後に旅立つ」様子の生中継を可能にしたのは、5Gのプライベートネットワークだ。
この5Gプライベートネットワークの設計に携わったのは、スコットランドのストラスクライド大学(University of Strathclyde)発の新興企業、Neutral Wireless。同社は英国情報通信庁(Ofcom:Office of Communications)から無線周波数帯「n77」(3.8〜4.2GHz)の免許を受け、24時間以内にスコットランドのブロードキャスト専門会社Quipu TV(QTV)に提供した。
Ofcomの免許で運用する5Gプライベートネットワークをテレビニュースの生中継に使用したのは「今回が初めてだと考えられる」と、ストラスクライド大学でソフトウェア定義無線チームの責任者を務めるボブ・スチュワート氏は語る。エディンバラ空港では滑走路のそばの駐機場でネットワークを構築し、無線通信によってカメラを接続した。「ネットワークは約9時間稼働し、技術的な問題は発生しなかった」とスチュワート氏は述べる。
他にも、映像伝送システムを提供したOpen Broadcast Systemsをはじめ、複数の企業が協力して生中継が可能になったという。
後編は、フランスの公共放送機関France Televisionsの取り組みを追う。
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