SAP ECCのサポート終了が迫る中、その次世代版「S/4HANA」移行を検討する企業は、幾つかの問題に頭を抱えている。その解決策とは。
SAPは、同社のERP(統合業務)システム「SAP ERP Central Component」(以下、ECC)の保守サポートを2027年に終了する計画を発表している。これに伴い、ユーザー企業はECCの次世代版「SAP S/4HANA」(以下、S/4HANA)への移行を検討している。
英国とアイルランドにおけるSAPユーザー企業団体UKISUG(UK and Ireland SAP User Group)は、同地域のユーザー企業114社に対して2022年に年次調査を実施。その結果を英国バーミンガムで開催されたカンファレンス「UKISUG Connect 2022」で公表した。
年次調査では、「S/4HANAを利用している、もしくは利用を計画している」と回答した企業は89%に上り、2021年の74%から増加した。移行の理由として最も多く挙げられたのは「2027年にECC 6.0の保守サポートが終了するため」で、全体の70%を占めた。これは、「新機能を利用したいため」(49%)や、「大規模なデジタルトランスフォーメーション(DX)の一環として」(47%)といった前向きな理由を上回った。
「ビジネスプロセスを簡素化するためや、ビジネスの生産性を向上するためといった前向きな理由は、ほとんど上位に位置しない」。UKISUGの会長を務めるポール・クーパー氏は、ユーザー企業がS/4HANAへの移行を決定した要因についてそう話す。
年次調査では、S/4HANAへの移行をまだ完了していない企業のうち、92%の企業が「スキル不足」によって移行が遅れることを憂慮している状況が明らかになった。この数値は、2021年度調査の71%から増加した。他には、「既存のカスタマイズが移行の障壁になっている」と回答した企業が72%だった。
およそ4分の1の回答企業が既にS/4HANAを使用しており、そのうち32%がSAPのパートナー企業が導入過程で提供したトレーニングについて「悪い」または「非常に悪い」と評価した。回答企業全体のうち、36%が「SAPはS/4HANAの管理に役立つ十分な技術やトレーニングを顧客に提供していない」と回答した。
ほとんどのユーザー企業は、S/4HANAへの移行そのものではなく、移行を実施するタイミングについて悩んでいる。「S/4HANAへの移行に必要なスキルの不足について懸念が強まり、プロジェクトの速度や質が低下するリスクがある。スキル不足という問題を解消するための取り組みが必要だ」とクーパー氏は警告する。
後編は、企業のS/4HANA移行を支援するSAPのサービス「Rise with SAP」について紹介する。
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