従業員約1万人の削減に踏み切るMicrosoft。他のIT大手の間でも、人員削減が相次いでいる。批判覚悟で、IT大手が積極的な削減に踏み切るのはなぜなのか。IT業界が置かれた状況と併せて解説する。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)は、IT業界にとって景気好調の材料となった。Microsoftも例外ではなく、この恩恵にあずかっていた。だが世界経済は徐々に冷え込みつつあり、IT支出とPCの販売台数は減少傾向にある。こうした状況下で同社は、他のIT企業と足並みをそろえて人員削減に踏み切った。
2023年1月、Microsoftは全世界の従業員の5%弱に当たる約1万人の削減を発表した。同社の最高経営責任者(CEO)サティア・ナデラ氏は、公式ブログのエントリ(投稿)で、人員削減に関して「世界中の企業が景気低迷を懸念している」とつづっている。「世界では既に不況に見舞われている国や地域が幾つかある。これから同様の状況に陥る恐れがある世界中の企業にも警戒感が広がっている」(ナデラ氏)
「パンデミックのさなかには、顧客のIT支出が急増した」とナデラ氏は語る。企業はテレワークを積極的に導入し、一般消費者はEコマースを日常的に利用するようになった。その結果、企業におけるデジタルツールや技術職の需要が高まった。こうした中、Microsoftは従業員数を急速に増やしてきた。
パンデミックが収束するにつれて、企業はIT支出を最適化し、なるべく少ない労力で多くの成果を挙げることに目を向けている。Salesforce、Amazon.com、Meta Platformsといった大手IT企業は、パンデミックの時期に実施した過剰雇用に対処するために、大幅な人員削減に踏み切った。今回のMicrosoftの人員削減は、この動きに追随するものだ。これらのIT企業は「『今後25〜50年の間に経済が上向くことは期待できない』と予想して、批判覚悟で大規模な人員削減に踏み切っている」とアナリストは指摘する。
コンサルティング企業J.Gold Associatesでプリンシパルアナリストを務めるジャック・ゴールド氏は、「大手企業は手遅れになる前に、人員を整理しようと考えている」と話す。ただしゴールド氏は、今回の人員削減が2023年以降におけるMicrosoftの経営戦略に大きな影響を及ぼすことはないと考えている。
第2回は、Microsoftの人員削減に理解を示すアナリストの見解を紹介する。
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