MicrosoftはDPU開発会社Fungibleを傘下に収めた。クラウド業界ではDPUを巡って競争が激化している。Microsoftがこの買収に込めた狙いとは。
MicrosoftはDPU(Data Processing Unit:データ処理装置)開発の新興企業Fungibleを買収したと、2023年1月9日(米国時間)に発表した。この買収を巡っては、意表を突かれた業界関係者もいた。しかしクラウドサービスに注力するMicrosoftの戦略から考えれば「それほど驚くべきものではない」とアナリストはみる。
DPUはプログラムで制御できるプロセッサだ。例えば通信のタスクをCPU(中央処理装置)から切り離し、CPUをそれ以外のタスクに使用してシステムのパフォーマンス向上を図ることが可能になる。調査会社Evaluator Groupのシニアストラテジスト兼アナリストのランディ・カーンズ氏は、「DPUを活用することでハードウェアの性能を引き出しやすくなり、ハードウェアの費用対効果が高まる」と述べる。
Fungibleはここ数年、DPUベンダーとして知名度を高めてきた。同社製DPUは、ユーザー企業がシステムを拡大する際、ストレージ構成を変更しやすいように設計されている。
MicrosoftのFungible買収の背景には、クラウド業界での競争激化がある。Amazon Web Services(AWS)は、パフォーマンス向上のための専用ハードウェアとソフトウェア群「AWS Nitro System」を同社のクラウドサービスに採用している。AWS Nitro Systemには、DPUと同類の機能を備えた装置「Nitro Card」が含まれる。AWSは2022年11月〜12月に米ラスベガスで開催したイベント「AWS re:Invent 2022」で、AWS Nitro Systemの最新版「AWS Nitro v5」を発表し、この技術に投資し続けていることをアピールした。
米TechTargetの調査部門ESG(Enterprise Strategy Group)のプラクティスディレクターであるスコット・シンクレア氏は、「MicrosoftはFungible買収によってAWSと同じ戦略を取る」と読み取る。Microsoftは今後、Fungibleの技術を生かし、クラウドサービス群「Microsoft Azure」に独自のDPUを搭載してデータ処理速度の高速化を図る可能性があるとシンクレア氏はみる。
後編は、Fungibleがどのような会社なのかを紹介する。
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