AWSに追随? 「DPU」を欲しがるMicrosoftの思惑Fungible買収でMicrosoftが狙うのは【前編】

MicrosoftはDPU開発会社Fungibleを傘下に収めた。クラウド業界ではDPUを巡って競争が激化している。Microsoftがこの買収に込めた狙いとは。

2023年03月14日 05時00分 公開
[Adam ArmstrongTechTarget]

 MicrosoftはDPU(Data Processing Unit:データ処理装置)開発の新興企業Fungibleを買収したと、2023年1月9日(米国時間)に発表した。この買収を巡っては、意表を突かれた業界関係者もいた。しかしクラウドサービスに注力するMicrosoftの戦略から考えれば「それほど驚くべきものではない」とアナリストはみる。

そもそもDPUとは Microsoftはなぜ欲しがっているのか

 DPUはプログラムで制御できるプロセッサだ。例えば通信のタスクをCPU(中央処理装置)から切り離し、CPUをそれ以外のタスクに使用してシステムのパフォーマンス向上を図ることが可能になる。調査会社Evaluator Groupのシニアストラテジスト兼アナリストのランディ・カーンズ氏は、「DPUを活用することでハードウェアの性能を引き出しやすくなり、ハードウェアの費用対効果が高まる」と述べる。

 Fungibleはここ数年、DPUベンダーとして知名度を高めてきた。同社製DPUは、ユーザー企業がシステムを拡大する際、ストレージ構成を変更しやすいように設計されている。

 MicrosoftのFungible買収の背景には、クラウド業界での競争激化がある。Amazon Web Services(AWS)は、パフォーマンス向上のための専用ハードウェアとソフトウェア群「AWS Nitro System」を同社のクラウドサービスに採用している。AWS Nitro Systemには、DPUと同類の機能を備えた装置「Nitro Card」が含まれる。AWSは2022年11月〜12月に米ラスベガスで開催したイベント「AWS re:Invent 2022」で、AWS Nitro Systemの最新版「AWS Nitro v5」を発表し、この技術に投資し続けていることをアピールした。

 米TechTargetの調査部門ESG(Enterprise Strategy Group)のプラクティスディレクターであるスコット・シンクレア氏は、「MicrosoftはFungible買収によってAWSと同じ戦略を取る」と読み取る。Microsoftは今後、Fungibleの技術を生かし、クラウドサービス群「Microsoft Azure」に独自のDPUを搭載してデータ処理速度の高速化を図る可能性があるとシンクレア氏はみる。


 後編は、Fungibleがどのような会社なのかを紹介する。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

ITmedia マーケティング新着記事

news032.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年1月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news087.jpg

Netflix、さらなる成長戦略は「アドテク自社開発」 広告主のメリットは?
Netflixは2024年第4四半期に1890万人の加入者を増加させ、広告収入を前年同期比で倍増さ...

news007.jpg

「THE MODEL」から脱却 それでも売上高5期連続120%以上を維持する私たちがやっていること
マーケティング・セールスの生産性向上を図るため「THE MODEL」を取り入れたいと考える企...