IT分野の従業員にとって「テレワークができるか否か」という点は、転職の動機にどの程度の影響があるのか。2023年に米TechTargetと英Computer Weeklyが実施した年次調査を基に考察する。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)によって労働者がテレワークを余儀なくされたとき、オフィスでなくても生産性は維持でき、しかもワークライフバランスを改善できるということに誰もが気付き始めた。その結果、ワークライフバランスの重要度がますます高まっている。
米TechTargetと英Computer Weeklyは、英国のIT労働者(全ての役職、階級を含む)を対象に、IT業界の給与に関する年次調査を実施している。その結果を基に、IT分野の従業員が転職を決意する要因のうち「テレワークを選べるか否か」がどの程度の重要度を持っているのかを考察する。
2022年の年次調査では、回答者の約40%は働く場所や時間を自由に選べる体制になっており、35%は「2023年もその労働環境は変わらない」と答えていた。
回答者の約半数は「労働環境の重要性は2022年よりも高まっている」と考えている。労働環境が2022年以降に変化した労働者もいる。回答者の28%は週に数日テレワークをしており、14%はフルタイムでテレワークをしている。
特に人気があるのは「週に2日出勤し、3日はテレワークする働き方」(39%)だ。次いで「週に4日テレワークする働き方」(37%)も人気がある。フルタイムでのテレワークを好む回答者は3%だった。
従業員にその会社で働き続けたいと思ってもらうには「従業員自身が働き方を自由に選べるかどうか」が大きな役割を果たす可能性がある。COVID-19のパンデミックによって、出勤しなくても生産性は維持できることに誰もが気付いたことがその要因だ。
実際のところ、2023年の年次調査によれば、回答者の45%弱は現在の企業にとどまる意向である一方で、転職に前向きな回答者は37%、別の企業への転職を積極的に進めている回答者は15%に上る。
ITサービス管理ツールベンダーのServiceNowでEMEA(欧州、中東、アフリカ)地域担当のシニア人事ディレクターを務めるケイティ・ホワイトハウス氏によると、良質な従業員エクスペリエンス(業務における従業員の体験や経験)を生み出す上で、給与は重要な要素になる。同社は独自調査によってこの結論に至ったという。
従業員が転職を決意する要因には、生活費に対する危機感や、高いインフレがある、とホワイトハウス氏は考察する。「経済状況を考えれば、給与を理由に従業員が転職を考えても不思議ではない」と同氏は強調し、こう続ける。「だからこそ、これらの経済的要因は雇用主にとっても無視できない分野だ。この点を考慮に入れ、テレワーク制度を取り入れて従業員が働きやすい仕組みを構築できれば、出張や育児にまつわるコストが抑えられ、従業員の経済的不安の一部を緩和できる可能性がある」
第3回は、スキルアップとリスキリングのための施策が、従業員の離職抑制につながる理由について考察する。
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