企業はもう「BYOD」(私物端末の業務利用)を禁止できない?避けては通れない「BYOD」【中編】

「BYOD」(私物端末の業務利用)は、BYODを認めていない企業を含めて、あらゆる企業にとって無視できない存在になりつつある。その理由と、企業が取るべき対策を解説する。

2023年11月13日 05時00分 公開
[John PowersTechTarget]

 PCやスマートフォンといった業務端末の調達や管理のコスト削減、利便性の向上といったメリットを見込んで、企業が「BYOD」(私物端末の業務利用)の方針を取り入れる動きが広がってきた。その一方でBYODに関心を示さなかった企業は少なくないが、今後はあらゆる企業にとってBYODが無視できない存在になる可能性がある。その理由を2つの視点で考える。

企業はもう「BYOD」を禁止にできない?

1.「非公認のBYOD」がもたらすリスク

 企業がBYODを認めていなくても、私用端末を業務で使用する従業員は存在する。端末を業務用と私用で分けて管理する手間がなくなる他、業務で緊急事態が発生した際の連絡手段として使用できるなど、BYODにはメリットがあるからだ。

 BYODがもたらすリスクについても考慮する必要がある。BYODの端末から社内のシステムやデータにアクセスする場合、端末が盗難に遭った際の情報漏えいリスクは強まる。端末のアフターサービスを手掛けるAsurionによると、2022年には約410万台のスマートフォンが盗難や紛失の事態に陥っている。攻撃者が端末のデータにアクセスできるようになると、アカウントのパスワードを変更したり、非公開の通信を閲覧したり、さらには権限を不正に昇格したりでき、大惨事を招きかねない。企業がBYODを認めていない場合、対策は個人に委ねられることになるため、リスクの低減は簡単ではない。

 こうした懸念を踏まえると、ほとんどの従業員は企業が定めるBYODポリシーに従いたいと考える。だが企業におけるBYODポリシーの策定は進んでいるとは言い難い。米国の調査会社Clutchが2018年に公開したブログエントリ(ブログの投稿)によると、「BYODが規制の対象となっている」と回答した従業員は全体の半数に満たない40%だった。

 私用端末で業務データを取り扱う際の安全なポリシーを企業が策定すれば、従業員は安心してBYODを実践できるようになる他、セキュリティリスクの軽減につながる。

2.二酸化炭素(CO2)排出量の削減効果

 端末の購入数を減らしたり、端末のライフサイクルを長くしたりする取り組みは、サステナビリティ(持続可能性)に良い影響をもたらす。組織はBYODを採用することで、二酸化炭素(CO2)排出量の削減を実現できる。

 当然ながら、BYODを採用しても端末の充電に必要な電力や、ネットワーク利用によるCO2排出は避けられない。一方で、2022年にメディア企業Forbesが発表した記事によると、スマートフォンのライフサイクル全体におけるCO2排出量の95%は初期段階に発生し、その大部分は端末の製造と出荷の際に発生している。

 私用端末を既に持っている従業員にさらに端末を支給することは、CO2排出量を大幅に増加させる要因になる。CO2排出量の削減または抑制を模索している企業にとって、BYODの導入は選択肢の一つになる。

TechTarget発 世界のインサイト&ベストプラクティス

米国TechTargetの豊富な記事の中から、さまざまな業種や職種に関する動向やビジネスノウハウなどを厳選してお届けします。

ITmedia マーケティング新着記事

news060.jpg

Z世代が考える「日本が最も力を入れて取り組むべき課題」1位は「ジェンダー平等」――SHIBUYA109 lab.調査
SDGsで挙げられている17の目標のうち、Z世代が考える「日本が最も力を入れて取り組むべき...

news061.png

高齢男性はレジ待ちが苦手、女性は待たないためにアプリを活用――アイリッジ調査
実店舗を持つ企業が「アプリでどのようなユーザー体験を提供すべきか」を考えるヒントが...

news193.jpg

IASがブランドセーフティーの計測を拡張 誤報に関するレポートを追加
IASは、ブランドセーフティーと適合性の計測ソリューションを拡張し、誤報とともに広告が...