大量生産が実現するまでには至っていないが、「CXL」を採用したメモリモジュールが登場している。「PCIe 5.0」やCXLといったストレージやメモリ分野の新技術は市場に浸透するのか。
2023年8月開催のイベント「Flash Memory Summit」では、さまざまなベンダーがストレージおよびメモリの新技術を採用した製品を発表した。本稿はその中から、相互接続プロトコル「Compute Express Link」(CXL)に関する製品を取り上げる。
CXLを採用したメモリモジュール(CXLメモリモジュール)は注目分野の一つだ。CXLメモリモジュールの外見はSSDに似ている。ただし中身は、SSDが一般的に搭載している「NAND型フラッシュメモリ」ではない。
Micron TechnologyはFlash Memory Summitで、128GBと256GBのメモリ拡張モジュール(コンピュータのメモリを追加、拡張する装置)「CZ120」を公表した(写真)。CZ120はインメモリデータベース、AI(人工知能)モデルの学習や推論など、一度に大量のデータを扱うシステムに適している。MicronはCZ120を「同じ容量のDRAM(Dynamic Random Access Memory)よりも費用対効果が高くなるように設計した」と説明するが、現状は概して割高だ。
メモリ仮想化ベンダーMemVerge、AI技術に関するコンピューティングシステムを手掛けるXConn Technologies、ハードウェアベンダーSuper Micro Computerなどが、CXLメモリモジュールの応用に乗り出している。ただしベンダーがCXLメモリモジュールを広く採用するには障壁が残っている。
コンサルティング会社Coughlin Associatesのトーマス・コフリン氏は、「ユーザー企業とベンダーの両方がCXLメモリモジュールへの関心を高めつつある」と述べる。一方でコフリン氏は、「CXLメモリモジュールの大量生産は2024年までは見込めない」との見方も示す。
汎用(はんよう)インタフェース規格「PCI express 5.0」(PCIe 5.0)とCXLは、2019年に公開された規格だ。2023年の今、これらの規格を採用したサーバCPUやサーバは幾つか登場している。
調査会社The Futurum Groupのシニアアナリストであるデーブ・ラッフォ氏は、「これらの新規格を急いで採用する必要はない」と考える。「サーバは新しい『iPhone』とは違い、発売日に人々が待ち行列を作るわけではない」とラッフォ氏が指摘する。
「新しいサーバの購入は、ビジネスのニーズに合わせて予算を計画する必要がある」ともラッフォ氏は言う。近年の半導体不足の影響で、サーバ製品は入荷待ちの状態が続いている場合があるため、新規購入の緊急性は高くはない。
データストレージベンダー45Drivesの共同設立者でプレジデントのダグ・ミルバーン氏は次のように述べる。「過度に未来志向な新技術を採用した製品はプロジェクトと見なされる可能性がある。ユーザー企業はプロジェクトではなくストレージを求めている」
一方でミルバーン氏は、「一度新技術を業界が広く受け入れたのであれば、その技術は主流になる」とも語る。これについてコフリン氏も、「現在は主要なストレージおよびサーバベンダーがCXLを採用しているが、主流というわけではない」と指摘する。「CXLを採用したシステムは2024年までには稼働し始める見込みだ。遅かれ早かれ、確実に普及する」とコフリン氏はみる。
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