社内のスキルギャップを埋めるために、企業は従業員の成長を促すスキルアップ施策を構築し、成功まで導く必要がある。従業員が心から求めている研修を用意するために必要な手順とは。
テレワークの浸透や、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(感染症の世界的な流行)に伴う従業員の辞職・転職によって、従業員の働き方や必要なスキルは変化している。社内のスキルギャップ(仕事に必要なスキルと、従業員が持つスキルの差)を解消するには、企業が従業員のスキルアップを推進することが欠かせない。
スキルアップ施策を成功に導くには、具体的な目的が必要だ。効果的な施策を構築するには、以下の6つのステップを踏む必要がある。
従業員のスキルアップ施策を構築する際の1つ目のステップは、主要な利害関係者と協議し、スキルアップ施策の目的、目標、範囲を定義することだ。人事サービスMcLean & Companyの人事リサーチ&アドバイザリー部門でプリンシパルディレクターを務めるジャネット・クラリー氏は、企業の状況を理解し、「現在必要なスキル」と「将来必要になるスキル」をリストアップすることを推奨する。
スキルアップ施策のテストグループを組織して社内のスキルをリストアップした後は何をすべきか。クラリー氏と、メディア企業O'Reilly Mediaでチーフピープルオフィサーを務めるジャンヌ・コルディスコ氏が推奨するのは、必要なスキルの定義だ。これには少人数のサンプルグループから意見を集める「フォーカスグループ調査」や、インタビュー、スキル分類などの手法を駆使するとよい。その結果を受けてスキルギャップを分析し、習得が必要なスキルに優先順位を付ける。「現在の従業員のスキルをマッピングし、スキルギャップを特定することで、スキルアップやリスキリング(従業員に新たなスキルを身に着けてもらうこと)で重点を置くべきポイントを明確にできる」とクラリー氏は話す。
従業員エンゲージメント(組織との信頼関係)の支援ソフトウェアベンダーAchievers Solutionsでチーフピープル&カルチャーオフィサーを務めるハンナ・ヤードレー氏によれば、企業は従業員から「スキルアップ施策で何を学びたいのか」「何を必要としているのか」を聴取する必要がある。従業員が学びたいと感じるテーマのトレーニングを提供できれば、従業員は学習後の変化をうれしく思うはずだ。「従業員の興味を引くトレーニングを提供すれば、業務にあまり関係がない、コンプライアンスに従ったトレーニングよりも、スキルは長く定着する傾向がある」とヤードレー氏は指摘する。
技術的なスキルは、従業員が現在就いている役職においてのみ有用な可能性がある。一方で非定型スキルである「ソフトスキル」(共感力や謙虚さ、マインドフルネスなど)は、「さまざまな役職に生かすことができ、長く使える」とヤードレー氏は語る。同氏は「ソフトスキルがあれば、従業員は人としても、プロフェッショナルとしても成長しやすい」という見解を示す。従業員が適切なソフトスキルを身に付けていれば、職業や職場が変わっても、キャリアアップの過程でソフトスキルを生かすことができるためだ。
コルディスコ氏によれば、スキルギャップを特定し、チームや個人向けにトレーニングをカスタマイズする上で、マネジャーは重要な役割を担う。スキルアップ施策は概して、全ての従業員に同じトレーニングを提供するわけではない。そのため、各スキルアップ施策の対象者向けにトレーニングをカスタマイズする際には、マネジャーの関与が必要だ。
「マネジャーは、従業員のモチベーションを把握する上で、最も適した立場にいる」とコルディスコ氏は述べる。企業が従業員のスキルアップに対して積極的に投資していることを示せれば、マネジャーは部下からより多くの忠誠心を得ることにつながる。
次回は、5つ目および6つ目のステップと、従業員教育の今後の見通しを紹介する。
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