コラボレーションツールを業務に生かし切る条件【後編】
3つのスタイルから考える、コラボレーションツール成功の“虎の巻”
業務におけるコミュニケーションは、やりとりをする相手の数も内容の深刻度もさまざまだ。多様なコミュニケーションにコラボレーションツールをどう生かせばよいのかを、3つの視点から検討する。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)をきっかけに、オフィス勤務とテレワークを組み合わせた働き方である「ハイブリッドワーク」が広がった。さまざまな場所で働く従業員同士の業務やコミュニケーションを支援する目的で企業が導入したのが、クラウドサービス形式のユニファイドコミュニケーション(UC)システムUCaaS(Unified Communications as a Service)といったコラボレーションツールだ。さまざまなベンダーがさまざまな機能を搭載したコラボレーションツールを提供している一方、その機能を業務の生産性の向上に生かし切れていないと感じる従業員の声もある。
職場にはさまざまな年齢層の従業員がおり、コミュニケーションのスタイルも個人に依存する。コラボレーションツールは業務やコミュニケーションにどう貢献するのか。要件に応じたコミュニケーション手段を選択する上で確認すべき3つの条件を解説する。
条件1.1対1でのコミュニケーションか、グループ内でのコミュニケーションか
併せて読みたいお薦め記事
連載:コラボレーションツールを業務に生かし切る条件
コラボレーションツール「Zoom」の新たな展開
業務においては、複数人数で作業を実施する場合や、デスクワークをしながら同僚と1対1でコミュニケーションを取るといった場合がある。デスクワークでは、コラボレーションツールが業務の生産性を向上させる余地はあまりない。短い連絡ならメールかチャットでメッセージを送信し、込み入った連絡を取る場合には電話をかけるといったように、個人の業務の処理方法や、頻繁に利用するコミュニケーションツールが決まっている場合があるからだ。それらのコミュニケーションツールではなく、わざわざビデオ通話を使用することのメリットはほとんどないと考えることができる。
一方で、メンバーが1カ所に集合していない中で共同作業をする場合にはコラボレーションツールのビデオ通話が威力を発揮する。ハイブリッドワークが広がり、離れた場所にいる従業員が組織の一体感を実感できるようにする目的で、ビデオ通話の利用は拡大しつつある。臨場感や没入感を得られるのがビデオ通話の強みだが、認知疲労(認知機能の低下)の蓄積が課題であり、電話やメールよりも労力が必要なことに注意が必要だ。
どの共同作業でコラボレーションツールを使うのかも重要なポイントだ。ビデオ通話は、プロジェクトのキックオフや最終結果の検討など、参加者同士の連携が重要な場合に使うとよい。それ以外の場合には、グループチャットで事足りる可能性がある。
条件2.コミュニケーションはフォーマルかインフォーマルか
インターネットの普及を通じて、コミュニケーションを取る対象や手段は増大した。その結果、コミュニケーションを取ること自体は容易になったものの、フォーマルなコミュニケーションとは何かを学ぶ機会は努めて機会を獲得しなければ減る傾向にある。ハイブリッドワークが普及する中で、「業務において適切なコミュニケーションとはどのようなものか」を習得することも難しくなりつつある。
物心がついた頃からデジタル技術が身近にあった「デジタルネイティブ」の従業員は、職場でのインフォーマルなコミュニケーションを基にコミュニケーションのルールを学ぶ。一方で、学生や成人になってからデジタル技術を利用するようになった「デジタル移民」の従業員は、フォーマルなコミュニケーションをさまざまな場所で経験してきた。両者の間にはコミュニケーションの内容に違いがあるということを理解するのが、円滑なコミュニケーションを実施するための第一歩だ。
時代が変わり、職場でのコミュニケーションに関するルールは流動的になりつつある。それでも、コミュニケーションにおける「境界線」はどこにあるかを知っておくのは必要なことだ。例えば上司とコミュニケーションを取る際には、テキストメッセージやチャットといったインフォーマルなツールは適切ではない場合がある。将来的に自社の顧客になり得る人物や企業にメールを送る場合は、「なる早で」といった略語やカジュアルな口語表現は使わず、社会人として適切な言葉遣いを心掛けたい。チームメンバーがパフォーマンスを落としている場合には、メールで伝えるよりも、電話やビデオ通話で直接伝える方が望ましい結果につながる可能性がある。
条件3.共同作業を優先するか、取引の遂行を優先するか
複数の機能を同時に使えることがコラボレーションツールの強みの一つであり、その強みが生かされるのが共同作業だ。プロジェクトに関わる従業員の数が多いほど、コラボレーションツールは重要になる。プロジェクトが拡大して従業員が業務を実施する拠点が増えるにつれ、あるいはプロジェクトが複雑になり時間の制約が増えるにつれて、コラボレーションツールの強みを生かすことができるようになる。
特に設計や建築といった、視覚的な検討や分析を必要とするプロジェクトにおいてはビデオ通話が役立つ。複数のコミュニケーション手段を用いるマルチコミュニケーションが必要な場面でもコラボレーションツールは有用だ。例えば社内のチームメンバーとチャットをしながら顧客に電話をした後、ファイル共有機能を通じて共同編集でプレゼンテーションを微調整するといったことが可能だ。
より取引に重点を置く場合は、コラボレーションツール以外でのコミュニケーションを検討するとよい。具体的には書類の受領確認、作業指示の承認、会議への招待の承諾などだ。AI(人工知能)技術を搭載したコラボレーションツールは、そうした作業の自動化を強みとしている一方で、企業は今それらを自動化する必要があるのかどうかを見極めなければならない。メールやメッセージなどのよりシンプルなコミュニケーション手段の方が、業務のニーズに沿っている場合がある。
Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術
米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[LRM株式会社] 「標的型攻撃メール」事例・サンプル集 -
製品資料
[LRM株式会社] セキュリティ教育はなぜ「年間計画」を立てる必要があるのか? -
製品資料
[LRM株式会社] セキュリティの重要性が伝わらない…… 効果がない社員教育から脱却する方法 -
製品資料
[LRM株式会社] 「標的型攻撃メール訓練」導入ガイド 社員の意識を確実に高める仕組みの作り方 -
事例
[株式会社マクニカ] アイカ工業に学ぶ脆弱性対策 情シスが把握できずにいたアセットも正確に把握
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「VMware離れ」は本当か 3000社がVCF 9にかじを切った現実的な理由
-
2
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
3
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
4
「Microsoft 365」が乗っ取られる 跡形もなくMFAを破る手口
-
5
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
6
ISMSの“コンサル丸投げ”が招く数千万円の無駄 NTTドコモビジネスの脱出劇
-
7
Netflixのバックエンドは「ほぼJava」 3000超のアプリを支える開発基盤の裏側
-
8
AI基盤は本当に「オンプレ回帰」する? Broadcomの言い分と企業の本音
-
9
AI全部入り「Microsoft 365 E7」に企業が二の足を踏む訳 移行意向はわずか4%
-
10
エンジニアが選考を辞退する本当の理由 7割が隠す“面接の違和感”とは
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
2
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
3
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
4
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
7
PostgreSQLの「機能」「性能」「運用」「拡張性」に関する悩みの解消法
-
8
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
9
Macの安全神話は崩壊? 最新の脅威動向から見えた攻撃のトレンドと有効な対策
-
10
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー