DXを率いるリーダーにとって重要なのが、ソフトスキルを駆使してメンバーを支援することだ。「試行錯誤」を許容する力と、「共感力」がなぜ大事なのか。ITコンサルティング企業のプレジデントに聞いた。
デジタルトランスフォーメーション(DX)をリーダー1人で推進することは簡単ではない。「DXの実現に向けて共に働く従業員が活躍できる環境を構築することは、リーダーにとって大切な業務だ」。ITコンサルティング企業StarCIOのプレジデントであるアイザック・サコリック氏は、自著『Digital Trailblazer: Essential Lessons to Jumpstart Transformation and Accelerate Your Technology Leadership』の中でそう主張する。DXを成功に導くリーダーに必要なのは、小規模な変更を短期間のうちに繰り返す「アジャイル」な考え方、「試行錯誤」を許容する力、「共感力」だ。「試行錯誤」を許容する力と「共感力」がなぜ大切なのか、サコリック氏に聞いた。
―― DXを共に進めるチームメンバーが安心して試行錯誤できる環境を築くために、IT部門のリーダーはどのような配慮をすればいいのでしょうか。
サコリック氏 私の場合は、スケジュールがタイトになっていないかどうか、カレンダーに余白があるかどうかを確認している。従業員のパフォーマンスを評価する際に、時間の余裕があるかどうかを一つのポイントとして見ることを心掛けている。
従業員のパフォーマンスを評価する際の観点として、「どのような試行錯誤をしたのか」「その試行錯誤に取り組む際、設計時に合理的なリスク予防策を講じたかどうか」を重視している。
従業員には、試行錯誤は頻繁に実施することを推奨している。細かいフィードバックが欲しいからだ。従業員には、試行錯誤の末に何を学んだかを尋ねるようにもしている。
まとめると、リーダーがDXを進める上でチームメンバーに確認すべき点は以下の3つだ。
―― チーム内の共感力を強化するために、IT部門のリーダーは何をすればいいのでしょうか。
サコリック氏 正直なところ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)が起こるまで、私たちは他者に共感し、協力することの価値を重視していなかったように感じる。チームメンバーが、昨日と比べて今日は、そして来週はどのような表情をしているのか、一人一人の人生に何が起こっているのかを理解するのは重要なことだ。
課題を分析する視点は1つではなく、正解も1つであるとは限らない。業務課題に複数人で取り組んでいるとき、その課題を分析する視点や方法はそれぞれの価値観やルールによって異なる。敵対的と思えるほどの口調で自分の意見を主張する人もいれば、何も言わずに黙っていて、課題が手遅れになってから質問し始める人もいる。
共感力を持ち、多様性を認めることができるリーダーは、チームメンバーをまとめて話を聞き、聞き取った内容から学ぶことができる人だ。決断を下す場面では躊躇(ちゅうちょ)することもあるはずだ。覚えておいてほしいのは、決定事項は絶対ではなく、変更することも可能だということだ。
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