ストレージと演算処理機能を1つにまとめた「コンピュテーショナルストレージ」は、それぞれが独立していた従来のストレージシステムと何が違うのか。コンピュテーショナルストレージの概要を解説する。
ストレージと演算処理は従来別々の機能だった。この2つの機能を1つにすれば、処理速度の向上を実現できるのではないか――。その構想を実現するのが「コンピュテーショナルストレージ」だ。
記録媒体が変わり、容量が増えても、データストレージの核となる機能はここ何十年も変わっていない。1980年代に主流だったHDDや磁気テープは、一般的に今日のフラッシュストレージと同じ機能を果たし、アーキテクチャもほとんど変わらない。一方コンピュテーショナルストレージは、ストレージと演算処理へのアプローチの定義を変えることになる。では、どのようなメリットがあり、どのような課題が潜んでいるのか。
通常のデータの演算処理では、入出力(I/O)ブリッジ経由で少量のデータストレージデバイスからプロセッサに移動し、演算処理の終了後にストレージに書き戻される。ただしこのI/Oブリッジのデータ転送速度は、ストレージの近くでデータをやりとりする速度よりも低速になるのが一般的だ。その結果、演算処理速度が低下し、ボトルネックが生じることになる。
この演算処理の遅れによって、金銭取引やデータストリーミングなどの即時性が必要な操作に支障が出る可能性がある。演算処理が終わった時点で、すでに決定的瞬間を逃してしまっていることもあり得る。時間を重視する用例でこうした状況が発生すると、企業の利益損失や運用上の問題につながりかねない。
こうした問題を解消するために、ストレージシステムに演算処理機能を組み込むのがコンピュテーショナルストレージだ。これはストレージデバイスにミニサーバが組み込まれているようなものだと言える。この構造はストレージシステムと処理能力が直接連結しているため、コンピューティング用のプロセッサにデータを移動する必要がなくなる。
コンピュテーショナルストレージは従来の構造、つまりストレージシステムと演算処理機能が独立しているシステムよりも迅速にデータを処理可能だ。ストレージシステム内でデータを処理するため、大量のデータを扱うシステムには理想的だ。その結果必要な演算能力を削減できるとともに、プロセッサや冷却システムのエネルギー消費量も削減できる。データをプロセッサに送らずにストレージデバイス自体で処理できるため、データによってはトラフィック(ネットワークを流れるデータ)を減らせる可能性もある。
現時点のコンピュテーショナルストレージには、以下の2種類がある。
次回は、コンピュテーショナルストレージの課題を説明する。
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