従業員も上司も満足できる人事評価実施の“5つのヒント”従業員が納得できる人事評価のこつ

従業員が前向きな気持ちで人事評価に臨めるようにする――そのために上司ができることは何だろうか。専門家の意見を基に、5つの行動例を紹介する。

2024年02月14日 05時00分 公開
[Christine CampbellTechTarget]

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 「人事評価が待ち遠しい」と思う従業員はめったにいない。むしろ、ストレスや不満の種だと思う従業員さえいる。人事評価をきっかけに離職を考える従業員が現れるのは本末転倒だ。

 HCM(人的資本管理)ツールベンダーGloboforce(Workhumanのサービス名で事業展開)が2019年9月に公開した調査レポート「The Future of Work is Human」によると、回答者の55%が「毎年人事評価を受けても業務へのモチベーションは上がらない」と回答した。同調査は2019年6月1〜17日、米国や英国、カナダ、アイルランドで働く18歳以上の従業員3573人に実施したアンケートに基づく。回答者の職位は「一般従業員」(45%)、「現場管理職」(16%)、「中間管理職」(19%)、「経営層」(10%)だった。

 従業員が前向きな気持ちになる人事評価を実施するにはどうすればいいのか。改善策になり得る5つのヒントを紹介する。

1.「継続的パフォーマンス管理」を導入する

 上司との対話を通じて目標の設定やフィードバックを繰り返す「継続的パフォーマンス管理」(CPM:Continuous Performance Management)が近年のトレンドだ。「年度初めに目標を立て、年度末にその達成度合いを評価する」という従来のやり方に置き換わるものとして注目を集めている。

 従業員エクスペリエンス管理ソフトウェアベンダーWorkleap Platformが2021年5月に公開した調査レポート「Employee engagement statistics from across the globe」は、上司からのフィードバックが従業員エクスペリエンスに良い影響を及ぼす可能性があることを示唆している。従業員の83%は「ポジティブであれネガティブであれ、上司からのフィードバックを欲している」と回答した。調査対象はWorkleap Platformの人事向けソフトウェア「Officevibe」のユーザー(約150カ国、約5万人)だ。

 つまり人事評価を、継続的な業務の効果測定やフィードバックのまとめとして位置付けるということだ。

 人事コンサルティング会社Kim Crowder ConsultingのCEOキム・クローダー氏は人事評価についてこう語る。「人事評価の内容に従業員が驚くとしたら、それまでの間に上司が従業員と効果的なコミュニケーションを取ってこなかったという証拠だ」。

2.業務改善につながる具体的なフィードバックを提示する

 フィードバックは「DEI」(ダイバーシティー、エクイティー、インクルージョン:多様性、公平性、包摂性)の問題を引き起こす場合がある。例えば有色人種の女性従業員が、業績ではなく外見や性格に基づいて評価されていると感じることがあるという。

 Textioの調査レポート「Language Bias in Performance Feedback 2022」によると、女性従業員は男性従業員に比べ、性格に関連するフィードバックを受けやすい。例えば、女性は”我が強い”と評価されることが男性に比べて7倍多いという。同社は求人広告や人事評価書の内容に偏りがないかどうかをチェックする支援ツールを提供するITベンダーだ。

 「フィードバックは性格や見た目ではなく、業績に焦点を当てたものでなければならない。業務の改善に具体的に活用できる内容になっているかどうかも確認が必要だ」と、クローダー氏は指摘する。

 中身が伴わないフィードバックを得ても、具体的な業務改善につなげることはできない。前述のTextio調査データによると、黒人女性の従業員は40歳未満の白人男性の従業員に比べて、「具体性がないフィードバック」を上司から受ける可能性が約9倍高い。

 この問題は人事評価にとどまらない。職場特有の雰囲気に合わせて”空気を読める”従業員かそうでないかによって、チャンスを得られなくなる可能性もある。

3.結果だけでなく、努力を考慮する

 「成果を得られなかったプロジェクト」があったとする。達成できなかった理由は、従業員にはどうにもできない問題だったのか。達成を目指して従業員は一生懸命に取り組んでいたのか。人事評価に関わる管理職はこれらの可能性を考慮する必要がある。

 結果だけを見て過程を見ていないと、思わぬ落とし穴がある。SAPで北米地域の人事部門統括を務めるメーガン・スミス氏が挙げる例はこうだ。新規部門の立ち上げとメンバーの採用を担当する従業員がいたとする。その従業員を評価するときに、採用スピードが速いかどうかを判断材料にしてはならない。採用スピードが速かったからといってベストな人選ができたとは限らない。急ぎ過ぎたために部門に悪影響を与える可能性さえある。

 カスタマーサービス業務担当の人事評価も同様で、チケットを迅速に解決しているからといって、顧客に最良の提案を提供しているとは限らない。そうではなく、チケットを減らすのに役立つ従業員の行動を評価するのが望ましい。

4.業務に合わせて評価する

 企業が人事評価をする際、全員に対して共通のテンプレートを使用している場合がある。これでは各従業員の実態に即した「具体的で実用的なフィードバック」を提供するのは困難だ。

 「企業は従業員を、職務ごとに異なる基準で評価するべきだ」。Smartly(Bonuslyの名称で事業展開)のピープルオペレーション担当バイスプレジデントを2023年4月まで務めていたビクトリア・ヤン氏はこう語る。同社はレコグニションツール(従業員がお互いの功績を認め、承認や称賛や送り合うためのツール)を提供するベンダーだ。

 単一の指標ではなく、業務に関連した従業員ごとのスキルセットを評価する。そうすることで、従業員の将来のキャリアについてもアドバイスしやすくなる。

5.従業員に共感を示し、意見に耳を傾ける

 自己評価について考えるとき、昇給や昇進、自分が正当な金額の給与を得ていることを証明するためのレポートを書いているような気持ちになる人もいる。

 「企業の人事評価制度は、従業員が”負けるものか”と感じたり、”この現実から逃げたい”と思ったりするような内容になっている」とヤン氏は指摘する。

 人事評価に限らずいつでも従業員の意見に耳を傾けるようにすること。これが、従業員が安心してフィードバックを受けられるための環境作りにつながる。

 人事評価は、従業員の長所と短所を洗いざらい指摘する一方的なものになりがちだ。本来は、双方向のコミュニケーションでなければならない。「管理職が従業員からフィードバックを受けることも大切な取り組みだ」。ヤン氏はこう指摘する。

 給与交渉と人事評価を切り離すこともポイントだ。そうすれば、人事評価に伴うストレスを軽減できる。

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