BroadcomがVMwareのEUC事業を投資会社に売却すると発表した。ユーザー企業やパートナーは大きく3つの疑問を抱いている。Broadcomはこれらの疑問に答えるべきだ。
半導体ベンダーBroadcomは2024年2月26日(現地時間)、仮想化ベンダーVMwareが手掛けてきたエンドユーザーコンピューティング(EUC)事業を、投資会社KKRに売却すると発表した。EUC 事業には、VDI(仮想デスクトップインフラ)製品の「VMware Horizon」(以下、Horizon)が含まれる。
この売却に関して、ユーザー企業やパートナーが懸念すべき問題が3点ある。VMwareのEUC事業の経営陣は、ユーザー企業とパートナーを安心させるためにこれらの疑問に答えるべきだ。
VMware Horizonのライセンスは、「VMware vSphere Desktop」を含む最小管理単位(SKU)で最も利用されている。このライセンスを購入したユーザー企業は、仮想アプリケーションや仮想デスクトップのためにサーバ仮想化ソフトウェア「VMware vSphere」(以下、vSphere)のライセンスを追加購入する必要がない。VMwareのEUC事業が別会社になると、この点は変更が必要になる。
Broadcomは既にvSphereのライセンスを変更して、ユーザー企業やパートナーが不満を募らせている。Broadcomの経営陣は間違いなくこの懸念を把握してはいる。費用が増えるのではないかというユーザー企業の懸念を和らげるために、経営陣にできることは何だろうか。
短期的な対策としては、新会社からvSphereの扱いを説明する必要がある。ユーザー企業への影響ができるだけ小さくなるよう、すでにBroadcomと折り合いを付けていることを期待している。
将来的には、HorizonがvSphereから完全に切り離されるだろう。クラウドサービス上でHorizonを実行する動きが、オンプレミスのハイパーバイザーにも広がると筆者は見ている。
統合エンドポイント管理ツールの「VMware Workspace ONE」(以下、Workspace ONE)は、管理対象のデバイスやOSが網羅的であったため、ユーザー企業はWorkspace ONEに投資するなら他のエンドポイント管理ツールには資金を投じない傾向にあった。Horizonも同様だ。
Workspace ONEとHorizonは他ベンダー製のツールとの連携も限られていた。Citrix Systemsのソフトウェアがさまざまな面でMicrosoftと密接に連携していたのに対し、Workspace ONEやHorizonは一部機能を利用できたに過ぎない。
VMwareが他ベンダー製品との連携に消極的だった理由の一つは、VMwareのプライベートクラウド構築製品群「VMware Cloud Foundation」をハブとしてあらゆる領域を管理する戦略があったからだろう。VMwareのEUC事業が別会社になるとこの課題はなくなる。そうすると、HorizonとWorkspace ONEの提携パートナーとの統合や直接の協力は、もっと自由になるのだろうか。それとも、競合との提携という位置付けになるのだろうか。
Horizonには、他ツールと組み合わせて販売されたら購入者に恩恵があるような機能が複数ある。vSphereから切り離されて販売される可能性があるとすれば、その日が来るのが楽しみだ。
最後に、VMwareのEUC事業に関して新しい社名とブランドが登場する。その新会社が、勢いを持続して関心と信頼を高めるには、製品ラインの未来に関する声高かつ強力なメッセージと共に会社が登場しなければならない。
VMwareのEUC事業の状況について思うことは、Citrix Systemsの時とはどうしても異なる。2000年代と2010年代を通じてVDI分野をけん引してきた両社が、もはやかつてのような存在ではなくなってしまったことは興味深いが、これは何よりも時代を象徴するものであり、ITの潮流の変化なのだ。
目を凝らせば、VMwareのEUC事業が投資会社の手に渡るまでの道のりは、Citrix Systemsが買収された時と著しく異なっている。今回も他の買収と同じように変化と縮小が見込まれるが、筆者の感触では、VMwareのEUC事業がたどる道はCitrix Systemsとは違うものになり、トンネルの出口に見えている光は、困難をもたらすものではないだろう。
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