熱狂が冷めた「メタバース」にまだ期待したくなる“10種の活用例”広がるメタバースの活用例18選【後編】

仮想空間「メタバース」への熱狂的な関心は薄れているが、メタバース関連の市場が今後拡大する可能性を秘めていることは変わらない。これから期待が持てるメタバースの活用例を10個紹介する。

2024年06月13日 08時00分 公開
[Mary K. PrattTechTarget]

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 仮想空間「メタバース」への関心が薄れつつあるとしても、メタバースを取り巻く市場がこれから拡大する可能性を秘めていることに変わりはない。メタバースがより広く使われるようになると、日常生活からビジネスまで、さまざまな場面が大きく変わる可能性がある。メタバースに期待できる18個の活用例のうち、後編となる本稿は10個の活用例を紹介する。

メタバースに期待したくなる活用例10選

9.ゲーミング体験の向上

 マイアミ大学(Miami University)ファーマースクールオブビジネス(Farmer School of Business)のマーケティングおよびインタラクティブ学教授を務めるグレン・プラット氏によると、メタバースを早期かつ広範に取り入れたのがゲーム分野だ。メタバースを活用し、より臨場感があるゲーミング体験をユーザーに提供できる。

 ゲームとメタバースの相性が良い理由は大きく2つある。まず、ゲーム愛好家の大半はメタバースを利用するためのゴーグルやヘッドセットを既に所持している。さらに、ゲーム企業は優れたイマーシブ(没入型)コンテンツを開発する能力を持つ。「Minecraft」をはじめとするロングセラーゲームの人気を見ても、その事実は明らかだ。

10.没入型のエンターテインメントの開発

 メタバースは、これまでとは異なる次世代型のエンターテインメントを創出する可能性がある。従来、トランスメディア(テキストや動画、ゲームなど複数の媒体を使ってストーリーを展開させる手法)では2次元(2D)が主流だったが、メタバースでは3次元(3D)を駆使した、リアルでイマーシブ(没入型)なトランスメディアが実現する可能性があると期待が集まっている。

 例えば、モバイルゲーム「Pokemon GO」は、拡張現実(AR)を駆使した次世代型エンターテインメントの先駆けと言える。

11.日常生活の利便性向上

 コンサルティング企業Boston Consulting Group(BCG)傘下BCG XのCEO(最高経営責任者)兼共同経営者ティボル・メレ氏は、「メタバースは日常生活のあらゆる場面で役立つだろう」と予測する。

 例えば、パーティーでの歓談中、スマートグラス上でゲストのネームタグを表示できれば、わざわざ名前を尋ねる必要がなくなる。

12.地理的障壁の解消

 メタバースには「地理的な境界をなくすことができないか」といった期待が寄せられている。例えば、現実世界では旅行ができなくても、さまざまな場所をバーチャルに探索できれば気軽に旅行気分を味わえる。

 遠くに住んでいる友人や家族が結婚式や卒業式などのイベントに参加できない場合も、メタバースで物理的な距離をなくし、まるでその場にいるかのような体験ができる。後から写真や動画を見返すのとは違い、遠隔地の人と楽しい時間をリアルタイムで共有できる。

13.次世代型交流空間の創出

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)禍では、オンライン会議ツールを用いた交流が盛んになった。一方で、そうした2Dでの交流には限界があることが明らかになっている。メタバースでは、アバターが歩き回り、さまざまな人々やグループと会話することが可能になり、実世界の社会状況に近い環境を生み出せる。

14.人間が踏み込めない領域の可視化

 メタバースは人間が踏み込むことができない領域の可視化と探索を可能にする。「例えば、普段は目に見えない大きさの細胞を可視化したり、中に入り込んだりすることもメタバースでは可能だ」とプラット氏は語る。

 プラット氏は病院と連携し、メタバースを活用した臨床医向けトレーニングを開発したという。メタバース上の病室で、肉眼では見えない感染性の細菌を可視化し、感染対策の強化に役立てている。

15.コラボレーションの向上

 メタバースは現実に近い方法でのコミュニケーションを可能にする。例えば、オンライン会議では相手のボディーランゲージが見づらかったり、実物を手に取り説明することが難しかったりする。3D空間を扱うメタバースであれば、これらの制約を緩和できる。触覚デバイスを用いれば、デジタル技術で再現した物体を実際にそこにあるかのように扱うことも可能になる。

 メタバース関連の技術進化に伴い「ゲーマー以外の人々もバーチャル空間での交流を好むようになる可能性がある」と専門家は予測する。

16.没入型の参加

 メタバースは、人々を傍観者から参加者に変えることができる。例えば、ジップライン(ワイヤに滑車を付けた遊具)を実際に体験する前に、現実に近い仮想世界で感覚を知って、本当にその勇気があるかどうかを試すことができる。他にも、メタバース内でレーシングカーを運転したり、プロの試合でバスケットボールコートを走り回る気分を味わったりもできる。

17.新しい市場の創出

 テレビゲーム会社はゲーム愛好家にゲーム内で購入できるデジタルアイテムを販売している。服飾デザイナーは、メタバースで服やアクセサリーのデジタルアイテムを販売している。これらは新しい市場が開ける予兆だと捉えることができる。コンサルティング会社Deloitte Consultingでマネージングディレクターを務めるアラン・クック氏は、メタバースが進化を続けてより多くの人が関わるようになるにつれて、企業や起業家が新しい市場を切り開くチャンスが広がると予測する。

18.未知の可能性

  専門家はそれぞれ、メタバースについて異なる定義を持っており、特定の技術がメタバースとして定義されるかどうかを議論する場面も往々にしてある。一方で、メタバースはまだ初期の段階にあるという点では、意見が一致しているようだ。

 これからメタバースが進化を続け、参加する人が増えるにつれて、新しい市場機会が発掘されていくだろう。つまり、現段階では想像もつかないような用途が今後出てくる可能性がある。

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