無線LAN接続用の手段としてモバイルホットスポット専用デバイス(モバイルルーター)を使う場合は、考慮すべきポイントが複数ある。6つにまとめて解説しよう。
持ち運びできる無線LANアクセスポイントである「モバイルホットスポット」を利用するには大きく2つの方法がある。一つはスマートフォンやタブレットといったモバイルデバイスの「テザリング」機能を利用してモバイル回線を使う方法だ。もう一つは、モバイルホットスポット専用デバイス(日本国内では「モバイルルーター」の名称が一般的)を利用することだ。
モバイルルーターの利用に当たっては、考慮すべき要素が複数存在する。どのような点に注目してモバイルルーターを比較すればよいかを解説する。
モバイルルーターは個人ユーザー向けの20ドルの小さなポケットサイズのデバイスから、30台以上のクライアントデバイスを同時接続して、複数の付加的な機能を提供する1000ドル近いデバイスまで、コストには幅がある。独自のデータプランが用意されている機種もある。デバイスに付帯しているデータプランもあれば、個別にデータプランを追加できるものもある。
モバイルルーターがどの無線LAN規格に準拠しているかを確認する。例えばIEEE 802.11n(Wi-Fi 4)までしか準拠していない場合は、複数のクライアントデバイスが同時接続すると通信パフォーマンスが劣化する可能性がある。仮にモバイルルーターがWi-Fi 4までしか準拠していない場合は利用しない方がいいだろう。
デバイスが準拠するネットワークの周波数帯と、通信事業者が提供するモバイル回線の周波数を比較する必要がある。無線LANの通信速度は、特定の場所で通信事業者が提供する回線の状況に基づいて変化することに注意しなければならない。
同じ国でも地域によって速度が異なる場合があるが、Wi-Fiには下位互換性がある。そのため「IEEE 802.11ax」(Wi-Fi 6)に準拠しているモバイルルーターは、クライアントデバイスがWi-Fi 4までしか準拠していないときはWi-Fi 4で通信する。下りの通信速度は、その場所の通信事業者のモバイル回線のネットワーク状況によって異なる。
バッテリー駆動時間はモバイルルーターによって異なり、一般的に連続使用時は6時間から24時間だ。連続で使用しない場合、バッテリーの持ちは長くなる。通常、ユーザーはデバイスを電源に接続できるため、バッテリー駆動時間は重要ではないだろう。
これは最も重要な検討事項の一つだ。
SIMカードとは通信事業者が契約者を認識するICカードのことであり、SIMロックとは指定した通信事業者以外の回線を利用できないようにする技術だ。SIMがロックされているモバイルルーターを別の国で利用する場合、現地の事業者のSIMカードと入れ替えることができない。
通信事業者のVerizon Communications、AT&T、T-Mobileは、インターネット通販サイト「Amazon.com」、または通信事業者を通じて入手できる、SIMロックされたモバイルルーターを提供している。
SIMロックが解除されたモバイルルーターにはSIMカードが付属していないか、または交換可能なSIMカードが付属しているので、ユーザーは多くのベンダーがデバイスと一緒に提供しているSIMカードを別途購入したり、さまざまなデータプランを契約したりできる。
この側面はさまざまな意味を持ち、複雑だ。たとえば、Huawei Technologiesのモバイルルーターの中には、欧州、アフリカ、アジアの一部の国々向けに作られたものがあるが、米国では使用できない。デバイスがサポートしている国のリストをチェックするべきだ。
「5G」(第5世代移動通信システム)には、低周波数帯の「ローバンド5G」、中周波数帯の「ミッドバンド5G」、高周波数帯の「ハイバンド5G」の3つの帯域がある。
それぞれ異なる周波数帯で動作し、データ伝送速度とカバレッジ(通信可能エリア)が異なる。ローバンド5Gは3つの中で最もカバレッジが広いが、データ伝送速度は最も遅い。ハイバンド5Gはデータ伝送速度が最も速いが、逆にカバレッジが限られる。ミッドバンド5Gはデータ伝送速度とカバレッジのバランスが取れている。
米連邦通信委員会(FCC)が2021年に認可した「Cバンド」はミッドバンドの周波数である3.7〜3.98GHzで利用できる。しかし、比較的新しく解禁された周波数帯であるため、2024年時点で、Cバンドをサポートするモバイルルーターはほとんど存在しない。
ユーザー目線で幾つかの注意点を解説したが、企業のIT管理者は以下のような点も考慮すべきだ。
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