持ち運びできる無線LANアクセスポイントの選択肢として、スマートフォンのテザリング機能と、モバイルホットスポット専用デバイス(モバイルルーター)がある。両者の特徴を比較する。
持ち運びできる無線LANアクセスポイントである「モバイルホットスポット」には、スマートフォンやタブレットといったモバイルデバイスの「テザリング」機能を使う方法と、専用デバイス(日本国内では「モバイルルーター」の名称が一般的)を使う方法の2種類がある。
どちらの方法にもメリットとデメリットや制約がある。テザリングとモバイルルーターの特徴を比較する。
テザリングはスマートフォンやタブレットの一般的な機能で、モバイルデバイスを無線LANルーターとして機能させる。
通信の安定したあるいは安全なインターネット接続が周囲にないテレワーカーは、スマートフォンのテザリング機能を簡単に設定し、ノートPCやタブレットを無線LAN接続することで、通常の無線LANと同じようにインターネットにアクセスできる。それに対してモバイルルーターとは、ホットスポット接続を提供するための専用機器だ。一般的には独自のデータプランが付属している。
モバイルデバイスのテザリング機能には以下の制限事項がある。
以上のような理由により、用途によってはモバイルルーターが適している。スマートフォンのテザリング機能の方が費用対効果は高いが、モバイルルーターの方が機能や性能に優れる傾向にある。モバイルデバイスのテザリング機能とモバイルルーターのどちらを選択するか決めるに当たり、両者とその機能を比較分析することが重要だ。両者の併用が最適なケースもある。
企業のIT管理者は、自社のニーズを評価し、使用するデバイスを決定する必要がある。次の表に、モバイルデバイスのテザリング機能とモバイルルーターの違いをまとめた。
■表1 モバイルデバイスのテザリング機能とモバイルルーターの違い
特徴 | モバイルデバイスのテザリング機能 | モバイルルーター |
---|---|---|
費用 | 既存のモバイルデバイスを利用できるため、費用を抑えられる | モバイルルーターの費用がかかる |
クライアントデバイス同時接続数 | 少数までなら同時接続できるが、通信パフォーマンスが低下する可能性がある | 一般的には10台から30台の同時接続をサポートしているため、遠隔地でのグループやチームの共同作業やミーティングに利用できる |
バッテリー駆動時間 | モバイルデバイスのバッテリー消費が早まる | 6時間から24時間の連続使用に耐えるバッテリーを備える機種が多い |
データプラン | 通常、モバイルデバイスのデータプランに組み込まれているが、テザリングを利用料金範囲から除外しているプランもある | さまざまなデータプランがあり、デバイスに付帯しているものもある。 |
国をまたいだ利用 | 端末にSIMロックが設定されていなければ、それぞれの国の通信事業者のSIMカードを入れ替えて使用する | SIMロックされているものもあるが、ほとんどはSIMフリーだ。一部のデバイスは、特定のエリアでしか使えない |
料金 | 通信事業者との契約プランの料金に準じる | 米国では20ドルから1000ドルのものまで存在する。個人用のポケットサイズのものから、32台のクライアントデバイスが同時接続できるものまで、デバイスに応じて料金は異なる |
一人で活動する従業員にとっては、スマートフォンのテザリング機能で十分だと考えられる。より強固なセキュリティを必要とするチームで利用する場合は、複数のクライアントデバイスの同時接続が可能で、設定できる項目の多いモバイルルーターが最適だろう。
従業員のスマートフォンにテザリング機能がない場合や、契約中のデータプランにテザリング機能を使った通信が含まれていない場合は、安価なモバイルルーターの購入を検討できる。総合的な観点からニーズに合った選択が必要だ。
次回はモバイルルーター契約時の注意点について解説する。
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
ファイザーのコンテンツサプライチェーン変革 “コロナ禍で世界を救った”経験はどう生かされたのか?
新型コロナウイルスワクチンをいち早く完成させた製薬会社は、コンテンツサプライチェー...
企業の生成AI活用 なぜ日本は米国に追い抜かれたのか?
PwC Japanグループは日米両国で実施した「生成AIに関する実態調査」を基に、日本企業と米...
「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2024年10月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...