企業が求める人材と、エンジニアが持つスキルの差はなぜ埋まらないのか。背景には、エンジニアや技術に関する特有の事情がある。
ネットワーク分野では、企業が求めるスキルとエンジニアが持つスキルの不一致(スキルギャップ)が生じている。スキルギャップは以前から目立っている課題だが、解消する気配がない。エンジニア自身の学習に加え、企業側の理解や支援によってスキルギャップは解消するはずだが、それができていないのはなぜなのか。背景には、エンジニアや技術に関する特有の事情がある。
スキルギャップが生じる原因の一つは、技術の変化だ。エンジニアが一定期間に新しい情報を収集したり、新しいスキルを身に付けたりできる量は限られている。スキルを身に付けるには、新たな行動を一定程度繰り返す時間が必要だ。技術の変化のペースが速ければ、エンジニアが新しいスキルを完全に習得する前に、その技術が時代遅れになっている可能性がある。
ネットワークエンジニアの大半は、自身のキャリア初期に触れた技術については深く理解しているだろう。しかしそうした技術のニーズは、新世代の技術が次々と登場してくる中で徐々に減少するのが一般的だ。
新しい技術を学んだとしても、ネットワークエンジニアはその技術を以前に学んだ技術ほどには使いこなせない可能性がある。ネットワークエンジニアは、以前使用していた技術と同じようなやり方で新しい技術を使用する傾向にある。「CLI」(コマンドラインインタフェース)による手作業の業務が残っているのも納得だ。
スキルギャップは、人口分布やトレンドからも説明できる。一般的なIT部門では、X世代(1960年代半ばから1970年代生まれ)の従業員が定年を迎えたり実務を担当しない管理職に就いたりする時期を迎えている。そうして世代交代が起きる一方で、ネットワークエンジニアを目指す若年層は減少傾向にある。
ネットワークのスキルギャップが生まれる原因はエンジニア側の問題だけではない。企業が求める人材と、労働市場に存在する人材のスキルには乖離(かいり)がある。
例えば、自社のネットワークインフラを維持していたスタッフが退職する場合、その代わりを探す企業は、そのスタッフが保有するスキルと同等または新しい関連スキルを保有する人材を募集する。だが実際には、退職者と同等のスキルを保有する応募者がいるとは限らない。仮に見つかっても、退職するスタッフよりも高額な報酬を求める可能性がある。適切なスキルを保有する人材を見つけられないからだけではなく、そのスキルを保有する応募者を採用するのに費用がかかり過ぎることも、スキルギャップの原因となる。
人材作用のプロセスにおいては、書類審査を自動化したり、審査を外部に委託したりすることが珍しくなくなっている。対象の職務を遂行できる熟練エンジニアが応募しても、応募書類の中で特定の資格基準がチェックされていなかったり、特定のキーワードが記述されていなかったりすると、審査で抜け落ちてしまう恐れがある。これもスキルギャップにつながる一因だ。
採用担当の上級職が採用プロセスの初期から関わったり、人材採用を支援する外部企業の審査担当にITのバックグラウンドがある担当者が付いたりすれば、スキルギャップの縮小につながると考えられる。
後編では企業が求めているエンジニア像を解説する。
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