企業はプラットフォームエンジニアリングチームに対し、開発と運用の効率向上だけではない多様な役割を求めている。企業の成長を実現するために、プラットフォームエンジニアリングチームはどうあるべきか。
開発(Dev)と運用(Ops)を結び付ける「DevOps」を拡張し、プロダクトマネジャーとエンジニアで構成されたチームが開発者に必要なインフラを構築、運用するアプローチを「プラットフォームエンジニアリング」と呼ぶ。
構成管理ツールベンダーPuppet(2022年にPerforce Softwareが買収)は2023年8月から9月にかけてプラットフォームエンジニアリングの実態を探るアンケート調査を実施した。対象となったのは、プラットフォームエンジニアリングチームに所属する、またはプラットフォームエンジニアリングチームと協業する474人だ。企業はプラットフォームエンジニアリングチームに何を期待しているのか。企業を成功に導くために、プラットフォームエンジニアリングチームには何ができるのか。
調査結果のレポート(以下、調査レポート)によると、企業がプラットフォームエンジニアリングに期待することの第1位は「製品のデリバリースピードの向上」だった。第2位には「セキュリティとコンプライアンスの改善」が続く。
プラットフォームエンジニアリングが開発者に与えるメリットとして最も多く挙がったのが「生産性の向上」の50%で、次いで「ソフトウェアの品質向上」が40%、「デプロイ(展開)までのリードタイムの短縮」が36%だった。「開発者が扱うツールやタスク、情報の煩雑さに対する『防護壁』としてプラットフォームエンジニアリングは機能する。ツールやプロセスを標準化することで、開発者はツールを使いこなす負担から解放され、ソースコードを書く業務に集中できるようになる」。調査レポートはそう説明する。
プラットフォームエンジニアリングチームのカバー範囲については、以下を主要だと捉える回答者が目立った。
これに対してコスト管理は優先事項には上らなかったものの、「プラットフォームエンジニアリングチームの扱うシステムが成熟するにつれ、コストは成功のための重要な指標となる」と調査レポートは指摘する。これは一部の企業がクラウドサービスにかかるコストに苦しんできたことからも明らかだ。「プラットフォームエンジニアリングチームがコストの管理と最適化に関心を持たなければ、プラットフォームエンジニアリングそのものがリスクを生む」と調査レポートは注意を促している。
プラットフォームエンジニアリングチームの設立年数については、以下の回答結果となった。
社内におけるプラットフォームエンジニアリングチームの位置付けは、サポート範囲によって異なることがうかがえる結果となった。
プラットフォームエンジニアリングチームの構成も企業によって異なる。プラットフォームエンジニアリングチームの成功の鍵を握るのはフルスタック(複数分野に精通した)DevOpsエンジニアだ。これは回答者が、システムインテグレーションや自動化、テストといったさまざまなスキルがプラットフォームエンジニアリングチームに必要だと答えていることからも分かる。一方で一部の回答者はプロダクトマネジャーの必要性についてあまり認識していない。チームの成功のためにプロジェクトマネジャーはどれほど重要かという質問に対する回答は以下の通りだった。
誰もがプラットフォームエンジニアリングの考え方を支持しているわけではないことも調査レポートから見えてきた。調査レポートによると、プラットフォームエンジニアリングチームの意義について以下の回答が集まった。
「DevOpsの在り方に対する企業の理解が深まれば、プラットフォームエンジニアリングのような構造化、体系化された組織の必要性も理解するようになる」と調査レポートは分析している。調査レポートによれば、ほとんどの企業はプラットフォームエンジニアリングチームが業務に与える影響を理解している。「チーム間でのツールやワークフローの統一はパワーを生む。それらの一貫性が高いほど、インフラの安全性と効率性が向上し、標準化が進む」とPuppetは見込む。
プラットフォームエンジニアリングの重要な役割が開発プロセスの自動化だ。開発プロセスの自動化が進めば、開発者は開発速度の向上や人為的ミスの削減などのメリットを享受できるようになる。Puppetのプロダクトマネジメントマネジャーであるマーガレット・リー氏は、「自動化が企業にメリットをもたらすようになっているのを目の当たりにしている」と述べる。その上でリー氏は、プラットフォームエンジニアリングによる自動化の具体的な形が「セルフサービス」だと説明する。ここでいうセルフサービスとは、開発者が他者や他の部門に依頼することなく、必要なツールやインフラを入手できる状態が整っていることだ。同氏によれば、以前の企業は個人やチームレベルで自動化を実施していた。今はそれが発展し、標準化と自動化は企業全体にメリットをもたらしている。開発者の認知的負荷(人の作業記憶に掛かる負担)を軽減し、生産性を向上させることに役立っているという。
リー氏は「小さく始めること」の重要性を強調する。「どのような形であれ、何かを変えることは難しい。自社にとって大きな価値をもたらすものから始めてほしい」というのが同氏のアドバイスだ。同氏のデータによると、企業はセキュリティから手を付け始める傾向にあり、これは開発者と企業の両方に価値をもたらす可能性がある。
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