AI専門家「NLPエンジニア」になるための“教養とスキル”はこれだ自然言語処理の知識とキャリア【中編】

AI時代に需要が高まりつつある自然言語処理(NLP)エンジニアになるには何が必要なのか。具体的な職務内容や、キャリアを歩む上で求められるスキルを解説する。

2024年08月15日 07時30分 公開
[Stephen J. BigelowTechTarget]

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 テキストや画像を自動で生成する人工知能(AI)技術「生成AI」や、そのベースとなる大規模言語モデル(LLM)の使用が拡大するにつれて、「自然言語処理」(NLP)のエンジニア(以下、NLPエンジニア)の需要が高まっている。NLPエンジニアになるには何が必要なのか。NLPエンジニアの具体的な職務内容や、求められるスキルを紹介する。

「NLPエンジニア」になるための“教養とスキル”はこれだ

 NLPエンジニアとは、組織におけるNLPプロジェクトで開発や保守、トレーニングなどを担う技術専門職だ。分かりやすく言い換えると、NLPエンジニアは、人間とコンピュータの「理解の架け橋」となる。例えば、AIシステムが自然言語から有用なインサイト(洞察)を引き出せるようなユーザーインタフェース(UI)を作成するといった具合だ。

 NLPエンジニアの具体的な業務は、企業やプロジェクトごとに異なるが、一般的には以下のような内容で構成される。

  • モデル設計
    • NLPシステムに使用されるアルゴリズムや機械学習(ML)モデルを設計する。設計するMLモデルは目的によって変化する。例えば感情分析用と、生成AIのプロンプト(情報を生成するための質問や指示)入力インタフェース用では異なるMLモデルが必要だ。
  • 開発
    • ソフトウェア開発者や品質保証(QA)チームと協力して、NLPシステムを開発する。MLモデルやアルゴリズムのコーディングとテストから、NLPシステムのデプロイ(配備)までを担う。
  • トレーニングと評価
    • データサイエンスチームと協力して、NLPシステムのトレーニングデータの管理やトレーニングを実施する。
    • さまざまな指標やKPI(重要性能評価指標)監視ツールを用いて、「自然言語入力の理解度」といったNLPシステムの精度を測定する。
  • 統合
    • NLPシステムは、それ単体では実用性に欠ける。一般的にはチャットbotやヘルプデスクシステムといったAIツールのフロントエンドとして使われる。NLPエンジニアは、AIツールにNLPシステムを統合する役割を担う。
  • 継続的な改善
    • NLPシステムは、一定周期ごとに開発(もしくはアップデート)する必要がある。長期にわたってNLPシステムのフィードバック監視、MLモデル改良、ソースコード最適化を実施する。エンドユーザーの要望に応じて、新しいスラングの追加や、ローカライズ、新機能の開発を実施し、NLPシステムのさらなる適応を目指す。

 NLPエンジニアは、以下のような他分野の技術者や専門家と密接に協力して業務を遂行する。

  • AIプロジェクト管理者
    • AIプロジェクトを管理するマネジャーやステークホルダー(利害関係者)。
  • AIチーム
    • コンピュータビジョン(画像情報を通じて対象の内容を認識し理解するAI技術)やテキスト読み上げなど、NLPを補完する技術チーム。
  • ソフトウェア開発者とテスター
    • NLPおよびAIソフトウェアの構築や、テストを担当。
  • データサイエンティストとデータエンジニア
    • 機械学習モデルのトレーニングに用いるデータを作成。

NLPエンジニアに必要なスキルと知識とは?

 NLPエンジニアとしてのキャリアを築くには、以下の領域におけるスキルセットが必要になる。

  • 言語学
    • NLPエンジニアには、構造、構文、意味論を含む、言語論への深い理解が求められる。言語学の知識がなくても、NLPエンジニアのキャリアを始めることは可能だが、専門知識があると長期的なキャリア基盤を確立しやすくなる。
  • 機械学習
    • 自然言語をAIシステムが理解できる形式に変換するには、アルゴリズム、MLモデル、ディープラーニング(深層学習)、リカレントニューラルネットワーク(RNN:時系列データを扱うニューラルネットワーク)などの知識が必要だ。
    • 「PyTorch」「Kera」「scikit-learn」などMLツールの経験も役に立つ。
  • プログラミング
    • 開発したNLPモデルを実行可能なソースコードに変換するために、プログラミングスキルが必要になる。
    • 「Python」「Go」「R」「Java」「C++」などの主要なプログラミング言語における、ソフトウェアアーキテクチャ、設計、包括的なテスト、コーディングに関する深い知識が求められる。
  • データサイエンス
    • モデルはデータなくして価値を発揮できない。統計、データ構造、データ分析、データ可視化といったデータサイエンスの基礎知識はNLPエンジニアのキャリアに役に立つ。
  • 問題解決
    • NLPエンジニアは、ビジネス目標に合ったNLPシステムを作成する必要がある。
    • 言語には機微なニュアンスや意味の違いがあるため、非常に複雑な問題を解決する能力や、各プロジェクトの要件や目標によって異なる課題を解決する能力が求められる。
  • コミュニケーション
    • NLPエンジニアは1人では仕事ができないため、コミュニケーションを始めとするソフトスキルが重要になる。
    • プロジェクトにはプログラマー、データサイエンティスト、オペレーションチーム、プロジェクトマネジャーや部門長などの関係者、ユーザーが関与する。

 次回は、NLPエンジニアを目指すために必要なスキルをどのように身に付けていけばいいのかを解説する。

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