BroadcomによるVMwareの買収を契機と捉えて、SUSEはプラットフォームエンジニアリング市場での競争力強化に乗り出した。オブザーバビリティベンダーStackStateの統合はどのような影響をもたらすのか。
仮想化ソフトウェアベンダーVMwareが、半導体ベンダーBroadcomに買収されたことは、仮想化とその周辺市場に大きな影響を与えた。この状況下で、専門チームが開発者に必要なインフラを構築、運用するアプローチ「プラットフォームエンジニアリング」分野で台頭しようとしているのがSUSEだ。同社は企業向け営業を強化し、可観測性(オブザーバビリティ)分野のパートナー企業であったStackStateの買収、「Rancher」の強化などを通じて、プラットフォームエンジニアリング市場での存在感を示そうとしている。Rancherは、コンテナオーケストレーションツール「Kubernetes」で扱うコンテナクラスタ(Kubernetesクラスタ)管理ツールだ。
StackStateの買収は、SUSEにとって成功を引き寄せる取り組みになるのか。複数の専門家の見解を紹介する。
StackStateは2015年設立のオランダのスタートアップ(新興企業)だ。SUSEはStackStateを買収する前から、StackStateのオブザーバビリティツールや修正ガイダンスツールとRancherを連携できるようにしていた。SUSEによると、StackStateのエンジニアはSUSEに加わる。StackStateのオブザーバビリティツールは、Rancherの商用版「Rancher Prime」に組み込まれ、「NeuVector」などのコンテナ管理ツールとの連携や、AI(人工知能)技術の導入も進められるという。
調査会社IDCのアナリスト、ゲーリー・チェン氏はStackStateに対して、「小企業ではあるものの、Rancherにオブザーバビリティ機能が組み込まれることは特定のRancherユーザーのニーズを満たす」と評価する。「大規模なオブザーバビリティ市場での競争では苦戦しそうではあるものの、現代の企業にとってオブザーバビリティは不可欠な機能であり、期待は高まっている」とチェン氏は話す。
ITコンサルティング企業Sageableのグローバル最高技術責任者(CTO)兼創設者であるアンディー・マン氏も、StackStateがオブザーバビリティ分野でリーダー的ポジションにはいないと指摘している。「StackStateは、大手ベンダーが提供する機能連携や、各分野に特化したベンダーほどの高度な機能は持ち合わせていない」と同氏は分析している。
一方でマン氏は、「Rancherを利用する企業や、充実したプラットフォームエンジニアリング製品を求める企業にとって、StackStateの加入は価値がある」と述べる。オープンソースやクラウドネイティブなサービス管理に対するStackStateの文化と姿勢、「OpenTelemetry」や「eBPF」といったオープン技術の採用と推進という点では、SUSEとの相性は「非常に優れている」というのが同氏の評価だ。そのため、2社は「間違いなく相性が良い」と同氏はみる。
ただし、全ての業界関係者が2社の統合を歓迎しているわけではない。
SiliconANGLE Media(theCUBE Researchとして事業展開)のリードアナリスト、ロブ・ストレッチー氏は、「SUSEがオブザーバビリティを自社製品に取り込むことは問題につながりかねない」との意見を示す。オープンソースソフトウェア管理団体Cloud Native Computing Foundation(CNCF)に参画している、SUSEのパートナー企業は、それぞれオブザーバビリティの製品やサービスを提供しているが、SUSEが自社製品でオブザーバビリティ機能を提供するようになれば、それらと競合する可能性が出てくる。その場合、パートナー企業はRed Hatなど他の大手企業との関係性を強化することも懸念される。
次回は、SUSEの主要な競合相手と、SUSEが成功を収める上での鍵を解説する。
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
DXが進み、レガシーシステムからの脱却が喫緊の課題となっている今。「ERP×ノーコードツール」のアプローチで基幹システムの刷新に取り組む企業が増えている。そのアプローチを推進するに当たってのポイントを解説する。
DXの本質は、デジタル技術を駆使して変化に適応する能力を身につけることにある。その手段の1つとして注目を集めているのが、ローコード/ノーコード開発ツールだ。京王グループなどの事例とともに、その特徴やメリットを紹介する。
DX人材の重要性が高まる中、ノーコードツールの活用によって業務改革と人材育成を両立しようとする動きが活発化している。年間約780時間の工数削減を実現した京セラをはじめとする5社の事例を基に、その実態を探る。
急速に進化するデジタル技術は、製造業などのものづくりの現場にもさまざまな恩恵をもたらしている。しかし、設備点検業務や棚卸業務などの立ち仕事や移動が多い現場では、いまだにアナログ業務が残存し、効率化の妨げとなっているという。
あらゆる業界でDXの重要性が増しているが、工場や倉庫の中にはデジタル化が後回しにされている隙間業務が多数ある。その理由を明らかにした上で、それらの業務をモバイルアプリでデジタル化し、現場DXを推進する9社の事例を紹介する。
いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。
「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。
「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。
「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。