生成AIをはじめとしたAI技術の進化と普及を受けて、今後はSSDとHDDの需要が高まってくると考えられる。AI時代に必要とされるSSDやHDDとはどのようなストレージなのか。
テキストや画像などのデータを自動生成するAI(人工知能)技術である「生成AI」の活用が広がれば、LLM(大規模言語モデル)などのAIモデルだけではなくストレージの需要も高まる。
SSDやHDDには、データ読み書きの性能や容量などに応じてさまざまな種類がある。ストレージベンダーがまとめた定義を基に、活躍するSSDやこれからも生き残るHDDとはどのようなストレージなのかを押さえておこう。
Western Digitalは、AIモデルの開発や活用の一連のサイクルである「AIデータサイクル」の概念を公表した。同社はそれと同時に、AIデータサイクルの6つのステージに適したストレージを定義。各ステージに敵するSSDやHDDについては、前編「AIに必要なのは『SSD』か『HDD』か――その疑問に答える」でまとめているので参考にしてほしい。
AIモデルのトレーニング用として、Western DigitalはSSD新製品の「Ultrastar DC SN861」(以下、SN861)を2024年6月に発表した。主な仕様は以下の通りだ。
Western Digitalによると、SN861は大規模言語モデル(LLM)の学習や推論において、ランダム読み出し(不連続な場所にあるデータの読み出し)性能やレイテンシ(遅延)が同社の現行製品よりも向上するように最適化されている。電力消費は抑制しやすくなっているという。「SN861は、SSDをAIモデルに対してどう最適化できるのかを示す一例だ」と、調査会社IDCのアナリストであるジェフ・ジャヌコウィッツ氏は述べる。
SSDの技術進化の例に漏れず、Western Digitalは大容量化の技術を取り入れてきた。たとえば、読み書き性能を高めやすいSLC(シングルレベルセル)だけではなく、データの記録密度を重視したTLC(トリプルレベルセル)のNAND型フラッシュメモリ搭載のSSDがある。SLCは1つのメモリセル(記憶素子)に1bit、TLCは1つのメモリセルに3bitを格納するものだ。
こうした記録方式の種別の違いはあるものの、AIモデル向けのストレージとなると、別のアプローチが重要になってくるとジャヌコウィッツ氏は指摘する。例えば、耐久性を向上させるためにストレージ容量の割り当てや管理の設定を変更することが挙げられる。
Western Digitalはより大容量のSSDとしては「Ultrastar DC SN655」(以下、SN655)を提供する。これは読み書きのパフォーマンスよりも、パフォーマンスとデータ記録密度のバランスを重視する用途に適している。SN655は、AIモデルのトレーニングや推論に使用できる。現行のモデルとしては15.36TBの製品が出荷されており、これに加えて新たに最大64TBの選択が可能になる。
AIモデルの開発や活用においてもSSDの需要が強いことを考慮すると、調査会社Gartnerのアナリストであるジョセフ・アンスワース氏はSSDの数を集約することも重要になるとみている。そうした需要に応える製品としては、例えばSolidigmが容量60TBのSSDを提供している。
SSDを集約すれば消費電力を抑制できる可能性がある。「AI需要と相反する持続可能性の目標を達成するのに役立つアプローチだ」とアンスワース氏は述べる。
Western DigitalのAIデータサイクルによれば、AIモデルの開発や活用においては、SSDだけではなくHDDも必要になる。同社はHDDとしてはePMR(エネルギーアシスト垂直磁気記録、PMR:Perpendicular Magnetic Recording)の技術を使った容量32TBのHDDをサンプル出荷している。ePMRは、HDDのプラッタ(データを記録する円盤)における記録密度を向上させる技術の一つだ。
HDDの新製品としては、容量32TBの「Ultrastar HC690」(以下、HC690)がある。こうしたHDDは、AIモデルの開発や活用において、TCO(総所有コスト)の抑制が重要になる場合に特に重要な役割を果たすことになる。
ジャヌコウィッツ氏は、SMR(Shingled Magnetic Recording:シングル磁気記録)方式はHDDの容量を増やすための重要な技術の一つだと指摘する。SMRは、隣り合うトラック(プラッタにある同心円状の記録領域)の一部を重ねる記録方式だ。これによって高密度化が実現することが利点だが、データの上書きの処理が複雑になり、書き込み速度が低下する可能性があることがデメリットになる。ただし容量の確保を考えれば「SMRは不可欠な技術だ」とジャヌコウィッツ氏は述べる。
要するにAI技術の活用においては、SSDもHDDも欠かせないストレージになる。SSDは特に、データの取り込みやトレーニング、推論などで重要だ。一方でトレーニングに使用するデータが多いほど、AIモデルによる回答の精度が上がる傾向にあるため、「より多くのデータを保管しておくためにHDDはコスト効率の良い方法になる」とジャヌコウィッツ氏は語る。
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
カラオケ業界が直面するデータ増に対応すべく多くのストレージを試し続けた結果、4社27台の製品のメンテナンスに悩まされていたエクシング。この問題を解消すべく、同社は大容量かつコスト削減効果に優れた、新たなストレージを導入した。
メインフレームにおけるデータソート処理は、システム効率に大きく影響する。そこで、z/OSシステムおよびIBM Zメインフレーム上で稼働する、高パフォーマンスのソート/コピー/結合ソリューションを紹介する。
ECと通販システムを統合したパッケージの開発と導入を事業の柱とするエルテックスでは、事業の成長に伴いデータの容量を拡大する必要に迫られていた。そこでストレージを刷新してコスト削減や可用性の向上などさまざまな成果を得たという。
CPUやGPUの性能向上に伴い、データセンターでは今、発熱量の増加にどう対応するかが課題となっている。特に高密度なサーバ環境では、従来のファンやヒートシンクに頼るだけでは熱管理が難しい。こうした中、企業が採用すべき手段とは?
中堅・中小企業の中には、IT担当者が社内に1~3人しかいないという企業も少なくない。そのような状況でも幅広い業務に対応しなければならないIT担当者の負担を減らす上では、ファイルサーバをアウトソーシングすることも有効だ。
いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。
「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。
「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...
Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...