これから本命の「SSD」、AI時代でも生き残れる「HDD」はこれだAIモデルの成否はストレージ次第?【後編】

生成AIをはじめとしたAI技術の進化と普及を受けて、今後はSSDとHDDの需要が高まってくると考えられる。AI時代に必要とされるSSDやHDDとはどのようなストレージなのか。

2024年08月29日 08時00分 公開
[Adam ArmstrongTechTarget]

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 テキストや画像などのデータを自動生成するAI(人工知能)技術である「生成AI」の活用が広がれば、LLM(大規模言語モデル)などのAIモデルだけではなくストレージの需要も高まる。

 SSDやHDDには、データ読み書きの性能や容量などに応じてさまざまな種類がある。ストレージベンダーがまとめた定義を基に、活躍するSSDやこれからも生き残るHDDとはどのようなストレージなのかを押さえておこう。

本命の「SSD」、生き残れる「HDD」はこれだ

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 Western Digitalは、AIモデルの開発や活用の一連のサイクルである「AIデータサイクル」の概念を公表した。同社はそれと同時に、AIデータサイクルの6つのステージに適したストレージを定義。各ステージに敵するSSDやHDDについては、前編「AIに必要なのは『SSD』か『HDD』か――その疑問に答える」でまとめているので参考にしてほしい。

 AIモデルのトレーニング用として、Western DigitalはSSD新製品の「Ultrastar DC SN861」(以下、SN861)を2024年6月に発表した。主な仕様は以下の通りだ。

  • PCIe Gen 5.0に準拠
    • Western Digitalのエンタープライズ(企業向け)SSDとしては初めてインタフェース規格PCIe(Peripheral Component Interconnect Express)の第5世代「PCIe Gen 5.0」に準拠
  • フォームファクター(形状や大きさなどの仕様)
    • 「EDSFF E1.S」(E1.S)と「U.2」の2タイプ
  • 最大容量
    • 16TB

 Western Digitalによると、SN861は大規模言語モデル(LLM)の学習や推論において、ランダム読み出し(不連続な場所にあるデータの読み出し)性能やレイテンシ(遅延)が同社の現行製品よりも向上するように最適化されている。電力消費は抑制しやすくなっているという。「SN861は、SSDをAIモデルに対してどう最適化できるのかを示す一例だ」と、調査会社IDCのアナリストであるジェフ・ジャヌコウィッツ氏は述べる。

 SSDの技術進化の例に漏れず、Western Digitalは大容量化の技術を取り入れてきた。たとえば、読み書き性能を高めやすいSLC(シングルレベルセル)だけではなく、データの記録密度を重視したTLC(トリプルレベルセル)のNAND型フラッシュメモリ搭載のSSDがある。SLCは1つのメモリセル(記憶素子)に1bit、TLCは1つのメモリセルに3bitを格納するものだ。

 こうした記録方式の種別の違いはあるものの、AIモデル向けのストレージとなると、別のアプローチが重要になってくるとジャヌコウィッツ氏は指摘する。例えば、耐久性を向上させるためにストレージ容量の割り当てや管理の設定を変更することが挙げられる。

 Western Digitalはより大容量のSSDとしては「Ultrastar DC SN655」(以下、SN655)を提供する。これは読み書きのパフォーマンスよりも、パフォーマンスとデータ記録密度のバランスを重視する用途に適している。SN655は、AIモデルのトレーニングや推論に使用できる。現行のモデルとしては15.36TBの製品が出荷されており、これに加えて新たに最大64TBの選択が可能になる。

 AIモデルの開発や活用においてもSSDの需要が強いことを考慮すると、調査会社Gartnerのアナリストであるジョセフ・アンスワース氏はSSDの数を集約することも重要になるとみている。そうした需要に応える製品としては、例えばSolidigmが容量60TBのSSDを提供している。

 SSDを集約すれば消費電力を抑制できる可能性がある。「AI需要と相反する持続可能性の目標を達成するのに役立つアプローチだ」とアンスワース氏は述べる。

HDDは依然として重要

 Western DigitalのAIデータサイクルによれば、AIモデルの開発や活用においては、SSDだけではなくHDDも必要になる。同社はHDDとしてはePMR(エネルギーアシスト垂直磁気記録、PMR:Perpendicular Magnetic Recording)の技術を使った容量32TBのHDDをサンプル出荷している。ePMRは、HDDのプラッタ(データを記録する円盤)における記録密度を向上させる技術の一つだ。

 HDDの新製品としては、容量32TBの「Ultrastar HC690」(以下、HC690)がある。こうしたHDDは、AIモデルの開発や活用において、TCO(総所有コスト)の抑制が重要になる場合に特に重要な役割を果たすことになる。

 ジャヌコウィッツ氏は、SMR(Shingled Magnetic Recording:シングル磁気記録)方式はHDDの容量を増やすための重要な技術の一つだと指摘する。SMRは、隣り合うトラック(プラッタにある同心円状の記録領域)の一部を重ねる記録方式だ。これによって高密度化が実現することが利点だが、データの上書きの処理が複雑になり、書き込み速度が低下する可能性があることがデメリットになる。ただし容量の確保を考えれば「SMRは不可欠な技術だ」とジャヌコウィッツ氏は述べる。

 要するにAI技術の活用においては、SSDもHDDも欠かせないストレージになる。SSDは特に、データの取り込みやトレーニング、推論などで重要だ。一方でトレーニングに使用するデータが多いほど、AIモデルによる回答の精度が上がる傾向にあるため、「より多くのデータを保管しておくためにHDDはコスト効率の良い方法になる」とジャヌコウィッツ氏は語る。

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