SSDの容量は「TLC」や「QLC」などの技術によって大きく増えることになった。そうした大容量化の技術が台頭する以前の、いわば「第1世代のSSD」の良さを復活させるSSDの使い方がある。昔のSSDがなぜ好まれるのか。
「SSD」は2010年代から2020年代にかけて大きな進歩を遂げた。NAND型フラッシュメモリにデータをより多く記録する手法が進歩し、1台当たりの容量はテラバイト(TB)規模で増える時代に突入したのだ。ところがその進化に逆行するようにして、大容量化が進む以前の初期のSSD、いわば「第1世代のSSD」の利点を復活させる使い方がある。初期のSSDが好まれるのはなぜなのか。
初期のSSDは、1つのメモリセル(記憶素子)に1bitを格納するSLC(シングルレベルセル)が基本だった。SSDの容量が増えた理由の一つは、1つのメモリセルに3bitを格納するTLC(トリプルレベルセル)や、4bitを格納するQLC(クアッドレベルセル)といったように、1つのメモリセルに複数bitを記録する多値化技術が発達したことだ。
ただしこの多値化が進むほど書き込み可能回数が少なくなり、SSDの耐久性が低下することになる。1つのメモリセルに格納するbit数が多くなるほど、制御しなければならない電圧レベルが増える。その結果として、データ読み書き時のエラー発生が増える可能性があることも、多値化技術のデメリットだと言える。
TLCやQLCに移行することで、SSDの単位面積当たりの容量がより多くなることや、その結果として製造単価が下がることは、ユーザーとベンダー双方の利点につながる。SSDの製造は、SLCからTLCやQLCに移行することで製造時のコスト効率をより高められる方向へとシフトしてきたのだ。
だが多値化技術には、SSDの耐久性が下がることや、読み書き速度が低下するといったデメリットがある。そうした多値化技術のデメリットを減らして、SSDの第1世代とも言えるSLCのメリットを復活させるために、「疑似SLC」(pseudo-SLC:pSLC)という手法がある。
疑似SLCとは、TLCやQLCの記録方式で製造されたSSDを、SLCの記録方式で使用できるようにする機能だ。これによってSLCの利点である読み書き速度の改善や、耐久性の向上が見込める。
ただし疑似SLCにすることで損なわれる点もある。容量の大きさが重要なのであれば、TLCやQLCをその記録方式のまま利用する方が要件に適した使い方だと言える。SSDの利用にどのような要件を設定するのか、どのような用途で利用するのかといった点を踏まえて、疑似SLCを使うかどうかを検討する必要がある。
次回は、疑似SLCのメリットとデメリットを整理して、疑似SLCに適する用途を紹介する。
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