「GPUならどれも同じ」じゃない、三方ならぬ“九方よし”の見極め方AI向けGPUの正しい基礎知識【後編】

グラフィックスを処理するために生まれた「GPU」は、いまやAI関連を含めて汎用(はんよう)的に使われるようになった。GPUを選ぶ際は、どのような要素を考慮して判断すればいいのか。

2024年12月12日 07時00分 公開
[Chris TozziTechTarget]

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 「GPU」(グラフィックス処理装置)と一口に言ってもその種類は多岐にわたるため、使用する目的に応じて適切なGPUを選ぶ必要がある。AI(人工知能)モデルのトレーニングや推論に適したGPUを選ぶには、どのような観点で見ればいいのか。GPUのハードウェア面の5つの要素と、その他4つの要素を考慮すると賢い判断ができるはずだ。

AI向け「GPU」の“九方よし”の見極め方

 並列処理の能力に優れる点は、全てのGPUに共通する特性だ。GPUはその並列処理によってAI関連のタスクを高速化できるが、特定のAIモデルに対してGPUがどれほどの恩恵をもたらすのかは、そのGPUの具体的な特徴による。

 AI用のGPUを検討する際、

  • 総コア数
  • 総メモリ容量
  • メモリクロック数
  • GPUクロック数
  • AI特化の最適化機能

などが考慮すべき重要なポイントとして挙げられる。対象のAIプロジェクトにとってこれらの要素がどの程度重要なのかを理解することで、どれが適切なGPUなのかを判断しやすくなる。

総コア数

 一般的には、GPUの総コア数がAI関連の計算処理能力を最も左右する。これは、AIモデルのトレーニングと推論は、主に大量の計算を並列処理する能力に依存するためだ。GPUのコア数が多いほど、並列処理能力が高くなる。

 とはいえ、コアを追加することで得られる利点はプロジェクトによって異なる。例えば、小規模なデータセットを利用するように設計されたAIモデルや、単純なアルゴリズムを使用するAIモデルの場合、コア数の少ないGPUでも高コア数のデバイスと同等のパフォーマンスを発揮する可能性がある。

総メモリ容量

 最新のGPUのほとんどには、「ビデオランダムアクセスメモリ」(VRAM)として知られる内蔵メモリが搭載されている。VRAMはGPUコアが処理するデータの一時的な保存場所となる。GPUコアからVRAMへの直接的な読み書きの速度は非常に速いため、システムで一般的に使用されるRAM(ランダムアクセスメモリ)やストレージではなくVRAMに保存する方が、はるかに効率的だ。

 一般的に、GPUのVRAM容量が大きいほど、AIワークロード(AI技術に関連する計算処理などの一連のタスク)に対する処理能力は向上するが、例外もある。VRAMを追加することで得られるメリットは、トレーニングや推論の際に各GPUのコアが一時的に保存する必要のあるデータ量や、コア間で共有する必要のあるデータ量に左右される。小規模なAIモデルや、ある計算の結果が他の計算に影響を与えないAIモデルの場合、それほど多くのVRAMを必要としない。

メモリクロック数

 総メモリ容量に加えて、メモリクロック数もAIモデル全体のパフォーマンスにおいて重要な要素となる。メモリクロック数は、VRAMのメモリモジュールがデータを読み書きする速度を決める要素であり、データの転送速度に影響する。クロック数が低いとデータ転送の遅さがボトルネックになる可能性があるため、大容量のメモリを十分に活用できない。これは、一時的なデータをあまり生成しないAIモデルや、GPUコア間で頻繁にデータを共有する必要のないAIモデルにおいてはそれほど重要ではない。

GPUクロック数

 GPUクロック数は、GPU内のコアが情報を処理できる速度を示す。GPUクロック数が大きいほど、AIモデルのパフォーマンスは向上する。

 ただし、クロック数を過度に重視しないことが重要だ。クロック数がより重要なゲームなどのアプリケーションではなく、AI向けにGPUを使用する場合はなおさらだ。AIモデルのトレーニングや推論の際に実施される個々の計算は、通常は比較的単純なので、一般的にはコア当たりの処理能力よりも全体的なコア数(つまり並列計算を実行する能力)の方が重要になる。

 最近では、特定の範囲内でクロック数を変更できるGPUがある。AIモデルのパフォーマンスが不十分な場合、クロック数を上げることで処理速度を向上させるのも一つの方法だ。ただし、クロック数を過剰に高めるとオーバーヒート(過熱)につながる可能性がある。

AI特化型ハードウェアの最適化

 GPUの中には、特定のタスクに最適化された専用ハードウェアコンポーネントが含まれているものもある。例えばNVIDIAの技術で、機械学習のプロセスを加速させるように設計された「Tensorコア」がある。

 ただし特殊なハードウェア機能は、特定の機能を利用するように設計されたAIモデルでのみ有用である場合があることに注意が必要だ。

AIプロジェクト用のGPUを選ぶ際に考慮すべきその他の要素

 GPUを比較検討する際には、以下の要素も検討するとよい。

  • コスト
    • GPUの価格は100ドル未満から数千ドルまで幅広い。一般的に高価なGPUの方が処理能力は優れているが、AIモデルが十分に活用できない性能や機能を持つGPUに過剰な支出をしないよう注意が必要だ。
  • ベンダーのソフトウェアサポート
    • GPUベンダーが自社のデバイスに対してどれだけ積極的に開発やソフトウェアサポートを提供しているかによって、導入の容易さは大きく異なる。これには、OSがGPUと連携できるようにするドライバや、特定のGPU向けに最適化された機械学習ライブラリなどが含まれる。
  • 発熱量
    • 大量の熱を発生させるGPUには、より高度な冷却システムが必要だ。オーバーヒートを防ぎ、パフォーマンスを維持するために、GPUから発生する熱を適切に放散できるようにする必要がある。
  • マザーボードとの統合
    • ほとんどのGPUは標準的なPCIe(PCI Express)スロットを使用してシステムに接続するが、サーバ向けに特化した「Server PCI Express Module」スロットなどの特殊な接続が必要なGPUもある。使用するGPUに適合する拡張スロットがマザーボードになければGPUを取り付けることができないため、事前に確認しておく必要がある。

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