人気のプログラミング言語「Rust」と「Python」は異なる設計思想を持ち、複数の対照的な仕組みを備える。9つの視点で両者を比較し、それぞれの特徴を探る。
アプリケーション開発の現場では、「速度」と「生産性」の両立が課題となる。「Rust」と「Python」は、それぞれ異なるアプローチでこの課題に取り組んでいるプログラミング言語だ。両言語にはどのような特徴があるのか。9つの視点のうち、まず本稿は1つ目から4つ目の視点で比較する。
開発者は異なる理由でRustとPythonを支持しており、両者は複数の点で対照的な特徴を持つ。以下の9つの視点で、それぞれの特徴を比較する。
Rustは、「ゼロコスト抽象化」とコンパイル(ソースコードを実行可能ファイルに変換する作業)時の最適化によって、「C」に匹敵する速度を提供するプログラミング言語だ。ゼロコスト抽象化は、ソースコードの複雑さを排除して再利用性を高める「抽象化」の影響を抑える機能を指す。こうした仕組みは、CPUに負荷を掛けるタスクやメモリ効率が求められる操作に適している。
Pythonはプログラムの実行時にソースコードを1行ずつ解釈して実行する「インタープリタ」方式の場合は実行速度が落ちる。一方で、迅速な開発とプロトタイピングにおいて優れた能力を発揮する。
Rustは、ガベージコレクション(不要なデータを削除して空き容量を増やす機構)を使用せずに、メモリの安全性を確保する「所有権」モデルを採用している。その仕組みの中で、データへのアクセス権限を一時的に他のプログラムに与える「借用」、参照(データの場所を示す情報)が有効である期間「ライフタイム」といった機構を実現している。開発者がメモリの割り当てと解放を細かく制御できるため、ガベージコレクションの余分な処理による遅延を発生させずにメモリの安全性を確保可能だ。
Pythonは自動ガベージコレクションで開発を簡素化するが、メモリを大量に消費するアプリケーションでは処理速度を予測しにくい。
Rustは、データの競合を防ぎ、安全かつ効率的な並列処理が可能だ。
Pythonは、複数のスレッドが同時にPythonプログラムを実行するのを防ぐ仕組み「Global Interpreter Lock」(GIL)を採用している。GILは、CPUに負荷を掛ける作業で並列処理を阻害する可能性がある。ただしファイルの読み書きやネットワーク通信など、データの入出力処理に時間を要する作業(I/Oバウンド)での並行処理は問題なく機能する。「Python 3.13」ではGILを無効にできる機能が導入されたが、これには反対意見もある。
Rustの構文は比較的複雑で習得に時間を要するものの、熟練開発者に強力な機能を提供する。以下は、0から9までの数字を2乗した値を、32ビット整数のVec型(サイズ可変の配列)の変数「squares」に初期値として与えるサンプルコードだ。「(0..10)」で0から9までの範囲を作成し、配列の各要素に対して処理をする「map」メソッドで、数値の2乗を作成し、「collect」メソッドで各要素に結果を代入する。
let squares: Vec<i32> = (0..10).map(|x| x * x).collect();
一方のPythonは構文がシンプルで読みやすく、プログラミング初心者にとって取っ付きやすい。Pythonで同様の操作をする例は以下の通りだ。変数squaresの各要素に対して、「range(10)」で生成した0から9までの数値を2乗して代入する。このように、リストや反復処理可能なオブジェクト(メソッドとデータをまとめたもの)から新しいリストを作成するPythonの構文を「リスト内包表記」という。
squares = [x**2 for x in range(10)]
次回はRustとPythonの違いを5つ目から9つ目の視点で比較する。
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