なぜクラウド規制の標的に? AWSが「信頼できる証拠がない」と猛反発Microsoftも「同意できない」と反論

AWSとMicrosoftがクラウドサービスの市場競争を阻害しているとして、英国規制当局は両社を標的とした「介入」を検討している。これに対し、AWSは「信頼できる証拠を示していない」と反論する。

2025年03月14日 07時00分 公開
[Caroline DonnellyTechTarget]

 Amazon Web Services(AWS)とMicrosoftが英国のクラウドサービス市場の競争を阻害している可能性があるとして、英国競争市場庁(CMA)が調査している。CMAが公開した暫定的な調査結果に対し、AWSは「信頼できる証拠を示していない」と反論した。Microsoftも「同意できない」と批判している。

なぜ標的に? AWSとMicrosoftの疑惑と両社の反論

 CMAは2025年1月、英国のクラウドサービス市場における競争が十分に機能していないことを指摘する暫定的な調査結果を公表した。調査結果に対するAWS、Microsoft、Googleなど市場関係者の回答も公開している。

 CMAの調査結果は、特にAWSとMicrosoftを標的とし、市場競争を阻害している行為を抑制することを示唆している。

 2025年1月に施行された「2024年デジタル市場・競争・消費者法」(Digital Markets, Competition and Consumers Act、以下DMCCA)に基づき、AWSとMicrosoftを「戦略的市場地位」を持つベンダーに指定することをCMAは検討している。これによって、CMAは両社に対して法的拘束力のある行動要件を課したり、競争を促進させる介入をしたりすることができ、市場への影響を制限・是正できる。

 AWSは、こうした介入を受けることに対し「正当化されるべきではない」と主張する。同社は2025年2月に公開した30ページにわたる文書の中で、CMAは主張を裏付けるだけの「信頼できる証拠を示していない」と指摘している。

 AWSは「技術的な障壁や相互運用性(異なるベンダーのサービス同士を連動させるための特性)の問題は存在しない」と述べる。エンドユーザーが利用するクラウドベンダーを変更したり、マルチクラウド(複数のクラウドサービスを併用すること)を構築したりするのを妨げないということだ。CMAも報告書の中で「AWSのサービスに関する具体的な相互運用性の問題は特定していない」と説明している。

 AWSは「クラウドサービスには相互運用性の問題は存在せず、暫定的な報告書はそうした懸念を裏付ける証拠を示していない」と批判する。

 エグレス料金(クラウドサービスから外部のインフラにデータを送信するときにかかる料金)についても、AWSは「クラウドベンダーの切り替えやマルチクラウド化を妨げているわけではない」という。同社は「暫定的な報告書は、この点でも懸念を裏付ける信頼できる証拠を示していない」と主張する。

 AWSはCMAの報告書の一部には賛同している。クラウドサービス市場における競争が「イノベーション、投資、そして全てのエンドユーザーの生産性向上を促し、人々、企業、英国経済に恩恵をもたらす」という点だ。

 しかし、AWSは報告書の内容が「実態を踏まえていない」と指摘する。「英国経済において最も競争が活発で、十分に機能し、急速に成長している分野の2社のみに不当な介入を推奨することで、英国経済の成長、イノベーション、生産性に関する可能性を損なうリスクがある」(AWS)

 Microsoftも101ページにわたる文書で、CMAの暫定的な調査結果を批判した。Microsoftは「報告書の大部分に同意できない」といい、「大幅な修正が必要」と主張している。

 CMAは、エグレス料金、相互運用性の問題だけではなく、Microsoftのライセンス慣行についても調査している。Microsoftは、競合他社のクラウドサービスでMicrosoft製ソフトウェアを実行するエンドユーザーに対し、クラウドサービス群「Microsoft Azure」で実行する場合と比べて高額な料金を請求しているという。

 Microsoftは、こうした問題はクラウドサービスの市場競争では“周辺的な問題”に過ぎないと主張する。同社は「これら3つの問題へのCMAの介入が、クラウドサービスの市場競争を意味のある形で促進するとは考えにくい」と疑問を呈する。「CMAの誤解に基づいて市場に介入することは、『健全で十分に機能し、成長と投資が著しい市場を構築する』というCMAの目標とは正反対の結果を招く」と警告する。

 対照的にGoogleは、CMAが暫定的な報告書で結論付けた内容をおおむね支持する。CMAの調査結果は、エンドユーザーのフィードバック、アナリストのレポートなどによって「裏付けられる」とGoogleは主張する。

 Googleは「クラウドサービス市場の状況、AWSおよびMicrosoftの市場での地位に関して、CMAの暫定的な調査結果と矛盾する信頼に足る証拠は提示されていない」と述べる。

 同社は「CMAの市場調査とそれに先立つ英国情報通信庁(Ofcom)の市場調査のデータは、『AWSとMicrosoftが市場で戦略的な地位を有している』とCMAが結論付けるための説得力のある証拠といえる」と付け加えた。

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