TechTargetジャパンは2010年3月、プロジェクトの管理業務に携わる会員を対象とした座談会を実施。プロジェクトにおける生産性向上のために必要なことを語ってもらった。
TechTargetジャパンが2010年2月に実施した読者アンケート調査によって、プロジェクトの現場では以下の3つの「不足」が、その生産性を阻害する原因として考えられていることが分かった。
上記3つの「不足」を解消するために必要なこととは何か? TechTargetジャパンは2010年3月、プロジェクト管理業務に従事する読者を対象にした座談会を実施した。今回から2回にわたり、その座談会の内容を紹介する。
日時:2010年3月5日(金)19:00〜21:00
場所:アイティメディア オフィス内会議室
参加者:8人(会員読者7人、モデレーター1人)
座談会には、TechTargetジャパン会員読者7人が参加。また、座談会のモデレータをPMI日本支部事務局長である永谷裕子氏が務めた。
座談会参加者 | 氏名・所属企業・業務内容および日々感じている課題 |
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彌冨美香(やとみ みか)氏 株式会社RINET 1年以内のプロジェクトに携わってきた。会社としては今後マネジメントにより注力する予定で、そのルール付けなどを準備する段階にある。 |
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阿部昭彦(あべ あきひこ)氏 東芝情報システム株式会社 これまで組み込みOSや組み込み系の検査といった少人数のプロジェクトを複数管理する立場にあった。現在は大規模プロジェクトにメンバーとして参加。4人のお子さんのマネジメントにも奮闘中。 |
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木部保之(きべ やすゆき)氏 株式会社CSKシステムズ 顧客企業である大手電機精密機器メーカーのPMOの一員として、プロジェクト管理支援を行っている。「教科書的には進まない物事をどう推進していけるか」を課題として考えている。2003年、PMI東京におけるPMBOK委員会にも参画。 |
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中澤康至(なかざわ やすゆき)氏 カブドットコム証券株式会社 ネット証券の発注システム全般のマネジメントを行っている。「並行して進んでいるプロジェクトをいかにうまく、滞りなく進められるか」を模索中。 |
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石上孝幸(いしがみ たかゆき)氏 株式会社ジェーアイイーシー 開発プロセスや成果物の標準化作業に従事。また、品質管理も担当分野。現場のSEからよく上がってくる「自分のプロジェクトは分かるが、ほかのプロジェクトのことは分からない」という課題を解決したいと考えている。 |
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山田憲司(やまだ けんじ)氏 コベルコシステム株式会社 ERPを専門分野として、大規模プロジェクトを中心にプロジェクトマネジャーとして奮闘中。 |
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相場宏二(あいば こうじ)氏 マイクロソフト株式会社 プロジェクト管理ツール「MS Office Project」の製品担当。「プロジェクトマネジャーが日々どのように業務に取り組んでいるか」に関心がある。 |
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モデレーター 永谷裕子(ながや ゆうこ)氏 PMI日本支部事務局長 20年近くITプロジェクトマネジャーとしてインターナショナルなプロジェクトに従事。現在は日本でのプロジェクトマネジメントの活動を支援する業務に携っている。 |
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永谷:まずは「プロジェクトにおける“スキル”とは、具体的に何を指すのか」が明確に定義されている必要があります。また、その不足を補うための解決策として、どういうトレーニングが必要になるかを考えていきましょう。スキル定義については、例えば、経済産業省が策定した「ITSS(ITスキル標準)」ではIT技術者個人の能力や実績に基づいて7段階のレベルを規定しています。また、米国のPMI本部が策定した、プロジェクトマネジャーのコンピテンシーモデル「PMCDF(Project Manager Competency Development Framework)」もあります。日本ではITSSの方がなじみがありますが、グローバルな観点ではPMCDFが当てはまることが多いと思います。皆さんの会社では、こうしたスキルの定義はどうなっていますか?
木部:弊社ではここ数年、ITSSに準拠して「インフラ担当」「アプリケーションエンジニア」「プロジェクトマネジャー」など、それぞれの職務ごとにレベルを7段階で定義したり、オンライン試験による評価制度を実施したりしています。これらをプロジェクトの難易度に合わせてメンバーをアサインする参考指標として使っています。また、「PMP」(※1)や「プロジェクトマネージャ試験」(※2)、「PMS」(※3)などの資格制度を知識レベルの基準として使っています。さらに、過去のプロジェクト案件の経験を基にしてプロジェクトに割り当てるなど、できるだけ計画的に行っています。
※1:プロジェクトマネジメントに関する国際資格「Project Management Professional」の略。
※2:経済産業省所管の情報処理技術者試験。
※3:特定非営利活動法人 日本プロジェクトマネジメント協会(PMJA)の認定資格「プロジェクトマネジメント・スペシャリスト」の略。
阿部:弊社でもITSSを採用しています。ただ、「スキル基準で評価することと実際の業務ができることとは違う」とも感じます。ある専門的な技術を身に付けている人がいないとプロジェクトを遂行できないことが多いです。こうした特定のスキルを含めた評価まで細分化することは難しく、結局は業務遂行能力がある人ほど現場で必要な人物として評価されています。それでも、スキル基準と現場での評価がリンクするかは別問題ではないでしょうか。
中澤:ITSSはなくてはならない評価基準の1つです。また、ITSSとは別にシステムに限らず、金融系の知識の習得も必要です。弊社では、そうした業務に関する知識や経験などを細分化して評価することを定期的に行っています。ITSSだけがスキル基準というわけではなく、どちらかというと「業務知識のレベルを上げる」ことがスキル向上につながると思います。
山田:弊社でも同様に「IT」「業務知識」「プロジェクトナレッジ」などのスキルが細分化されています。ITスキルは当たり前で、重要なのは「業務知識」。顧客からの要望に応えるためにも、担当する業種の業務知識を深めることが求められます。そうしたスキルの評価はなるべく定量的に測れる工夫をしています。ただ、それらを考慮してプロジェクトメンバーをアサインできているかは別です。
編集部:石上さんは現在、開発標準化作業に取り組まれているとのことですが、現場での取り組みはいかがですか?
石上:基本的に会社で決めている標準はあるものの、プロジェクトに適用できているケースはほとんどありません。「自分の会社の標準を知らない」と言われたり、受託開発の場合は顧客側に合わせた成果物が作成されることも多いです。開発標準を組織横断的に展開・活用できていないのが現状です。
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